年末調整シーズン目前!「令和2年度 税制改正」に伴う6つの変更ポイント

2020.09.03 ライター: 大塚 健斗

こんにちは、SmartHR 人事労務 研究所の大塚です。

人事労務担当者さまにとって、毎年恒例の年末調整シーズンに差し掛かっています。

年末調整は負担の大きな一大イベントですが、令和2年の年末調整は税制改正の影響で、例年以上に大変になることが見込まれます。

そこで今回は、どのような改正があったのかを6つの項目で整理し、解説してまいります。

なお、【1】〜【3】までの内容は、以前の税制改正の解説記事で紹介した内容から変更ありません。おさらいとしてご確認ください!

2020年は税制改正で「年末調整書類」が大きく変わる! 改正内容と新書類を解説します。

【1】給与所得控除の引き下げ

概要

給与所得控除額が以下のとおり変更されます。

  • 一律10万円ずつの引き下げ
  • 上限額の適用される収入金額が「1,000万円超」から「850万円超」に引き下げ
  • 上限額については、220万円から195万円に引き下げ

給与所得控除の引き下げ

ポイント

給与所得控除額が引き下げられていますが、後述の「基礎控除の引き上げ」により相殺され、多くの方に影響ありません。具体的には、「収入が給与のみ」かつ「収入850万円以下」の方は、プラスマイナスゼロとなります。

一方で、上限の引き下げによって、去年と収入が変わらない場合でも、配偶者(特別)控除の金額が変わる可能性があります。

特に、年収が1,000万円を超える方については、ご注意ください!

【2】基礎控除の引き上げ

概要

基礎控除額が以下のとおり変更されます。

  • 合計所得金額2,400万円(年収2,595万円※)以下の場合、10万円の引き上げ
  • 合計所得金額2,400万円(年収2,595万円※)を超える方に段階的に減額
  • 合計所得金額2,500万円(年収2,695万円※)を上限とし、それを超える方への適用は不可に

※ 収入が給与収入のみの場合

基礎控除の引き上げ

ポイント

基礎控除の判定にあたり、昨年までは配偶者(特別)控除を受ける方のみ申告が必要だった「給与以外の収入」について、ほぼ全ての納税者について申告が必要になります。

【3】扶養親族等の合計所得金額の要件等の見直し

概要

「給与所得控除額の引き下げ」と「基礎控除の引き上げ」に伴う、各種所得控除を受けるための扶養親族等の所得要件が引き上げられています。

▼ 対象と金額

扶養親族等の合計所得金額の要件等の見直し

ポイント

収入が給与のみの方については、特に影響がありません。

【4】所得金額調整控除の創設

概要

背景

働き方の多様化を後押しする観点等から「【1】給与所得控除額の引き下げ」「【2】基礎控除額の引き上げ」が行われました。

これらの税制施策には、「基礎控除額の逓減」「給与所得控除額の上限引き下げ」という高所得者層に向けられた増税も含まれており、年収850万円以上の方については実質増税となっています。

その中で、子育てや介護に対する配慮のもと、これらの対象者について税負担を増やさないよう、本制度が創設されました。

所得金額調整控除の種類

所得金額調整控除には「(子ども等)」と「(年金等)」の2種類がありますが、このうち、年末調整で控除を受けられるのは、「所得金額調整控除(子ども等)」のみです。以降、特に指定のない場合、所得金額調整控除は「所得金額調整控除(子ども等)」を指します。

所得金額調整控除の適用条件

所得金額調整控除は、以下のいずれにも該当する場合に受けられます。

  • 要件1. 給与収入が850万円を超える
  • 要件2. 以下いずれかに該当する
    • A:給与所得者本人が特別障害者
    • B:同一生計配偶者が特別障害者
    • C:扶養親族が特別障害者
    • D:扶養親族が23歳未満

同一生計配偶者または扶養親族については、自分以外の所得者が控除対象としている場合も対象にできます。

(例)共働き世帯で、夫の扶養控除対象としている23歳未満の子供がいる場合、妻も所得金額調整控除の対象となる。

所得金額調整控除の計算式

(給与等の収入金額(※)− 850万円)× 10%

※ 給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には「1,000万円」で計算

ポイント

複雑な制度なので、注意すべきポイントは多くありますが、特に注意いただきたいポイントを3点に絞って説明します。

(1)他の所得者が控除を受ける扶養親族

今まで、収集対象としていなかった可能性がある「他の所得者が控除を受ける扶養親族情報」の収集が必要になります(上述のとおり、共働き世帯などの場合)。

※ 収集が必要なのは、夫婦のどちらもが給与収入850万円を超えているケースになります。

(2)前職および副業からの給与収入の扱い

所得金額調整控除の計算において、前職および副業からの給与収入は以下のとおり扱います。

  • 前職から甲欄として受けた給与収入は対象に含めて計算する
  • 副業している場合の乙欄としての給与収入は計算対象に含めない

※ 抜粋:所得金額調整控除申告書の裏面

年末調整における所得金額調整控除の額については、主たる給与の支払者が主たる給与の収入金額を基に計算することになります。そのため、その計算に当たっては他の給与の支払者から支払を受ける給与は含まれず、(以下略)

(3)「合計所得金額」に所得金額調整控除を反映

各申告書の「合計所得金額」には、所得金額調整控除を反映する必要があります。
※ この「合計所得金額」は、以下控除などの適用判定に用います。

  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 寡婦・ひとり親控除
  • (源泉控除対象配偶者)

▼ 参考
・国税庁「所得金額調整控除に関するFAQ(源泉所得税関係)

【5】「寡婦(夫)控除」の見直し・「ひとり親控除」の新設

概要

「未婚のひとり親」「男女の扱い」に対する、公平な税制支援を目指し、この度改正が行われました。

「ひとり親控除」の新設

合計所得金額が500万円(年収678万円※)以下の(未婚者を含む)ひとり親の場合、申告する本人が男性か女性かによらず、一律で35万円が控除されます。

寡婦(夫)控除の見直し

上記により、従来、合計所得金額が500万円(年収678万円※)以下の男性のひとり親(未婚を除く)が対象だった「寡夫控除」は、「ひとり親控除」となっています。また、「特別の寡婦」もなくなっています。

合計所得金額が500万円(年収678万円※)以下で、従来の「扶養する子がいない場合の寡婦」に該当する女性は、「寡婦控除」として27万円が控除されることになります。

※ 収入が給与収入のみの場合

詳しくは、下の2つの図表をご覧ください。

出典:財務省「令和2年度 税制改正 1 個人所得税・資産課税 (1)未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し

 

出典:財務省「令和2年度 税制改正 1 個人所得税・資産課税 (1)未婚のひとり親に対する税制上の措置及び寡婦(寡夫)控除の見直し

ポイント

この改正は例年とは少し変わっており、年の途中での制度適用になります。

そのため、以下の特有の課題があります。

特有の課題1:適用タイミング

制度としては、「寡夫」「特別の寡婦」が廃止となり、「ひとり親」が追加となります。

ただし、令和2年中において、改正後の「寡婦」「ひとり親」が適用されるのは、2020年4月1日以降の年末調整と確定申告のタイミングです。そのため、以下3つの注意点があります。

  • 月々の給与・賞与では改正前の控除が適用され、年末調整では改正後の控除が適用される
  • 2020年4月1日以降の中途年末調整者について、改正後の控除を適用する必要がある
  • 一方で、2020年3月31日以前の中途年末調整者が、改正後の控除を受けるためには、個人で確定申告する必要がある

特有の課題2:書類への影響

<扶養控除等(異動)申告書、源泉徴収簿>
公式書類には「ひとり親」がないため、手書きで追記の必要があります。

<源泉徴収票>
公式書類には「寡夫」「特別の寡婦」がないため、年末調整の対象外となった方(=改正前の控除を適用する方)については、改正前の「寡婦」「寡夫」「特別の寡婦」であることを、源泉徴収票の摘要欄に記載する必要があります。

その他のポイント

改正後の「寡婦」「ひとり親」には、新しく「事実婚の有無」が要件に追加されました。従来の年末調整では収集していなかった情報なので、予め担当者から従業員に確認することを周知しておくと良いかもしれません。

また、この改正に伴い、令和2年の扶養控除等(異動)申告書から設けられた「単身児童扶養」欄への記入は不要になりました。当初は令和2年分の住民税に対してのみ、「ひとり親控除」に似た制度が設けられておりましたが、所得税にも同制度が適用された結果、この項目は不要となっています。

▼ 参考
・国税庁「ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ(源泉所得税関係)
・国税庁「令和2年分 給与所得の源泉徴収票の記載の仕方

【6】住宅借入金等特別控除の区分追加

概要

住宅借入金等特別控除(通称:住宅ローン控除)に、「特別特定取得」の区分が追加されます。

これは、消費増税に対する措置で、10年間だった住宅借入金等特別控除の期間を13年まで延長するものです。11年目から13年目までの計算は、従来のものと異なるのでご注意ください。

ポイント

この改正については、実際の年末調整計算で考慮するのは少なくとも2029年からになります。そのため、しばらくは現在の「特定取得」と同様の計算方法です。

住宅借入金等特別控除申告書、および、源泉徴収票の区分値のみご注意ください。

おわりに

以上、税制改正の影響を踏まえた、令和2年分の年末調整のポイントをご紹介しました。

ただでさえ難解な、「所得金額調整控除」とその書類「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に加え、年の途中での税制改正が加わり、まさに“カオス”の一言に尽きます。

これらの改正内容をすべて理解しないことには、年末調整の申告書を書くことはできません。全ての内容を知らなくても正しく申告ができるようになっているツールを使用しない限り、従業員も人事担当者も「もう手書きは無理なんじゃないか……」と思うほどです。

そのため、改正の概要を理解しつつも、年末調整を手助けするクラウドソフト等を駆使するなどして、今年も年末調整シーズンを乗り越えましょう!

大塚 健斗

株式会社SmartHR 人事労務 研究所所属。ユーザ系SI企業にて人事給与システムおよび給与業務のアウトソーシングを担当する事業に従事。主にシステムの導入コンサルティングを担当し、従業員数3万人を超える大企業や給与業務フルBPOを受託する企業など、20社以上を担当。2020年4月より、SmartHRに参画。
他の執筆記事はこちら

手続き・制度の関連記事

手続き・制度の新着記事

働き方改革特集

SmartHR スタートガイド