過去最多となった平成30年の「在留資格取消件数」。人事が注意すべきことは?

2019.09.30 ライター: 弁護士法人ALG&Associates

こんにちは、弁護士法人ALG&Associatesの弁護士 長田 弘樹です。

法務省出入国在留管理庁の発表によると、平成30年の在留資格の取消し件数が、過去最多を更新したようです。

これを踏まえ、外国人労働者を雇用している会社の人事担当としては、どのようなことに注意すべきでしょうか?

出入国管理及び難民認定法(以下、「入管法」といいます。)の在留資格の取消しにまつわる注意点について解説します。

平成30年の在留資格の取消し件数

平成30年の在留資格の取消し件数は、過去最多であった平成29年の385件から832件へと大幅に増加したとのことです。

在留資格別の内訳としては、「留学」が412件(49.5%)と最も多く、次いで「技能実習」が153件(18.4%)、「日本人の配偶者」が80件(9.6%)となっています。

【参考】法務省「平成30年の「在留資格取消件数」について

在留資格の取消しとは?

在留資格の取消しについては、入管法第22条の4第1項各号に規定されています。

“在留資格の取消しとは、本邦に在留する外国人が、偽りその他不正の手段により上陸許可の証印等を受けた場合や、在留資格に基づく本来の活動を一定期間行わないで在留していた場合などに、当該外国人の在留資格を取り消す制度です。”

在留資格を取消された者は、必要な期間を指定することなく(入管法第22条の4第1項第1号、同2号、同第7項、第24条2の2号)、あるいは30日以内の出国するために必要な期間を指定されたときはその期間を経過した場合(入管法第7項、第24条2の4号)、強制的に本邦から退去させられる場合があります。

在留資格の取消しの具体例

在留資格は、以下の場合に取り消されることがあります。

■ 上陸拒否事由に該当しないものと偽り、上陸許可を受けたこと(入管法第22条の4第1項第1号)

  • 上陸申請時に、違法薬物を所持していないと申告し、上陸拒否事由に該当しないと偽って上陸許可を受けたが、その後違法薬物を所持していることが判明した場合

等がこれにあたります。

 

■ 第1号に掲げるもののほか、偽りその他不正の手段により、上陸許可を受けたこと(入管法第22条の4第1項第2号)

  • 「日本人の配偶者等」の在留資格を得るために、日本人との結婚を偽装し、偽造した戸籍全部事項証明書等を提出して在留期間更新許可を得た場合
  • 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を得るために、実際には勤務していない会社を勤務先として虚偽の職務内容をもって申請を行い、在留資格の変更許可を受けた場合
  • 「経営・管理」の在留資格を得るために、実際には存在しない会社を実態があるように装い、虚偽の所在地を記載して申請を行い、在留資格の変更許可を受けた場合

等がこれにあたります。

 

■ 第1号及び第2号に掲げるもののほか、不実の記載のある文書又は図画の提出または提示により、上陸許可を受けたこと(入管法第22条の4第1項第3号)

  • 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を得るために、実際には勤務していない会社を勤務先として記載した申請書を提出して、在留資格の変更許可を受けた場合

等がこれにあたります。

 

■ 入管法別表第1の在留資格をもって在留する者が在留資格に応じた活動を行っておらず、かつ、他の活動を行いまたは行おうとして在留していること(入管法第22条の4第1項第5号)

  • 留学生が学校を除籍された後に、アルバイトを行って在留する場合
  • 技能実習生が実習先から失踪した後に他の会社で勤務しながら在留する場合
  • 「技術・人文知識・国際業務」の在留資格をもって在留する者が、雇用先を退職した後に、当該在留資格に応じた活動以外の仕事を行っている場合

等がこれにあたります。

 

■ 入管法別表第1の在留資格をもって在留する者が在留資格に応じた活動を3月(高度専門職は6月)以上行わないで在留していること(入管法第22条の4第1項第6号)

  • 留学生が学校を除籍された後に、3か月以上在留する場合
  • 技能実習生が実習先から失踪した後、知人宅に身を寄せ、当該在留資格に応じた活動を行うことなく3ヶ月以上在留する場合

等がこれにあたります。

 

■ 「日本人の配偶者等」または「永住者の配偶者等」の在留資格を有する者が在留資格に応じた活動を6月以上行わないで在留していること(入管法第22条の4第1項第7号)

  • 「日本人の配偶者等」の在留資格で在留している者が、日本人配偶者と離婚した後も継続して6ヶ月以上在留している場合

がこれにあたります。

 

人事担当者が注意すべきポイント

法務大臣が在留資格の取消しをしようとするときは、入国審査官に当該外国人の意見を聞かなければならないとされています(入管法第22条の4第2項)。

意見を聴取する日が事前に指定され、当該外国人またはその者の代理人は、期日に出頭して意見を述べたり証拠を提出したりすることができます(入管法第22条の4第3項、同第4項)。

人事担当者としては、当該外国人から事情をよく聞いて、意見聴取に指定された日に代理人として同行し、当該外国人の言い分がきちんと伝わるように説明するとよいでしょう。

また、在留資格の取消しには、当該外国人には、3年以下の懲役もしくは禁錮もしくは300万円以下の罰金(入管法第70条1項3号~3の3号)という罰則規定があるのみならず、外国人を不法就労させる等した場合は、その雇用者等にも3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(入管法第73条の2第1項)に処せられる可能性があるので注意が必要です。

弁護士法人ALG&Associates

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