読む、 #ウェンホリ No.51「コミュニケーションの面倒さとどう向き合うのか」
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前回に引き続きゲストは、「繊細さん」シリーズの著者である公認心理師・HSP専門カウンセラーの武田友紀さん。今回は、「わかりあえないを出発点に。コミュニケーションの面倒さとどう向き合うのか」をテーマに話します。
公認心理士。1983年 福岡県生まれ。九州大学工学部機械航空工学科卒。大手メーカーで研究開発に従事した後、2014年より分析力とHSP気質をいかしてカウンセラーとして独立。著書に60万部超のベストセラー『繊細さんの本』(飛鳥新社)、がある。最新刊は『これって本当に「繊細さん」?と思ったら読む本』(日東書院本社)
「自分と働くのは面倒くさいだろうな」と思う
堀井
武田さんは仕事の人間関係で「正直、面倒くさい」と感じる瞬間はありましたか?
武田
なかなか答えにくい質問ですね(笑)。そうですね。私は、相手を面倒くさいと思うよりは、「自分と働くのは面倒くさいだろうな」って思うことがあります。
8月に新刊の『これって本当に「繊細さん」?と思ったら読む本』っていう本を出版したんですけれども。このときも、この本が「繊細さんとトラウマ」について書いた本だったんです。
対談を本にまとめたものでしたので、ライターさんが原稿に書き起こしてくれて。で、それをチェックして、本にする作業だったんですね。それで、原稿を受け取るたびに私が真っ赤にして返して。で、それを3回やるという(笑)。
で、「このままだともう発売日に間に合わなくて、ギリギリですよ」っていうなかでお願いをしてました。やっぱり自分自身が繊細さんなので、「この言い回しだと読む人にちょっとインパクトが強いだろうな」とか「このニュアンスはこうしたいな」っていうような点が本当にたくさんあって。
それを全部直してると、せっかくライターさんが書いてくれたのに、ほとんど赤ペンみたいになっちゃうんですよね。なので私と仕事すると面倒くさいだろうなって思いながら、いつもやってます(笑)。
堀井
でも、それで助かったりとか、それが長所だったりとか。仕事によっては、繊細さんのその役割は非常に重要なときもありますもんね。
武田
あるんだと思います。そこを信じてやっている感じですね。なので、私がはじめて出した『「繊細さん」の本』のときも……。
堀井
60万部ですよ! すごいですね!
武田
ありがとうございます。本当にたくさんの方に読んでいただいたんですけど。これも私は繊細さんで、担当の編集者さんの方はそうじゃなかったんですよね。
なので、「びっくりマーク(!)」をつけるかつけないかで言い争いになったりとか(笑)。編集者さんがびっくりマークをこの文章につけて戻してくださったんですけど、私は「ここにびっくりマークをつけるのは繊細さんが読むには強すぎる」と言って外してもらったりとか。そのくらい、細かく細かく働いていますね。
堀井さんの周りにも、すごく細かい人っていますか?
堀井
そうですね。もちろんいますよね。その人たちが繊細さんなのかどうなのかは、ちょっとわからないんですけども。やっぱり仕事が一つひとつ丁寧ですよね。「そんなにちゃんと見ているんだ」とか「そこをちゃんとしたいんだ」とか「私はスルーしちゃうな」みたいな。そこはすごく感じます。
武田
そのときに「なんか面倒くさいな」って思われるのか。それとも、そのよさを見るのか。もちろんね、相手によっても違うと思うんですけど。どんな感情を抱くんですか?
堀井
ええと、尊敬ですね。
武田
ああ、そうなんですね。へー!
堀井
そうです。すごいと思いますね。自分ができないので。うん。憧れでもありますし。やっぱり、そのちゃんと赤を入れる感じとか。私も本を出しましたけど、ちゃんと入れなかったです。「だいたいおまかせで」みたいな感じだったので(笑)。
武田
そうなんですね(笑)。
堀井
自分で理解しがたい「クエスチョン(?)」が入っていたりとか、何かがあった場合にはお尋ねしますけど。向こうが「こういう意図で」っておっしゃると「ほほう。じゃあ、それでお願いします」みたいな(笑)。
武田
ああ、おおらかなんですね。
堀井
そんな感じでしたね。でも、だからそこをしっかり詰める力っていうのはきっと、繊細さんにはあるんだろうなって今、聞いていて思いました。
自分の面倒くさい部分が、他人からみると「尊敬」になることも
武田
ありがとうございます。ちょっと「尊敬」という言葉が出てきたので、すごくびっくりしました。というのも、「自分、面倒くさいと思われてるんだろうな」って思っている繊細さんが結構いて。あとは自分でも自分が面倒くさいとかですね。「気にしなくてもいいのにな」って思うことが多いんですけど。そんな風に思われることもあるんだなと思って、なんか少し嬉しく思いました。
堀井
ご自身はね、なんかつっかえの部分かもしれないけど。たぶん、やっぱり他人の庭って、よく見えるんでしょうか(笑)。なんか、すごいなって。
武田
ああ、そうかもしれないですね。
堀井
「えっ、それ私、絶対できない。無理」って思って。で、「すごいな」って思いますね。
武田
ああ、そうなんですね。繊細さんからすると、小さいところを気にせずにどんどん仕事を進めていける人ってすごいなって。タフだなとか、すごくスピード感があってすごいなっていう風に……「いいな」って尊敬の目で見ていることがあるので。やっぱりお互い「いいな」って思う部分があるんですね。
堀井
あると思いますよ。大抵は「堀井、雑だからな」とかよく言われるんです(笑)。
武田
ああ、そうですか(笑)。
堀井
まあ、それでちょっと傷ついたりもしますけども。「まあ、しょうがないな。雑だしな」と思って。だからね、繊細さんも「繊細だしな」とかね、「考えすぎなんだよ」って言われたりするかもしれないけども、まあ同じことなのかもしれないですしね。
武田
そうですね。お互いに、それぞれ「そのままでいいんだよ」っていうことですよね。
対人関係で悩んだら、自分がどうしたいかに集中しよう
堀井
そうですね。でも60万部売れてるっていうことはやっぱり、その繊細さんとか、HSPっていうものに対して、何か思うところがある人はたくさんいるんですね。
武田
いたんだと思います。繊細さんって5人に1人の少数派なので、「自分だけ、なんだか感覚がちょっと違うんじゃないか? どこかおかしいんじゃないか?」って思っていた人たちがたくさんいるんですね。その人たちがこの『「繊細さん」の本』を読んでくださって「ああ、私もこれだったんだ。仲間がいたんだ」っていうことにすごく反響がありましたね。
堀井
うんうん。仲間がいて、自分たちで共有できるっていいかもしれないですね。
武田
はい。すごく力になりますね。「私だけおかしいんじゃないか?」って思ってるとすごくしんどいんですけど。「ああ、5人に1人、同じような感覚の人がいるんだ」って思うと、すごく心強いんですよね。
堀井
なるほどね。繊細さんにおける、その仕事の人間関係のコミュニケーションでストレスを感じることはあるんでしょうか?
武田
そうですね。繊細さんに限ったことではないかもしれないですけど。前編でも話したように、同僚に競争心を抱かれて、自分の仕事を毎回毎回チェックされるとか。あとは、なんかすごく書類とかをバサッと渡してくる、すごく乱雑な人がいて。
堀井
えっ、気をつけよう……(笑)。
武田
いや、大丈夫だと思いますけども(笑)。なんというか、常にぶっきらぼうだったり、挨拶を返してくれないとか。少し、ちょっとその人自身も課題を抱えているような方がいて。それにちょっと振り回されるっていう話はご相談いただくことがありますね。
堀井
そういうときは武田さん、どういう風にアドバイスされるんですか?
武田
「自分がどうしたいかに集中しよう」っていう風に伝えてますね。というのも、「なんであの人はこんなことをするんだろう?」とか、「こんな風に思っているんじゃないか」とか、相手のことをずっと、カウンセリングの場で話されることがあるんですよ。
で、「相手がこうじゃないか? ああじゃないか?」と言っている限りはですね、なかなか前に進めなくて。「まあ、相手はそうだとして、あなたはどうしたんですか?」っていう、そっちの方に意識を向けていく必要があるんです。
ですので、相手が自分に競争心を抱いてチェックしてくるというときに、毎回毎回、自分がそれに丁寧に応えているのだとしたら……「自分はこれからどうしていきたいか」を考えることが重要なんですよね。
「自分は仕事に集中したいです」ということであれば、「今、ちょっとこれに集中したいのですいません」って言ったりとか。自分の本音を把握して、それを採用してあげる必要があるんですね。
面倒くさい人とどう付き合っている?
堀井
なるほどね。いろんなコミュニケーションのうえでも、面倒くさいって言ってしまったらもう大変なことかと思うんですけど。いろいろね、関係性ってあると思うんですけれども。ちょっと面倒くさい上司とか同僚とかとの付き合い方はどうでしょうか?
武田
堀井さんはどんな風にされてますか?
堀井
たとえばどういう人が面倒くさいかでいうと、ちょっと高圧的だったり、気持ちを汲み取ってくれなかったりとか。その意思疎通があんまりうまくいかない人が「ああ、今、コミュニケーションが取れてないな。ちょっと時間がかかってややこしいな。面倒くさいな」って思うことはあるんですけど。
武田
ああ、そうなんですね。
堀井
そうなんです。だから面倒くさい上司とか、面倒くさい同僚にこそ、私は声をかける人です。
武田
ああ、そうなんですか。声をかけると、関係性というのはどうなっていくんですか?
堀井
ええと、向こうは最初、嫌がってるんですけど。途中から「しょうがないかな」っていう感じになるんですかね。
武田
へー!
堀井
「私、すごいな」って思った瞬間があって。2人が明らかに私の悪口を話してるときに、そこに入っていったことがあります(笑)。
武田
アハハハハハハハハッ!
堀井
すごくないですか?(笑)。
武田
それはその話にどんな風に入っていかれたんですか?
堀井
なんか隅っこの方で話をしていたので、本を取りにいく真似をして、「失礼しまーす!」って言って、その2人の中に入っていったことがあるっていうぐらい、苦手な人とか、私に対して敵対心をもつ人にグッと入ることに喜びを感じるみたいな(笑)。
武田
それに喜びを感じるんですね(笑)。
堀井
喜びというか、そうですね。「しめしめ」って思うので。だから面倒くさい上司にこそ、わりと言ってしまいますね。でもほら、武田さんがさっき、「繊細さんはその距離を縮めようとしていくんだけど、ちょっと打ち砕かれたりもする」みたいなことをおっしゃっていたので。
お客さまだろうと、「これ以上やったら許さないぞ」を決める
武田
今、そのお話を伺って、同じ「苦手な人、面倒くさい人にこそ行く」でも、たぶんその「行く」の種類が違うんだなと思いました。
堀井
うんうん。おもしろい!
武田
さっきの悪口言ってる人のところに「失礼します!」って割って入ったっていうのは……全然負けてないですよね。その2人に(笑)。
堀井
そうですね(笑)。
武田
なんか繊細さんからご相談いただくときに「苦手な人に近づいてしまう」っていうときって「その人を怒らせないようなアクションを取りに行く」っていう感じなんですよ。
ちょっと機嫌を取ってしまうというか。その人をすごく褒めたりとか。あとは「自分に嫌なことをしないでください」っていう風に、すごく下からいっちゃうんですよね。そうすると、かえって八つ当たりされたりとか、もっと対応がひどくなったりしちゃうんですよ。
で、私もカウンセラーなので、いろんな相談者さんがいらっしゃるんですよね。中には初対面であっても、いきなり八つ当たりがはじまるみたいな方もおられるわけです。
自分自身も悩んで、自分がカウンセリングを学んだお師匠さんに相談したことがあるんです。そうすると「それはお前、なめられてるんだ」って言われて。
「人間も動物だから、どっちが強いのかを見ている。お前に何を言っても反論してこないって相手がわかってるから、ひどい態度を取られる。たとえお客さんであろうと『これ以上やってきたら許さないぞ』っていうことをまず決めなさい」って言われて。
で、それを決めたら、そういう人が本当にいなくなったんですよね。ですので、さっきの堀井さんのエピソードってすごく自分を守る強さがあるんだろうなと思って。その「なにかしてきたら、許さない」っていう。それがまず一番、大事なんだろうなと思っています。
堀井
そうですね。「私はここまでは許せない」とか、ここはしっかり防波堤として作っておくとか。なにか、一線を自分で決めておくと、楽なのかもしれないですね。コミュニケーションのなかで「これをされたら、ここは言おう」とか、あるのかもしれないですよね。
武田
一線を決めると不思議なことに、嫌なことに遭遇しなくなるんですよね。やっぱり相手もわかるんだと思います。「ああ、この人は言ったらしっかり怒る人だな」って。そうなると、嫌なことをしてこず、その人のよい面を見せてくれるようになるんですよね。そうして、関係が対等になっていくんだと思っています。
堀井
なるほど。
<書き起こし終わり>
文:みやーんZZ
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