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他人事ではない「未払い残業代請求」とは?

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こんにちは、特定社会保険労務士の小高 東です。

時代は変化しています。年功序列・終身雇用制度は崩壊し、従業員の会社への忠誠心は薄れ、退職者はもとより、在職中の社員やパート・アルバイトが会社に未払い残業代を請求する時代になっています。

請求額も、電通の“23億円”(*1)のように、「全社員対象」「2年間遡り」とされ、10億円以上の巨額請求も少なくありません。中小企業においては倒産したケースもあります。

未払い残業があるということは、労働基準法24条(賃金の全額払い等)や37条(割増賃金)違反ということになります。

インターネットやラジオCM等の影響で未払い残業請求は、今後ますます増えていくことが予想されます。従業員の“かけこみ寺”としては、主に労働基準監督署、総合労働相談コーナー、弁護士、ユニオンの4つが考えられます。

(1)労働基準監督署

従業員が労働基準監督署に申告することにより、労働基準監督官がある日突然、会社に立ち入り調査(臨検監督という)にやってきます。

違反が確認されれば、「是正勧告」により、最長2年間さかのぼっての未払い残業代を支払うように指示されます。

会社は、臨検監督を断ることはできませんし、是正勧告にも従う必要があります。放置した場合には書類送検の可能性もあります。

(2)総合労働相談コーナー

労働局や都道府県等には総合労働相談コーナーが設置されています。

未払い残業については、「労働基準法違反」ということになりますので、労働基準監督署に申告するよう指導されます。未払い残業に付随した、損害賠償請求など民事的な問題については、あっせんによる裁判外の紛争解決を行います。

(3)労働者側弁護士

未払い残業代請求が過払い金請求の次のターゲットとなる可能性がいよいよ大きくなっています。弁護士の増加によりインターネットやラジオCM等も増えています。

また、未払い残業代請求の時効を2年から5年に調整しようという動きもあります。

(4)ユニオン

職場に関係なく、個人単位で加入できる外部の労働組合を、「ユニオン」または「合同労組」といいます。

ユニオンは会社に対して、未払い残業代請求について、団体交渉を申し込んできます。団体交渉を拒むことは、不当労働行為となり、できません。

一人の未払い残業代請求が、他の多くの社員の請求につながるケースや、そこまでいかなくとも、モチベーションや会社の信頼低下につながる可能性は大きいといえます。

会社としては未然防止をすべく、労働時間管理、就業規則等の見直しが急務とされています。

【参照】
*1:電通、23億円を社員に支給へ 事実上の未払い残業代 – 日本経済新聞

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