ホワイト物流推進運動って何? 「物流業界の働き方」の現状と法的リスクを解説


こんにちは。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタントの篠原宏治です。

国土交通省が、現在「ホワイト物流」推進運動を進めています。国は、なぜ物流業界の働き方改革に積極的に取り組んでいるのでしょうか?

その背景に迫るべく、今回は、物流業界における働き方の課題や対策について解説します。

「ホワイト物流」推進運動とは?

国土交通省の掲げる、「ホワイト物流」推進運動には、2つの目的があります。

  1. トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化
  2. 女性や60代以上の運転者等も働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現

【参考】「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト

5月13日には、国土交通省が経済産業省、農林水産省とともに全国の6,000社を超える企業の代表者に対して「ホワイト物流」推進運動への参加を要請する文書を送付しました。賛同した企業については、今後ホームページ等で公表されます。

物流業界における働き方の現状

次に、物流業界の働き方の現状を見ていきます。

厚生労働省が策定している「過労死等の防止のための対策に関する大綱」では、過労死等が多く発生していて長時間労働者が多い事業・業種を重点業種として定めており、トラック運転手を含む「自動車運転従事者」もその一つに挙げられています。

自動車運転従事者は、過労死防止対策重点業種の中でも過重労働による問題が特に発生している職種です。

厚生労働省は毎年、過重労働を原因とする「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」を公表しており、平成29年度は236件(うち過労死が92件)の労災保険支給決定が行われましたが、その内訳を職種別にみると自動車運転従事者が89件(うち過労死が35件)で最も多く、全体の4割弱を占めています。なお、次に多いのが「法人・団体管理職員」の21件(同9件)であり、自動車運転従事者の労災支給決定件数が断トツであることがわかります。

労災 働き方改革 物流業界
出典「脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況」より抜粋

現在、物流業界では過酷な労働環境が慢性化し、就職希望者の減少や離職率の増加を招いています。その一方で、インターネット販売の増加等によって配送業務の需要は増加しており、深刻なトラック運転手不足の問題に直面しています。

物流業界における現状の働き方の「法的リスク」とは?

物流業界で慢性化しているトラック運転手の過重労働には、刑事上、民事上を問わず多くの法的リスクが伴います。

特に留意しなければならないのが、厚生労働省が発出している告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以下「改善基準告示」という)です。

改善基準告示は、トラック運転手の長時間労働規制における中心的役割を担っており、労働基準監督署は臨検監督(立ち入り調査)を実施し、改善基準告示の遵守について調査・指導を行っています。

また、「運輸局」では、改善基準告示を遵守していない企業に対して運送業の事業許可の停止や取り消しなどの重い処分を行うことがあります。最近では、4月8日に千葉県野田市に所在する運送業者が、トラック運転手の乗務時間超過などが改善基準告示に違反していると関東運輸局に認定されて事業許可の取り消し処分が下されたことが話題となりました。本事案は、SmartHR Mag.の記事でも取り上げられています。
違法長時間労働で運送会社が事業許可取消に――。「トラック運転者の長時間労働対策」を弁護士が解説!

なお、労働問題全般について業種を問わず臨検監督(立ち入り調査)を実施して監督指導を行っている労働基準監督署は、法違反が認められた場合であっても事業許可の停止や取り消しに言及することはありません。悪質・重大な法違反が認められる企業については刑事罰を適用すべく書類送検を行いますが、現実問題としては罰金刑に課されるよりも事業許可取り消し処分の方が重い処分と感じる会社が多いのではないでしょうか。

このように、物流業界においては、過重労働対策の不備が事業許可取り消しという、事業活動を継続できなくなる直接的な原因となる恐れがあることに留意が必要です。

おわりに

物流業界の過重労働は構造的な問題とも言え、多くの場合、是正のためには荷主企業の理解と協力が不可欠です。

荷主企業の理解・協力には配送運賃の値上げという方法も考えられますが、運送業者と荷主企業の双方がそれぞれの立場から喫緊の問題として取り組み、労働時間の削減に成功している事例も数多く見られます。

厚生労働省の委託事業として作成されてHP等で公開されている「荷主企業と運送事業者の協力によるトラックドライバーの長時間労働の改善に向けた取組事例」では、長時間労働の削減に成功した好事例が多数紹介されています。

物流業界全体の働き方改革を推進していくためには、荷主企業と運送業者が自主的・積極的に改善に取り組んでいくことが期待されます。

(了)

 

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特定社会保険労務士 篠原 宏治

社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント代表。元労働基準監督官。特定社会保険労務士。労働基準監督官として残業代不払いや長時間労働などの労働問題に関する数多くの相談対応、監督指導(臨検)、強制捜査などを行ってきた経験を活かし、「労働問題に強い社会保険労務士」として、労使双方からのご相談に対して実務的な助言やコンサルティングを行っています。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント
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