新型コロナ蔓延に伴う「テレワーク移行」についての疑問を社労士がQ&A解説!


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響がますます深刻度を増しています。

東京都をはじめ、7都府県で緊急事態宣言も出され、安倍首相からも「人との接触を7割、8割減らしてほしい」というメッセージが国民に向けての発せられました。

「働く」場面においては、テレワークの重要性が一段と増しています。

物理的に不可能な場合を除き、いかなる職種、いかなる企業においても、社員の生命や健康を守るため、テレワークを導入することを積極的に検討していかなければなりません。

このような状況のなか、目下、手探りでテレワークの導入に奮闘していらっしゃる労務担当者も少なくないと思います。

そこで、本稿では、テレワークへの移行を検討している企業の労務担当様向けに、よくある質問を10個のQ&A形式にまとめて、ご紹介いたします。

人事労務関連業務のテレワーク移行については、以下の記事をご参照ください。

人事労務業務のテレワーク移行におけるよくある課題と対策とは? 社労士が解説

【Q1】テレワーク実施に就業規則の改定は必要?

Q1:テレワークを実施するためには、就業規則の改定は必要ですか?

A1:確かに、テレワーク時の働き方のルールを明確にするため、就業規則を改定して、テレワークに関する条項を追加したり、あるいは別冊としてテレワーク規程を作成することが望ましいです。

しかし、今は緊急時なので、従業員の生命や健康を守ることが最優先事項です。形式にとらわれず、最低限のルールを決め、可能な限り一刻も早くテレワークを開始してください。

就業規則の改定等は、後追いで進めれば充分です。

【Q2】テレワークの労働時間管理は必要?

Q2:テレワークの場合も、労働時間の管理は必要ですか?

A2:テレワーク実施時も、労働時間の管理は必要です。働く場所が自宅に変わるだけであり、雇用契約の内容や労務管理のルールは、基本的にはオフィスで勤務する場合と同じです。

既にクラウド勤怠管理ソフトを導入している企業の場合は、スマートフォンやデスクトップのアプリで出勤や退勤の打刻を実行できます。GPS機能をオンにして打刻をしてもらうことで、自宅で確かに打刻をしているかの確認もできます。

紙のタイムカードやオフラインの打刻機に社員証をかざすなどして打刻をしていた会社の場合は、暫定的にはエクセルシートなどで自己申告をしてもらうことにならざるを得ません。

しかし、この機会にクラウド勤怠管理ソフトへの移行を検討しても良いでしょう。クラウド勤怠管理ソフトの契約や初期設定は、多くのソフトにおいて、オンラインで完結可能です。

【Q3】テレワークの残業代は?

Q3:テレワークの場合も、残業代の支払いは必要ですか?

A3:先ほどのA2で説明しましたよう、テレワークだからといって雇用契約の内容や労務管理のルールが変わるわけではありません。ですから、管理監督者や裁量労働制などに該当しない限り、実働時間に応じた時間外手当等の支払いが必要です。

ただし、ひとつだけ例外があります。常にパソコンの前に座っていなければならないということではなく、自分のペースで仕事を進めて、随時、休憩や家事等を行うことが許されているという場合は、出張時と同様、「事業場外のみなし労働時間制」を適用し、一定時間働いたとみなすことも可能です。

【Q4】テレワークが難しい従業員がいる場合は?

Q4:テレワークが難しい従業員がいる場合はどうしたら良いですか?

A4:飲食業や小売業など「現場」がある業種では、勤務形態によってはテレワークが物理的に不可能です。事務系やIT系の業種であっても「受付担当者」「ショールーム担当者」など、テレワークが難しい職種があります。

工夫をしてもテレワークが不可能という結論になった場合は、「休業」という選択肢を取らざるを得ません。

政府の要請により事業所が閉鎖されたというようなケースを除き、従業員がコロナウイルスの影響で休業する場合、原則として平均賃金の60%以上の休業手当の支払が必要になりますが、この休業手当の一部を国が支援する制度として「雇用調整助成金」が用意されています。

テレワークが難しい従業員を休業させる場合は、雇用調整助成金を活用しましょう。

なお、雇用調整助成金の特例措置については下記記事をご参考ください。

▶ 新型コロナウイルス感染症 特例雇用調整助成金についてのよくある疑問を社労士が解説

【Q5】家庭・自宅の事情でテレワークが難しい場合は?

Q5:小さな子供が家にいるなど、家庭の事情で自宅でのテレワークが難しいという従業員への対応はどうしますか?

A5:確かに、テレワークに移行しても、保育所や小学校が閉鎖になり、仕事と育児の両立に苦しんでいるパパママは少なくありません。

そのような場合、フレックスタイム制の導入を積極的に検討すると良いでしょう。

フレックスタイム制は、1ヶ月の総労働時間の枠の中で、本人が日々の始業時刻や終業時刻を自由に決めることができる制度です。

配偶者が休日で1日子どもの世話をしてもらえる日に集中的に勤務するとか、早朝や夜間などの子供が落ち着いている時間を仕事時間に充てるなど、柔軟な勤務体系を認めて、本人が仕事と育児を両立できるよう、会社も最大限、配慮をすべきです。

実際の例として、株式会社SmartHRでは、「スライドワーク」として、7:00より前、22:00より後の時間帯の勤務を特別に認める制度をトライアル中のようです。(本稿執筆時点)

▶ スライドワーク制度(トライアル) for 緊急事態宣言

【Q6】テレワークでは私物の端末を使用させて大丈夫?

Q6:テレワークでは、各社員の私物のパソコンやネット回線を使わせて良いのですか?

A6:テレワークにあたって、本人の同意を得ることが前提になりますが、各社員の私物やパソコンのネット回線を使うこと自体は問題ありません。ただし、マイカーで営業や出張をしてもらうときにマイカー手当を支払うのと同じ考え方で、従業員の理解を得るためには、一定額の手当を支払うことが望ましいでしょう。

また、従業員の私物のスマートフォンに業務用のアプリを入れたり、業務用の連絡に使ったりすることも直ちに違法ではありませんが、業務時間外には連絡を控えるようにするなど、本人の私生活に影響を与えないような配慮は必要です。

【Q7】テレワーク時の情報セキュリティ対策は?

Q7:テレワーク時の情報セキュリティ対策はどのようにすれば良いですか?

A7:テレワーク実施時にも、当然、情報セキュリティに留意する必要があります。できる限り、会社で業務用に利用しているノートパソコンを持ち帰り、会社と同等の環境で業務を行うなどが望ましいでしょう。

私物のパソコンを利用する場合は、パスワードを設定することや、会社が指定するセキュリティソフトのインストールを必須とするなど、従業員に協力を求めることが必要です。

できる限りパソコンのローカル側にはデータを置かず、クラウドサーバにアクセスしたり、VPN接続で社内のサーバにアクセスしたりして仕事ができるよう、ネットワーク環境整備も重要です。

【Q8】テレワーク時は人事評価をしにくくならない?

Q8:テレワーク時は、働きぶりがわからず人事評価をしにくくなりませんか?

A8:「テレワークだと従業員の働きぶりがよく見えないので、人事評価をするのが難しいのではないか?」という相談を受けることがしばしばあります。しかしながら、それは、過去のイメージかもしれません。

現在は、ブロードバンド環境が整備され、Zoomなどのツールを使えば実際に会議室に集まるのに近い感覚でWEB会議を実施できます。また、チャットワークやSlackなどのビジネスチャットでは、会話に準じたコミュニケーションをとれます。

このようなクラウドツールを活用することで、「テレワークだからメンバーの働きぶりがよく見えない」、という悩みの大部分が解決するはずです。

逆に、「どれだけの量をアウトプットしたのか」、「仕事をメンバーに依頼してからどれくらの時間で完成したか」などが可視化され、むしろ、テレワークにより人事評価がしやすくなった、という例を聞いたこともあるくらいです。

【Q9】勝手に出社する社員はどうすれば良い?

Q9:テレワークをせず、勝手に出社する社員への対応はどのようにすれば良いですか?

A9:テレワークを指示しても、「出社したほうが効率が上がる」「自転車で行くので安全だ」「私の仕事はオフィスでないとできない」など、様々な理由をつけて出社を希望する従業員がいるようです。

出社にこだわる方は、真面目で仕事熱心な方も多いので、「出社をすることが仕事熱心なのではなく、テレワークという与えられた前提条件の中で最大のパフォーマンスを出すことが、いま会社が求めていることであり、それが評価につながる」ことを伝え、マインドチェンジを促すことが必要です。

それでも聞き入れられない場合は、テレワークは業務命令であることを明確に指示し、本人自身や家族、会社の同僚の生命・健康を守るための措置であることを説明してください。

どうしてもテレワークの業務命令に従わない場合は、業務命令違反として、就業規則に基づく懲戒処分も可能です。

【Q10】テレワーク導入で利用できる助成金・補助金は?

Q10:テレワーク導入で利用できる助成金・補助金はありますか?

A10:大きく整理すると3系統の助成金・補助金があります。

【A10-1】働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)

第1は、厚生労働省の働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)です。

新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規で導入する中小企業事業主に対し、「テレワーク用通信機器の導入・運用」「就業規則・労使協定等の作成・変更」「労務管理担当者に対する研修」「労働者に対する研修、周知・啓発」「外部専門家(社会保険労務士など)によるコンサルティング」等に要した費用の2分の1(上限100万円)を助成するものです。

こちらの助成金は、パソコンやタブレットなどは助成対象に含まれません。また、どちらかといえば就業規則の作成や専門家による研修など、制度構築に対する助成が中心なので、緊急時の対応としては、あまり使い勝手は良くないかもしれません。

【A10-2】事業継続緊急対策(テレワーク)助成金

第2は、地方公共団体が独自に実施しているテレワーク導入支援助成金です。東京都の実施している事業継続緊急対策(テレワーク)助成金が最も代表的でしょう。

こちらの助成金では、パソコンやタブレットなども含め、テレワークで利用する機器やソフトウェアなどが幅広く助成対象となり、100%(全額)の助成(上限250万円)が受けられます。

また、既にテレワークを導入済の事業主であっても、テレワークの拡大のために利用可であるなど、非常に好条件の助成金であるため、現在、申請が殺到しているということです。予算に限りがあるようですので、都内でテレワーク導入を検討している企業様は、是非お急ぎください。

【A10-3】IT導入補助金

第3は、経済産業省が実施している「IT導入補助金」です。

IT導入補助金は、コロナウイルス対応のテレワーク実施に限らず、中小企業のITツール導入を幅広く支援するものです。募集は期間を区切って行われ、対象期間によって条件は異なります。

厚生労働省系の助成金のように、支給要件を満たせば原則として支給されるのではなく、審査によって支給可否が決まるという点に難しさがあります。

直近で、2020年3月13日(金)~2020年3月31日(火)まで募集していた回では、コロナ対応でテレワークに取り組む事業主に優先的に支給するという審査基準を取っていました。

次回は6月頃に募集が予定されているので、上記、経済産業省のサイトで最新情報を確認するようにしてください。

おわりに

コロナウイルスの感染を回避し、生命や健康を守ることが最優先です。しかし、経済活動を完全に止めることもできません。

そのジレンマの解決に、テレワークは重要な役割を果たすのではないでしょうか。

テレワークをできる可能性のある人が、1人でも多く実際にテレワークを行うことで、それだけ人と人との接触頻度が減ります。

「私1人くらいがテレワークをしても世の中は変わらない」、ということではなく、1人1人の地道なテレワークの積み上げが、大きな力となり、日本人の生命・健康と経済を守ることにつながっていくのではないでしょうか。

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
他の執筆記事はこちら

人事労務の関連記事

人事労務の新着記事

働き方改革特集

SmartHR スタートガイド