日本の「有休消化率」は50%で最下位…。各企業が向き合うべきポイントとは?


こんにちは、社会保険労務士の飯田 弘和です。

みなさんは、日本の有給休暇消化率(取得率)をご存知でしょうか?

エクスペディア・ジャパンの2017年の調査によると、日本人の有休消化率は50%で、調査を行った30ヶ国中最下位で “世界一の休み下手” とも言われます(*1)。

世界でみると、ブラジル・フランス・スペイン・オーストラリア・香港が有休消化率100%。お隣の韓国については、2016年は53%しかなかった消化率が、2017年には67%に大幅アップし、改善傾向にあります。

一方の我が国日本は、2009年から2017年の9年間の調査で、下から2番目のブービーが2回、残りは全て最下位という散々な結果です。

有休取得が進めば経済効果も期待できる?

政府は、「第4次男女共同参画基本計画」の中で、2020年までに有休取得率70%を目標に掲げています(*2)。現状値から、はるかに遠い目標です。

観光地域経営フォーラムの調査によると、有休の完全取得が実現した場合、約16兆円の経済効果と約188万人の雇用創出効果があるとする資産もあります。

これは2009年のデータであり、現在は多少変化しているとも考えられますが、経済的観点からみても有休消化に期待できる効果は少なくなさそうです(*3)。

なぜ日本はこの状況を打破できないのか?

このような効果が期待できるにも関わらず、一向に進まない有休の取得。なぜ、日本はこの状況を打破できないのでしょうか?

理由はいくつか考えられます。

  • 病気や急な用事のために残しておきたいという理由。
  • 仕事量が多かったり、仕事を代わりに引き受けてくれる人がいないなどの人手不足による理由。
  • 休むと同僚に迷惑がかかるとか、周囲の人が取らないからなどの取りにくい雰囲気があるという理由。

特に、管理職者の取得率や、卸小売業・宿泊業・飲食サービス業などの取得率の低さが目立ちます。

有休取得率を上げるために考えられること

一体どうすれば、有休取得率を上げることができるのでしょうか?

まず、国家・地域レベルで見ると、EUでは、年間最低4週間の年休付与義務が定められています。

日本でも、年5日の有休取得の義務化が予定されています。このように、法律等によって強制的に有休を取らせるような後押しも必要です。

特に、日本のような取得率の低い段階では、強制的に取得させなければなかなか現状を変えることはできないでしょう。

過剰な仕事量とどう向き合うか?

企業レベルでみると、過剰な仕事量を解決しないことには、有休取得率の向上は難しいでしょう。特にこれからは、ますます人手不足が深刻化していきます。

一方、「働き方改革」のもと、業務効率化、生産性向上を推進することで、結果的に有休を取得しやすい職場へと変わっていくことも期待できます。

そのため、有休取得率の向上ありきで考えるのではなく、自社の経営計画やそれに基づく業務計画のもと、包括的に働き方を見つめ直し、「有休」もれっきとした計画の一要素として捉えていく必要があるのではないでしょうか。

ネガティブイメージを払拭する意識改革も必要

有休とは別に、私傷病のための特別休暇を設ければ、緊急時のために有休を取っておくという発想も薄れます。

加えて、同僚に迷惑がかかるという有休取得に対するネガティブなイメージを変えていく必要があります。

そのためには、管理職者が率先して有給を取得するよう、トップからの働きかけが重要となります。

管理職者が進んで有休を取っている職場は、有休取得率が高い傾向にあります。

また、「計画的付与」の導入などで、計画的に有休を取らせることで、有給に対するイメージがネガティブなものから身近なもの、あるいはポジティブなものに変わり、計画有休以外の通常の有休取得の向上につながる場合もあります。

ただし、取得率向上だけを追い求めると弊害も起こりうる

ただし、現場の実態を度外視し、取得率向上という数字だけを追い求めていると、サービス残業やステルス残業が生じたり、モチベーションの低下を招きかねません。

「ジタハラ(時短ハラスメントの略)」という言葉に代表されるように、短絡的な時短や休暇の取得は、社員を板挟みにしてしまう恐れがあります。現場の実態を踏まえながら、有休取得を促す必要があるでしょう。

そのため、業務の棚卸しや適切な再分配、業務の効率化など、職場全体を改善していくことも重要です。

「休み方改革」の実現へ

今、「働き方改革」とともに「休み方改革」が注目を浴びています。

社員ひとりひとりが健康かつ健全に働き、パフォーマンスを最大限発揮する環境づくりは人口減少、そして人材不足の時代には必要不可欠と考えられます。その中で、「働き方」だけでなく「休み方」と向き合う必要性はますます高まっています。

休日・休暇が満足に取得できない会社からは自然と人が去り、一方仕事も休暇も充実した時間を過ごせる会社には自ずと人材が集まる傾向は今後ますます強くなるでしょう。

これからの人事戦略として「有休取得率の向上」は、ひとつの重要なバロメーターになりうるのかもしれません。

 

【参照】
*1:有休消化率2年連続最下位に!有給休暇国際比較調査2017 – エクスペディア
*2:第4次男女共同参画基本計画における成果目標の動向 – 内閣府男女共同参画局
*3:提言 「『休暇』から『休活』へ ~ 有給休暇の活用による内需拡大・雇用創出」 発表 – 観光地域経営フォーラム

社会保険労務士事務所いいだ  飯田 弘和

社会保険労務士事務所いいだ 飯田弘和   中小企業のための就業規則の作成や労務管理、従業員向けの各種セミナーを行っている社労士事務所です。 ハラスメント防止策や女性の活躍推進、仕事と介護の両立支援等についても、ご相談ください。 詳しくは、webから。
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