「出張の移動時間って労働時間?」適正な勤怠管理に役立つ豆知識

2019.11.15 ライター: 社会保険労務士 吉田 崇

こんにちは、社会保険労務士の吉田です。

コンプライアンスが重視される昨今の社会的背景を受け、今まで「なあなあ」で処理されてきたことも、きちんと整備することが企業において重要になっています。

その中でも労使双方からの問い合わせが多いのは、

「これって、労働時間に該当するの?」

という案件です。

では、特に相談の多い事例を中心に、どういった場合が労働時間に該当し、どういった場合が該当しないのか、ひとつひとつ見ていきましょう。

clocking system

「研修・教育訓練」の取り扱い

基本的に、労働者の自由意志で参加するものは労働時間に該当しません。例えば、終業後の自由参加の勉強会やレッスンなどです。

一方で、会社が強制的に参加させるものや、参加しないと通常業務に支障をきたしたり、不利益な取り扱いを受けるものは労働時間に該当します。

会社から勤務時間外に参加を強制される研修や、参加しないと減給対象となる訓練などは時間外労働として、所定の残業代等を支払う必要が生じます。

「労働時間の前後」の取り扱い

始業前および始業後の朝礼や終礼、準備体操や整理体操等については、参加が任意である場合は労働時間に該当せず、強制である場合は労働時間に該当します。

また、就業にあたって作業着の着用が義務付けられている場合、会社が指定した更衣室等で着替えることを強制している場合は、着替えの時間も労働時間に該当します。

一方、会社が着替えの場所を特に指定せず、例えば自宅からの着用を認めているような場合は、労働時間には該当しません。

「飲み会等の参加」への取り扱い

最近は、「飲み会」への参加を嫌がる人も多いようです。中には「残業代が出るのなら参加します」なんて言う人もいるとか。

ただ、意外かもしれませんが、労働時間に該当する「飲み会」はかなりのレアケースです。

参加が任意である懇親会などが、労働時間に該当しないのは当然ですが、仕事の延長の色合いが強い「接待」についても、「事業運営上緊急なものと認められ、かつ事業主の積極的特命がある」場合を除き、労働時間とは認められません。

一方、任意の懇親会であるにもかかわらず「別に強制はしないが、通常全員参加しているよ。」などといった風に上司から半強制的に参加を促された場合はどうでしょう。これをもってして即座に労働時間に該当するとは言い切れないものの、グレーゾーンではあるでしょう。また労働時間に該当しないと判断されたとしても、パワハラ等に該当する可能性が高く、注意が必要です。

「出張時の移動時間」の取り扱い

出張のための移動時間については、移動中に業務の支持を受けず、業務に従事することもなく、自由な利用が保障されている場合は労働時間に該当しません

一方、上司と同行し、移動中に仕事の打ち合わせを行ったり、上司の指示を受けながら書類の作成などを行う場合は労働時間に該当します。

また、移動時間において、現金や機密書類などを運搬し、それを監視することが出張の目的となっている場合などは、その移動自体が業務であると解され、移動時間も労働時間に該当します。

おわりに

ただし、実際に労働時間に該当するかどうかは、ケースバイケースで判断が難しい場合もあります。

労使双方が「労働時間」の概念を正しく理解しておくことが、思わぬトラブルの回避につながるでしょう。

社会保険労務士 吉田 崇

よしだ経営労務管理事務所代表。関西を中心に、社長と従業員が安心して働ける職場環境作りをモットーに多くの事業所と顧問契約し、 労務管理で成果を上げる。通常の社労士業務の他に、集客、ブランディングコンサルタントとしての実績も多数。一級カラーコーディネータの資格を有し、ポスターやロゴ等のデザイン業務やWeb制作も行う個性派社労士。よしだ経営労務管理事務所 公式サイト
他の執筆記事はこちら

人事労務の関連記事

人事労務の新着記事

働き方改革特集

SmartHR スタートガイド