人事労務担当者にとって、全社員の年末調整は重要かつボリュームの大きな仕事です。
この業務をできるだけスムーズに行うためには、その年の変更点について細かく理解しておく必要があります。また従業員にしっかりと対応してもらう必要もあります。
本稿では、平成30年からの年末調整の注意点と、従業員に伝えるべきポイントついて解説します。
平成30年分 年末調整の注意すべき3つのポイント
(1)「保険料控除申告書」と「配偶者控除等申告書」とに分かれる
平成30年の年末調整から従業員の提出書類が増えます。
具体的には、「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」として1枚だったものが、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2枚に分かれました。
配偶者控除を希望する社員には、必ず「給与所得者の配偶者控除等申告書」の提出を促してください。
前年まで「給与所得者の配偶者控除等申告書」という書式はなく、控除申告書にまとめて記載すればよかったので、特に注意が必要です。
(2)「配偶者控除等申告書」の提出忘れに注意
前述の「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、平成30年から提出が義務づけられている新しい書式です。新しい書式に慣れるまでは提出を忘れる社員も続出しそうです。
しかし、従業員の提出し忘れを会社が察知できる方法があります。従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が提出されたら、「源泉控除対象配偶者」という欄をチェックしてください。
ここに記載があるのに、「給与所得者の配偶者控除等申告書」がない場合は提出を忘れています。
(3)従業員と配偶者双方の「給与所得」を本人算出してもらう必要がある
「給与所得者の配偶者控除等申告書」を提出する際に忘れてはいけないのが、従業員と配偶者双方の所得金額の記入です。
従業員と配偶者の所得見積額を明らかにする必要があります。なお、従業員と配偶者の所得見積額は、「給与所得者の配偶者控除等申告書」の裏面に記載されている給与所得の計算表で算出可能です。
従業員に「給与所得者の配偶者控除等申告書」を配布する際は、所得見積の算出と給与所得の計算表について説明を加えましょう。
(詳しい計算はこちら ▶ 追加された「配偶者控除申告書」の書き方を解説。今のうちに知るべき年末調整効率化のポイントは?)
従業員に伝えておきたい「平成30年分 年末調整」のポイント
一般の従業員にとって、人事労務に関する業務はなじみが薄いものです。しかも、年末調整は1年に1回しか行いません。
そのため、ほとんどの従業員が提出書類について知識が浅く、上記の注意点を事細かに伝えても、あまり理解されないかもしれません。重要なポイントを端的に伝えたほうが理解しやすいでしょう。
その際、従業員に伝えるべきトピックは次のとおりです。
まず、1つは「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」が、「給与所得者の保険料控除申告書」と「給与所得者の配偶者控除等申告書」の2枚に分かれたこと。
そして、税制改正によって配偶者特別控除の適用範囲が拡充されたことです。例えば、配偶者の収入が年収200万円前後であれば、配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
(詳しい対応表はこちら ▶ 改正された「配偶者控除」と「扶養親族等の数」の変更ポイント)
しかし、配偶者控除を受けるには申告書の提出が必須であり、なおかつ従業員と配偶者の所得見積額を記載しなくてはならないことも、必ず伝えてください。
申告書の書き方や記入例を説明した見本を用意すると、理解が深まるでしょう。
まとめ
この度の改正点を押さえず、例年どおりの手順で年末調整を進めるとやり直しが生じ、二度手間になる恐れがあります。
年末調整をスムーズに行うために、人事労務担当者は変更点を常にチェックし、従業員に早めに周知することを心がけましょう。
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