働き方改革が叫ばれる昨今、長時間労働の解消や有給休暇推進に向けて生産性向上を図るべく、様々な取り組みが注目されています。
読者の方の中にも、業務フローの改善やITツールやリモートワークの導入など、各種施策を検討中のご担当者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、施策によって導入費や人件費など、程度の差はあれど、何らかの形でコストはかかるものですし、費用対効果も踏まえる必要があるでしょう。
今回は、中小企業・小規模事業者の生産性向上を支援する「業務改善助成金」をご紹介します。
「業務改善助成金」ってどんな助成金?
「業務改善助成金」とは、個々の事業場が事業の効率化や働き方の見直しを実施して生産性の向上を実現し、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)の引き上げを行った場合において、生産性向上のための設備投資等にかかった費用の一部を助成するものです。
支給対象は、事業場内最低賃金が1,000円未満の中小企業・小規模事業者となります。
助成の上限額は、後述の5つのコースに応じて50万円〜200万円を受給でき、生産性向上を目指す中小企業にとって心強い制度といえるでしょう。
生産性の向上とは?
設備投資(機械設備・POSシステムなどの導入)や人材育成にかかる研修、業務改善の為のコンサルティングにより、生産性を向上し、業務を効率化させることをいいます。
導入例を見てみると、下記のようになっています(*1)。
- POSレジシステム導入による在庫管理の短縮
- リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮
- 顧客・在庫・帳票管理システムの導入による業務の効率化
- 専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上
- 人材育成・教育訓練による業務の効率化
これらを踏まえると、各社の特性によって、「生産性」に係る要素の中でも、改善を図るべき課題は異なるはずです。
具体的に何を改善するのか、どのように改善するかなどは、課題分析のもと、適切な形で取り組むのが良いでしょう。
賃上げに応じた5つのコースとそれに応じた助成金上限額
設備投資などで生産性が向上し業務の効率化が図れますと、作業負担の軽減や時間の短縮などの効果が生まれます。
そうしますと、売上げ増など に向けた人員の配置が可能になり、また作業の精度も上がります。そういった効果を賃上げで反映させます。
賃上げは5つのコースがあり(30円以上・40円以上・60円以上・90円以上・120円以上)、コースごとに助成額の上限が決まっています。

具体的な助成金申請フロー
事業実施計画を策定します。
(1)計画賃金引上げ・・・事業場内最低賃金を一定額以上引き上げる計画です。(就業規則等に規定)
(2)業務改善計画 ・・・生産性向上のための設備投資などの計画
ここまで来ましたら、今度は申請までの流れを紹介します。
申請における4 STEP
申請に当たっては下記のようなSTEPで進行します。

このSTEPをもう少し細分化すると、下記のようなフローとなります。
- 事業改善計画と賃金引き上げ計画を記載した「助成金交付申請書」を都道府県労働局へ提出する
- 内容が適正と認定され次第「交付決定通知」が届く
- 生産性向上に資する機器・設備などを導入することにより業務改善を図る
- 事業場内の最低賃金を一定額以上に引き上げる
- 業務改善計画の実施結果と賃金引上げ状況を記載した「事業実績報告書」の提出する
- 助成金額の確定後に助成金が支払われる
まとめ
計画なしに闇雲に取り組むものではなく、また導入したら導入しただけで終わるものではないことを必ずご認識ください。
助成金受給には、確かな実施計画のもと、その実績を振り返り提出する必要があります。
計画と実行、振り返りという流れは、一般的に言うPDCA(Plan・Do・Check・Act)サイクルにおけるPDCに当てはめて考えることができるかもしれません。そして、ここに「A(Act;改善)」が無いことにもご注意ください。
事業全体で捉えれば「助成金」それ自体は、あくまで手段です。「助成金」目的で事業に取り組むものではありません。
しかし、助成金申請およびそのフローを生産性向上におけるPDCAサイクルの一部であるとし、「改善意識」を忘れず取り組むことができれば、助成金抜きにしても、改善活動は循環し、自ずと事業所が活性化していく可能性を持つのではないでしょうか。
【参照】
*1:業務改善助成金 – 厚生労働省