「店長が勝手に勤怠カード切ってる・・・」こんなのアリ!?


こんにちは、弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士の浅野英之です。

タイムカード制の飲食店、小売店などで、閉店後の締め作業中などに、店長が勝手にタイムカードを切ってしまうという労働相談が少なくありません。

更には、そもそもタイムカードがなく、閉店時刻をそのまま終業時刻とされ、その後に働いても残業とされないということもあります。

しかし、これらのタイムカードの取扱いは、いずれも違法です。

そこで今回は、飲食店や小売店における、タイムカードを勝手に切られてしまう問題とその対応について、弁護士が解説します。

タイムカードの不正打刻とは?

飲食店や小売店など、店舗のあるビジネスでとくに起こりがちな、タイムカードの不正打刻には、次のとおりさまざまなバリエーションがあります。

  • 閉店時間になると、勝手にタイムカードを打刻される。
  • タイムカードを打刻させた後に、店の閉め作業、片付け作業を命令される。
  • タイムカードは、閉店時間に切るように自動的に設定されている。
  • 終業時刻にはタイムカードを切らず、閉店時間で一律に計算されている。

いずれの場合も、労働者が働いていることから残業代を請求することができるにもかかわらず、会社が労働者の残業時間を把握できないようにしてしまうことによって、労働トラブルが発生することとなるわけです。

「実労働時間」の証拠を残す必要

以上のような、会社側におけるタイムカードの不正はいずれも、残業時間を把握しないことによって、労働者への残業代支払を免れようというのが目的です。

しかし、会社が労働者の実労働時間を把握していない場合であっても、労働法的には、残業代がなくなるわけではありません。「1日8時間、1週40時間」を越えて働けば、タイムカードがなくても残業代は発生します。

残業代の金額を証明する責任は、労働審判や訴訟においては「労働者側」にあることから、せっかく働いた分の残業代が請求できないこととなってしまうおそれがあるため、労働者としては、自分の実労働時間を把握して、証拠に残しておく必要があるわけです。

事前の証拠収集が間に合わなかったら?

「タイムカードを勝手に切られている……」と気づいたときには、既に働いた後であって、今から実労働時間の証拠を残そうとしても間に合わないというケースも残念ながらあります。

この場合であっても、労働者の作成したメモも、残業代を請求するときの労働時間の証拠になることから、残業代請求自体は可能です。

特に、会社側がタイムカードを用意していなかったり、勝手に切っていたりといった明らかな不正行為がある場合、労働者側の準備した証拠が必ずしも十分でなかったとしても、ある程度の金額の残業代が認められることも少なくありません。

アルバイトにも残業代は払われる

「タイムカードを勝手に切られている。」という労働問題のときにありがちなのが、飲食店や小売店などで、アルバイト社員であるがために、残業代の請求を労働者側が既にあきらめてしまっている、というケースです。

しかし、アルバイトであるか正社員であるかという雇用形態の問題と、残業代請求ができるかどうかの問題とは別であって、アルバイト社員であっても、所定労働時間を超えて働けば、残業代が発生します

そのため、アルバイト社員であったとしても、タイムカードを店長が勝手に切ってしまうような店舗ではたらいている場合には、自分の労働時間の記録を、証拠化しておかなければなりません。

不正打刻をした店長の処分は?

最後に、タイムカードを勝手に切るなどの不正打刻をする店長には、何らかの罰は下されないのでしょうか? 会社としては、処分を検討すべきでしょうか?

労働者の立場からすると、店長に対しても、会社が厳しく注意をしたり、場合によっては懲戒処分や解雇としてほしいと考えることでしょう。

しかしながら、タイムカードを勝手に切る店長は非常に問題ではあるものの、その店長に対してどのような処分をするかは、会社の判断に委ねられています。

ただ、店長から、理不尽な残業命令が出ていたり、暴言、暴力などがあったりといったパワハラ行為が横行している店であれば、店長に対して、労働者から直接、慰謝料請求や損害賠償請求を行うことができます。

まとめ

今回は、飲食店や小売店などの店舗ビジネスでよくありがちな、「店長が勝手にタイムカードを切ってしまう。」問題について、弁護士が解説しました。

タイムカードの取扱いについて疑問のある会社様、職場におけるタイムカードについて不正があるのではないかと不安な労働者の方は、ぜひ一度弁護士にご相談くださいませ。


【編集部より】飲食業におけるSmartHR導入事例

飲食業でSmartHR導入後に起きた変化とは?
飲食業におけるSmartHR導入事例

アルバイト人材をはじめ、多くの入退社手続きが発生する飲食業界は、その管理も煩雑。特に多くの業態や店舗を持ちチェーン展開する会社では、管理が分散してしまうなど、より大きな課題を抱えます。この飲食業を営む企業が、SmartHR導入後、どのような変化が訪れたのかに迫ります。

弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。企業側労働問題を得意とする石嵜・山中総合法律事務所にて、労働問題に関する数多くの相談対応、顧問先企業の労務管理を行ってきた経験を活かし、弁護士法人浅野総合法律事務所を設立。以降、「労働問題に強い弁護士」として、企業側はもちろん、労働者側の相談にも対応し、労働問題のスペシャリスト弁護士として活動中。特に成長中のベンチャー企業、中小企業の人事労務のコンサルティングに定評がある。 【企業向けメディア】ビズベン!
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