こんにちは、アクシス社会保険労務士事務所の大山です。
平成30年からの源泉徴収票は、平成28、29年のものとは微妙に文言が変わっています。
見た目の変更はさほどなくても、その内容は大きく変わっているので、昨年と収入などが変わっていないのに控除額が大きく違うなどがあるかもしれません。
そこで今回は、給与所得の源泉徴収票について、どのようなときに必要な書類か、その内容はどのように読み解けば良いのかなどについてまとめたいと思います。
この記事で分かること
源泉徴収票とは?
まず、源泉徴収票とは何か改めておさらいをしておきましょう。
会社員の多くは、12月に年末調整を受けると思います。年末調整では、この1年間の家族構成の変化や各種所得、支払った社会保険料などを報告することで、納付すべき所得税額を確定し、その結果、1年間の給与所得から天引きされてきた税額の合計に過不足があれば、徴収や還付により調整されます。
そして給与所得の源泉徴収票は、この年末調整の結果をまとめた帳票といえます。
源泉徴収票が必要なタイミング
年末調整の結果として事業主から配布される源泉徴収票は保管しているでしょうか。
源泉徴収票は、会社に言えば再発行はしてくれますが、重要な書類なのでしっかり保管するようにしましょう。
ここでは、源泉徴収票が必要なタイミングを見ていきます。
(1)年末調整後の確定申告時
多くの会社員は、年末調整で所得税は確定しますが、年末調整では考慮されない一定額を超える医療費を支払った人や、ふるさと納税など寄付をした人は、確定申告をすることで一定額の所得控除や住民税の税額控除がされるので、年末調整の後に改めて確定申告をすることができます(ふるさと納税をした時のワンストップ特例制度で確定申告をしないで済むケースもあります)。
その際に、源泉徴収票があると、年末調整の各種金額を確定申告書へ再度記入する際の転記が容易になります。なお、源泉徴収票があるのであれば確定申告書に貼付します。
(2)転職時
年の中途で自己都合により会社を退職、あるいは会社都合により失業すると、退職/失業月までの源泉徴収票が会社から発行されます。
この源泉徴収票は、その年に新たな会社に転職をする際に提出する必要があります。
これは、新たな会社がその年の年末調整をするときに、前の会社の所得も含めた年間所得を把握するためです。
(3)公的年金の裁定請求
年齢などの条件を満たしたことで公的年金の裁定請求をする際、生計維持関係にある配偶者などがいるのであれば、配偶者(場合によっては請求者本人)の所得を証明する書類として源泉徴収票を提出することもできます。
その際必要となる源泉徴収票は、必ずしも最新のものだけではないこともあります。
このような場合、すでに退職後であっても3年以内であれば、前の会社が発行してくれます(3年以上経っていても発行してくれる場合もあります)。
公的年金の裁定請求時には、所得を証明する書類として、(非)課税証明書に代えて源泉徴収票が使えるのです。
(4)融資、賃貸契約、保育園への入園など
消費者金融など、貸金業法のもとでお金を貸し付ける業者から借金をする際には、年間収入の1/3までの貸付額上限を規定した「総量規制」があります。
借入額が50万円を超える場合、消費者金融から収入証明書の提出を求められるので、その時源泉徴収票が必要になります。総量規制のない銀行などへの融資申し込み時も必要になります。
アパートなどの賃貸契約をする際、貸主に将来に向かって家賃の支払い停滞がないことを証明するために収入証明書(源泉徴収票)の提出を求められることがあります。
保育園などは入園の条件として保護者が就労している必要があるので、申込みの際、保護者全員分の就労証明書や収入証明書(源泉徴収票)の提出が必要です。
源泉徴収票の見方
源泉徴収票は、具体的にどのような項目があるのでしょうか。
源泉徴収票の一部を上の図で示し、その意味と見方を解説していきます。
「支払金額」
給与・賞与額のうち課税対象の総額です。非課税枠内の通勤費などの支給分を含まないこの金額が、年収です。
なお、この欄に「内」とありますが、源泉徴収票の発行時に、未支給の給与等がある場合、支払金額の内数としてここに書いた金額は未支給ということです。
「給与所得控除後の金額」
支払金額から一定の計算式によって求まる金額を差し引いた額が給与所得控除後の金額です。
「自営業者や個人事業主に認められている必要経費に相当する額を支払金額から控除できる」と考えるとわかりやすいと思います。
「所得控除の額の合計額」
本人の基礎控除や配偶者がいる場合の配偶者(特別)控除、控除対象扶養親族がいる場合の扶養控除、そのほか1年間に支払った社会保険料や生命保険料の控除額の合計が「所得控除の額の合計額」です。
「源泉徴収税額」
給与所得控除後の金額から所得控除の額の合計値を引いた額が課税所得で、この額から一定の計算式により源泉徴収税額が計算されます。
この源泉徴収税額が、1年間の確定した所得税と復興特別所得税の合計です。
この欄の「内」に金額が書かれているときは、支払金額欄の「内」で未払い分があれば、それに見合う所得税も未払いという意味です。
「(源泉)控除対象配偶者の有無等」
所得控除の額の合計額で説明しましたが、図のこの欄から右側の情報と、その下の社会保険料等の金額の欄から右側の情報から、一定のルールにより求まる控除額の合計に本人の基礎控除額を加えた額が所得控除の額の合計額になります。
なお、「従有」に〇がついているときは、他の給与所得のほうで配偶者控除を受けているということを意味します。また、控除対象扶養親族の数にある「従人」に数字が書いてあるときは、その人数分は、他の給与所得のほうで控除を受けていることを意味します。
さらに、老人や障害者の数の欄の「内」には、同居している老人や障害者の人数(内数)が書かれます。
(了)
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