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「有給取得率」の高い企業・低い企業、どこが違うの? 社労士が特徴を解説

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こんにちは。特定社会保険労務士の篠原宏治です。

2017年6月に、政府が2018年度における企業の年次有給休暇取得について、前年度比で「3日増」を目指す方針を固めたことが報じられました。

政府は2010年に「2020年までに有給取得率70%」という目標を掲げています。しかし、その後も有給取得率はほぼ横ばいで50%を超えることはなく、2015年は有給取得率48.7%(付与日数18.1日に対して取得日数8.8日)と目標に遠く及ばないのが実情であり、ここから取得日数を3日増加させるというのはかなり困難な目標と言えます。

一方で、企業によってはほぼ100%の有給取得率を毎年達成しているケースもあり、有給取得の企業間格差が拡がっているとも言われています。

今回は、有給取得率の高い企業と低い企業の違い、そして改善のポイントについて解説します。

有給取得率の高い企業と低い企業のそれぞれの共通点とは

有給取得率を上げるための対策は企業によって様々ですが、有給取得率の高い企業には、おおむね次のような共通点があります。

有給取得率の高い企業の特徴

  1. 有給取得率や取得日数などの具体的な目標が設定されている
  2. 休暇中に他の社員で対応できるような業務フローのもと、社員間で業務内容の情報共有がされている
  3. 上司が率先して有給を取得している
  4. 病気休職や慶弔休暇の制度が充実している
  5. 半日単位や時間単位での付与制度が導入されている

有給取得率の低い企業の特徴

逆に言えば、有給取得率の低い企業には次のような共通点があることになります。

  1. 有給取得率や取得日数などの具体的な目標が設定されていない
  2. 社員が各自で業務を抱え込み属人化しており、休暇中の代替対応が困難
  3. 上司が有給取得しない、有給申請を行うと上司がいい顔をしない
  4. 法定の有給休暇以外の休暇・休職制度がない
  5. 1日単位での付与しか認めていない

企業側に有給取得を促進する意思があっても、「有給を取得しよう」という掛け声ばかりだと社員が「忙しくて無理」「業務に余裕が出来れば取得するのに」という考え方から脱却できません。

具体的な目標を設定することで、管理社員に有給取得に対する一定の義務感が生じ、有給申請の心理的負担軽減が期待されます。また、中長期的な業務スケジュールの中で、タスクの進行はもちろん、それとあわせて有給取得も踏まえた業務計画を意識することにもつながるでしょう。

職場の人間関係や業務ノウハウの共有が有給の取得しやすさを左右する

独立行政法人労働政策研究・研修機構が実施した「年次有給休暇の取得に関する調査」(2011)の調査結果によると、社員が有給取得を躊躇する理由に当てはまるとして、「休むと職場の他の人に迷惑をかけるから(60.2%)」「休みの間仕事を引き継いでくれる人がいないから(46.9%)」「上司がいい顔をしないから(33.3%)」などの職場の人間関係に起因するもののが高い数値となっているほか、最大の理由は「病気や急な用事のために残しておく必要があるから(64.6%)」となっています(*1)。

このような障壁を取り除くためにも「有給取得率の高い企業の特徴」で挙げた(2)~(4)のような対策が講じられていることも、有給取得率の高い企業の共通点と言えるでしょう。

また、半日単位や時間単位での付与制度は、社員の利便性が向上し柔軟に有給を取得することができるようになるため、有給取得率の高い企業の多くで導入されています。

「有給取得が当然」という社内風土づくりが重要

有給取得率の高い企業の共通点を一言で言えば、「有給を取得するのが当然」という社内風土づくりに企業が積極的に関与していることであり、それが改善のポイントとも言えるでしょう。

有給取得率の高い企業では、有給取得に対する責任感、罪悪感、同僚への遠慮といった、心理的障害を取り払うための対策を工夫して講じています。

有給取得率の改善は社員満足度の向上につながり、また、最近は給料よりもむしろ休日を重要視する人も増えているため、求人活動においても働きやすい職場として大きなアピールポイントになります。

有給取得率の改善に対しては、雇用保険助成金の給付が受けられる場合もあります。

これを機に、有給取得率の改善へ向け、積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

【参照】
*1:調査シリーズ No.85「年次有給休暇の取得に関する調査」 – 独立行政法人労働政策研究・研修機構

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