弁護士が解説! 法的観点でみた「同一労働・同一賃金の原則」の注意点

2019.02.19 ライター: 弁護士 浅野 英之

こんにちは、弁護士法人浅野総合法律事務所 代表弁護士の浅野英之です。

働き方改革関連法が成立し、あわせて短期間労働者の雇用管理の改善等に関する法律* が改正され、同一労働・同一賃金ガイドラインの内容も確定しました。
(* 改正により「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」と改称されます。)

これに伴い、企業においても、今まで以上に「同一労働・同一賃金」を意識し、対応することが求められます。

なお、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の施行日は、2020年4月1日です(中小企業については、2021年4月1日)。

そこで、今回は、「同一労働・同一賃金」の基本的な内容と企業が注意すべき点などを解説します。

「同一労働・同一賃金」とは?

「同一労働・同一賃金」とは、同一企業・団体におけるいわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者等)間の不合理な待遇差の解消を目指す考え方です。

不合理な格差があると認定された場合、就業規則や労働契約などに定めた労働条件が無効であると裁判で判断される可能性があります。

そのため企業は、以下のような判例を参考に、適切に対処する必要があります。

ハマキョウレックス事件(最判平成30年6月1日)

有期雇用契約社員が使用者に対し、「正社員にのみ諸手当が支給される等の労働条件の格差は、労働契約法20条に違反する不合理な格差である」として、正社員との諸手当の差額の支払等を求めた事案です。

最高裁は、皆勤手当について「皆勤手当は、皆勤を奨励する趣旨で支給されるものであり、正社員と契約社員の職務の内容は異ならないから、出勤する者を確保することの必要性については、両者の間に差異が生ずるものではないし、異動の有無およびその範囲や人材登用の違いによって必要性が異なるものでもない。」等と判示して、有期雇用契約社員のみに支払われないのは不合理であると判断しています。

一方、住宅手当については「住宅費用を補助する趣旨で支給されるものであり、正社員は転居を伴う配転が予定されているのに対し、契約社員は転勤が予定されていないことから、正社員は契約社員と比較して住宅費用が多額となる可能性が考えられるため、契約社員に住宅手当が支払われないのは不合理ではない。」とし、住宅手当の差異に関しては不合理ではないと判断しました。

長澤運輸事件(最判平成30年6月1日)

定年後に嘱託社員として再雇用されたドライバーにつき、「定年後の賃金減額等が、労働契約法20条の不合理な格差にあたる」として、損害賠償を求めた事案です。

最高裁は、「非正規社員と正社員との個々の賃金項目にかかる労働条件の相違が不合理かどうかを判断するには、両者の賃金の総額を比較するだけではなく、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべき」と判示し、日本の長期雇用制度は、定年までの長期間雇用を前提としていること、定年後の再雇用については長期間の雇用が予定されていないこと、再雇用後は、一定の要件を満たせば老齢厚生年金の受給が予定されている等の理由から、歩合給、賞与などの項目についての格差は、不合理とは言えないと判断しました。

もっとも、精勤手当と時間外手当についての格差は、不合理なものと判断されました。

「同一労働・同一賃金」で企業が注意すべきポイント

上記判例が示すように、正規雇用労働者との労働条件の相違が不合理か否かは、(1)賃金の費目ごとに (2)その費目の目的 に照らして判断する必要があります。

上記の判例を参考に規定された改正法の条文でも「事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において・・・当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」(改正パートタイム労働法第8条)と規定されており、賃金の費目ごとに個別に判断すべきであることが明らかにされています。

したがって、企業が就業規則の内容やその運用を見直す場合には、個々の労働者の待遇について、待遇の相違がその性質や目的に照らして合理性を有するかを適切に判断することが重要です。

その際には、判例および裁判例の知識や改正法の知識等が必要となりますので、弁護士など専門家の意見を聞きながら行うことが大切です。

弁護士 浅野 英之

弁護士法人浅野総合法律事務所、代表弁護士。企業側労働問題を得意とする石嵜・山中総合法律事務所にて、数多くの労働相談対応、顧問先企業の労務管理を行ってきた経験を活かし、「労働問題に強い弁護士」として、企業側だけでなく労働者側の相談にも対応。労働問題のスペシャリストとして活動中。特に成長中のベンチャー企業、中小企業の人事労務のコンサルティングに定評がある。 【企業向けメディア】ビズベン!企業の労働問題解決ナビ
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