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バリュー“理解”から“体現”へ。「秘伝のタレ形式」を脱却したオンボーディングの歴史

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SmartHRはこの10年ほど急成長を続けており、即戦力採用をメインとしてきました。とくにこの5年間で社員数が急速に増加し、2020年以降に入社した社員数は約1,400名に達します。

先日公開した鈴木の記事でお伝えしたとおり、今でこそ「人材育成」を意識しているSmartHRですが、2023年まではその意識もほぼゼロに等しい状態でした。

しかし、「オンボーディング」は社員数が急増した2020年から手厚く実施しています。

経験や専門知識が豊富な人材にSmartHRの社員として、いち早く活躍してもらうには「入口がとても大事」という考えが強くあったためです。現在のSmartHRのオンボーディングは「業務理解に必要な前提知識のインプットとSmartHRカルチャーを理解する」を目的として約1週間実施しています。

以前から高い満足度を維持しているオンボーディングですが、実は現在に至るまで何度かリニューアルをしてきました。

本記事では、担当者としてこれまでのオンボーディングの歴史とリニューアル時の想いについてつづっています。

人事の悩みや想いに共感していただいたり、オンボーディングに取り組む参考にしていただけたりすると幸いです。

「必要最低限」からはじまったSmartHRのオンボーディング

私が入社した2019年頃には、今のオンボーディングのルーツとなるものが存在していました。

入社初日にパソコンのセットアップと事業モデルの説明、そして当時の代表であった宮田さんから「SmartHRの沿革とバリューの説明」を聞くという構成だったと記憶しています。

「即戦力としてすぐ活躍してもらうために必要最低限の情報を伝える」

簡易的ではあるものの、当時の会社規模にあわせたものだったと思います。

いま人事担当者として思い返すと、100人程度の企業でこれだけの説明がある時点で手厚い気がします。しかし、当時初めて転職した自分にとっては「中途入社ってこういうものなんだ! たったこれだけの情報で即戦力として働かないといけないんだ!」と思い、焦った記憶があります。

2020年、最初のリニューアル

現在の礎となるオンボーディングが誕生したのは、2020年4月頃です。当時は、ひと月で20名以上入社することが当たり前となり、社員数が急増したタイミング。社員数も250人を超えました。

SmartHRでは創業時から「情報をオープンにする」という考えを非常に大切にしています。

社員一人ひとりがもっている情報を同等にすることで、意思決定が似てくる。そしてメンバーが自発的に課題に気づけて、解決に向けて動き出せる。

これが「情報をオープンにする」を大事にしている背景です。

オンボーディングもこの考えを軸にし、「網羅的に会社全体の情報を伝え、すぐに即戦力として活躍できる状態」を目指してリニューアルされました。

2020年4月にリニューアルしたオンボーディングの全体像です。SmartHRの収益化プロセスに登場する職種のほとんどを順番に説明していく構成でした。

いま、改めて見ても、非常に手厚いオンボーディングを用意していたと思います。

入社者からの反応も非常に良く、アンケートでは「こんなに手厚いオンボーディングは初めてだった」という回答を何度ももらいました。

急成長する組織を支えるため、まずは入口で会社全体の情報をできる限りお渡しする。これが最初のSmartHR流オンボーディングでした。

「秘伝のタレ形式」でキープコンセプトを約3年継続

2020年にリニューアルしたオンボーディングが非常に好評だったこともあり、そこから約3年は基本の構成を変えずに実施していました。

組織が拡大するにつれて説明内容を調整したり、オリエンテーションの数を増やしたりと、もともとのオンボーディングをアレンジしながら運営を続けました。

私が人事に異動し、オンボーディングを担当したのもちょうどこの時期です。この運営を社内では「秘伝のタレ形式(※)」と呼んでいました。

(※)「秘伝のタレ」は、新たに必要な情報をオンボーディングの要素として継ぎ足してきた歴史を語る言葉

しかし、「秘伝のタレ」も2023年に限界が来ました。「秘伝のタレ」のように情報を継ぎ足し続けた結果、オンボーディングの目的と役割があやふやになり、気がつけば「入社から約2週間はオンボーディングで新入社員の予定が埋まる」構成になっていました。

非常に手厚い一方で、受講後のアンケートで新入社員から「情報を覚えきれなくて不安」「自分の業務に必要な情報がどれかわからない」などの声が届くようになりました。

もともとすぐに即戦力として活躍できる状態を目指したオンボーディングが、逆に社員を不安にしているかもしれない。人事担当者としてもどかしい気持ちになる場面が増えていきました。

2024年に完全リニューアル。
コンセプトは「実務を通したバリューの体現」

オンボーディングのリニューアルを決めたのは、社員数が1,000名を超え、人材育成部が発足したタイミングです。

リニューアルを決定した主な理由は以下2点です。

  1. オンボーディングが非常に丁寧な内容である一方で情報量が多すぎる

  2. 組織拡大により職種も増え、人によって必要な情報が異なる

非常に手厚いオンボーディングであったために、新入社員や現場から「こんなに丁寧なら、もっとこの情報を詳しく話してほしい」「自分の職種のオリエンテーションもやりたい」という声が上がるようになっていました。

これ以上情報を増やすことが難しくなったのと同時に、「入社時にこれだけの情報量を伝える必要が本当にあるのか」と疑問に思い、リニューアルを決定しました。

バリューを体現できるオンボーディングへ

このリニューアルのコンセプトは「バリューを理解し、日々の業務で体現するイメージをもってもらう」でした。

以前のオンボーディングでは「網羅的に会社全体の情報を伝えること」を重視していましたが、オンボーディングの目的を「業務理解に必要な前提知識のインプットと、SmartHRカルチャーを理解する」に再定義し、提供する情報を精査しました。

また、SmartHRにおけるオンボーディングの役割も改めて検討し、「バリュー浸透」に重点を置くことにしました。

なぜなら、組織が急拡大するなかでも社員一人ひとりが同じ方向を向き、企業成長を推進していくためには、まず全員がバリューを深く理解し、日々の行動で体現することが不可欠だと考えたからです。

バリューの解像度をあげるために実務開始後のワークショップも導入

SmartHRは創業以来、バリューを大切にする文化を育んできました。

しかし、「組織規模が拡大するにつれて価値観が薄れ、形骸化してしまうかもしれない」と懸念していました。もっとも大切にする価値観をまもるために必要なのは、入社時にバリューを丁寧に伝え、「SmartHRはバリューを大切にする組織だ」と強く理解してもらうこと。そして、自分の仕事でどのようにバリューを活かせるかのワークショップを通じて具体的なイメージをもってもらうことを重視したのです。

入社1か月後にあらためてバリューに立ち戻るワークショップも用意し、「1か月間で意識したこと・難しかったこと・今後はどう体現するか」を改めて考える場もつくっています。

2024年にバリューの刷新がありましたが、この取り組みは「バリューを大切にする文化」を維持するうえで、重要な役割を果たしていると感じています。

「バリューを体現したい」という新入社員が増加

リニューアルを経ても新入社員の満足度は高い状態を維持し、「こんなに手厚いオンボーディングは初めて!」というコメントも引き続き届いています。

また、以前はなかった「情報量が適切だった」というコメントや、「全員が欲しい情報が網羅されていた」というコメントが目立つようになりました。なによりも、リニューアルを担当した人事としてもっとも嬉しかったのは「バリューを体現したいと思った」というコメントが増えたことです。

バリューを重視した結果、新入社員が単にバリューを理解するだけではなく、バリューの内容に共感するようになり、「会社に求められているから体現する」のではなく、「共感しているから体現する」状態をつくれたのではないかと思っています。

完成形は遠い先。組織の成長にあわせて進化は続く

2025年現在も2024年にリニューアルしたオンボーディングを継続して運用しています。

しかし現在のスタイルが完成形というわけではなく、今後も組織の成長にあわせブラッシュアップしていきたいと考えています。

多くの企業では、オンボーディングはある程度の形さえできてしまえば、その後はあまり形を変えずに運用されることもあるのではないでしょうか。SmartHRもそうでした。

しかし、会社の状況や規模が変われば、オンボーディングで伝えるべき情報や、実施方法も進化させていく必要があります。

気がついたら先述した「秘伝のタレ形式」になっていて、オンボーディングの目的や役割があやふやになっていた…ということが再発しないように、現在は細かいブラッシュアップだけではなく、定期的にオンボーディング全体を振り返る場を用意しています。

直近では運営と受講工数の軽減と、SmartHRプロダクトの活用とフィードバックを狙い、一部のオリエンテーションをe-learning化する取り組みも開始しました。

今後も進化を続けながら、新入社員の皆さんに「SmartHRのオンボーディングはバリューを体現できる」と感じてもらえる、そして会社の成長も支えられるオンボーディングを届けていきたいです。

お役立ち資料

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