「自然災害時の通勤中にケガ・・・。コレって労災適用?」社労士がQ&A解説!


こんにちは、 特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

日本列島を次々と記録的な台風が直撃し、甚大な被害が出ています。このたびの台風被害に際し、心よりお見舞いを申し上げます。

これらの被害は、通勤・勤務中にも起こりうるものであり、壮絶な通勤状況も各種メディアやSNS等で大きく取り沙汰されました。

そこで本稿では、自然災害発生時に起こりうる通勤時のトラブルが労災適用されるのかについて、具体例を挙げながらQ&A形式で解説します。

【Q1】通勤時に骨折・・・、これは労災扱い?

【Q1】台風の日に会社に行こうとしていたら、強風に飛ばされた看板が腕を直撃し、骨折をしてしまいました。労災扱いになるのでしょうか?

【A1】労災が適用されます

業務中だけでなく、通勤時の災害も労災保険の補償範囲に含まれますので、原則としては労災が適用され、治療費や休業補償などの受給が可能です

ただし、前日のうちに会社が台風のため臨時休業を決めていたにもかかわらず、社員が独断で出社をしようとしていたというような場合には、通勤には該当せず、私的な行為中の事故として扱われてしまう可能性があります。

会社が明確に臨時休業を決めている場合には、仕事のことが気になっても、出社することは業務命令違反になるうえ、通勤中の怪我が補償されないリスクも生じますから、良かれと思って独断で出社しても、何ひとつ良いことはありません。

【Q2】台風後も駅が入場規制。長蛇の列で熱中症に・・・

【Q2】台風が通り過ぎたので出社をしようとしたら、鉄道会社が入場規制を行っていて、改札外に長蛇の列ができていました。何とかして出社をしようと列に並んでいた途中、熱中症で倒れ、救急車で運ばれてしまいました。これは労災になるのでしょうか?

【A2】労災が適用されます

上記のような事例も労災になります。労災は、通勤に起因するケガだけでなく、通勤に起因する熱中症などの病気にも適用されます。

なお、会社側としては、従業員から「会社に向かおうと駅で並んでいるが、体調が悪い」という連絡を受けた場合、「無理をして出社をせず、家に戻って静養してください」伝えるべきです。

逆に「何が何でも出社するように」というような指示をした場合、万が一、熱中所で倒れてそのまま死亡してしまったような場合には、安全配慮義務違反で、遺失利益や慰謝料など、労災保険からの補償を超える部分の補償を会社として行う必要が生じる可能性もあります

【Q3】公共交通機関が使えずマイカー通勤で事故に・・・

【Q3】普段は会社に届け出た経路で、公共交通機関を利用して通勤していますが、台風通過のあと、なかなか公共交通聞が復旧しないので、マイカーで会社に向かうことにしました。ところが、その途中、交通事故にあいケガをしてしまいました。勝手に車通勤をしてしまったことが気になるのですが、労災扱いになるのでしょうか?

【A3】労災が適用される可能性が高いと考えられます

絶対に大丈夫だとは言えませんが、労災扱いになる可能性が高いです。平常時においては、会社に届け出ていないルートや交通手段で通勤をした場合、労災に認定されない可能性があります。

しかし、台風の影響で公共交通機関が利用できなかったのでマイカーで通勤をしたというのは、社会通念上合理性があり、やむを得ない事情が認められますので、労災扱いになる可能性が高いと考えられます

【Q4】通勤が困難な友人をマイカーでピックアップ。送った後の道のりで事故に・・・

【Q4】普段からマイカー通勤ですが、公共交通機関で通勤している友人が、公共交通機関が復旧していなくて困っていたので、友人を会社に送ってから出社しようとしたら、友人の会社から自分の会社に向かう途中で事故を起こし、ケガをしてしまいました。労災扱いになるのでしょうか?

【A4】労災は適用されません

このケースは、残念ながら労災扱いにはなりません。通勤時の怪我が労災扱いになるのは、あくまでも自宅と会社の合理的な往復の経路上でのケガであり、その経路を外れると私傷病扱いになってしまいます。

親切心から友人を送ったのに労災扱いにならないのは残念ですが、法律上のルールなのでやむを得ません。

【Q5】会社の指示を受けマイカー通勤時に通勤が困難な同僚をピックアップしたものの事故に・・・

【Q5】普段、マイカーで通勤をしています。台風通過後、公共交通機関が復旧しておらず、通勤が困難な同僚を迎えに行った上で出社してほしいと会社から指示を受けました。会社の指示に従い、同僚を迎えに行った上で、同僚と一緒に会社に向かおうとしたら、その途中で事故にあい、私と同僚はケガをしてしまいました。それぞれ労災扱いになるでしょうか。

【A5】本人・同僚とも労災が適用されます

まず、運転者の本人に関してです。Q4と状況は似ていますが、大きな違いは、「会社の指示を受けて」同僚を迎えに行ったということです。

会社の指示があったので、同僚の送迎は業務の一環であると認定され、業務災害として労災が適用されます。

同僚に関しても、普段とは違う交通手段ではありますが、会社の指示を受けてマイカーに同乗しており、台風で公共交通機関が止まっていたというやむを得ない事情もありますので、労災扱いとなります。

【Q6】台風接近のためタクシーで帰宅しようとしたら、割り込みトラブルでケガ・・・

【Q6】会社からの帰宅時間に台風が接近していて、タクシー乗り場に大行列ができていました。列に割り込んできた人と口論になり、最終的には喧嘩になって、相手から殴られて大ケガをしてしまいました。これは労災になりますか?

【A6】労災が適用されるかはケースバイケースです

労災扱いになるかはケースバイケースです。あくまでも本人に冷静さが残った状態での口論から、相手が一方的にヒートアップして殴られたというのであれば、労災扱いになります。

しかし、自分が相手を必要以上に挑発したり、一方的に殴られたのではなくお互いに手を出し合っての喧嘩の結果、ケガをしたということであれば、本人にも帰責性があるとして、労災扱いにはなりません。

なお、自分に責任がある場合の喧嘩によるケガは、健康保険からも給付が受けられませんので、治療費は全額自己負担になってしまう可能性もあります

台風で交通機関が乱れているときは、自分も他人も殺気立ってしまいがちですが、当然のごとく、どんなにカチンときても喧嘩をするのは得策ではありません。

おわりに

「通勤」は、平時は日常的な風景のひとつですが、台風や大雪などの自然災害の際には、様々なイレギュラーなことが発生します。

万が一、通勤をする、あるいは通勤の指示をする必要がある場合においては、通勤災害になるケース・ならないケースを頭に入れていただいたうえ、無理をせず可能な限り安全を確保して通勤するよう細心の注意を払ってください。

もちろん、危険性の高い場合は、仕事で気になることがあっても、自分の生命や身体の安全が最優先ですから、「通勤をしない」という判断をすることも大切です。

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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