この記事は公開から1年以上が経過しています。法律や手続き方法、名称などは変更されている可能性があります。

401社になった「ブラック企業リスト」はブラック企業自然淘汰に一役買うか?


こんにちは。特定社会保険労務士の篠原宏治です。

厚生労働省は2017年8月15日、ホームページに掲載している「労働基準関係法令違反に係る公表事案」のリストを更新しました(*1)。

労働基準関係法令違反で送検された企業が実名で掲載され、「ブラック企業リスト」と呼ばれて注目を集めているこのリスト。

2017年5月10日の公表開始以降、毎月更新されており、公表開始時は2016年10月から2017年4月までに送検された企業332社が掲載されましたが、今回の更新で掲載企業は401社まで増えています。

元労働基準監督官としての経験や知見も踏まえ、「働基準関係法令違反に係る公表事案」の役割、そしてこのリストがブラック企業の自然淘汰に一役買うのか、などの点について考察したいと思います。

「労働基準関係法令違反に係る公表事案」とは?

同リストの公表は、厚生労働省が2016年12月26日に開催した、第4回 長時間労働削減推進本部で取りまとめた「『過労死等ゼロ』緊急対策(案)」(*2)において、社会全体で過労死等ゼロを目指す取組の強化のひとつとして開始されました。

同リストには、下記項目が都道府県別に掲載されており、掲載期間は公表日から原則1年間となっています。

  • 企業・事業場名称
  • 所在地
  • 公表日
  • 違反法条
  • 事案概要
  • その他参考事項(送検日など)

なお、労働基準監督署では、これまでも企業を送検する際にはその都度マスコミに対して企業名や事案概要のプレスリリースを行っており、送検企業の実名公表自体が初めての取り組みというわけではありません。

掲載企業の約7割は長時間労働ではなく「安全対策の不備」による送検

同リストの掲載は、前述のとおり、長時間労働削減対策の一環として開始されました。

長時間労働に関係する法律違反には、労働基準法第32条・第40条違反(法定を超える残業)や同第37条違反(残業代未払い)などがあります。

ただ、同リストの法令別の掲載企業数は、労働基準法違反72件、最低賃金法違反52件、労働安全衛生法違反277件となっており、必要な安全対策を講じずに死亡事故などの、重大災害を発生させた場合などに行われる「労働安全衛生法違反」による送検が全体の約7割を占めています。

「ブラック企業」に明確な定義はありませんが、一般的には労働時間や残業代の支払いなどの「労務管理上の問題」がある企業を指して用いられることが多いのではないでしょうか。

長時間労働削減対策の一環として、リストが公開されることになった経緯や目的を鑑みても、同リストを「ブラック企業リスト」と呼ぶことは、その対象となるべき企業を必ずしも正確に捉えたものとは言えないことにも留意しましょう。

「ブラック企業の自然淘汰」は加速するか?

ブラック企業が生まれる要因は様々ですが、社会全体で「長時間労働やサービス残業は当然」という風潮が広まったことが、ブラック企業が増加し社会問題化となった大きな要因の一つと言えるでしょう。

現在、政府は「働き方改革」を推し進めており、多くの企業が「長時間労働の是正」や「業務効率性の向上」に向けた取り組みを開始しています。

「働き方改革」は労使双方の意識や意欲によるところが大きく、すべてのブラック企業が直ちに改革に取り組むような、短期で効果を望めるムーブメントにはならないと考えられ、中長期的な視点で捉える必要があるでしょう。

しかし、労働者の働き方への意識が高まっていること、ネットなどを通じてブラック企業の情報や評判などを入手しやすくなっていること、人口減少により労働条件の向上に取り組まない企業は、人材確保が困難となると考えられることなどから、ブラック企業の自然淘汰は、これまでよりも加速するのではないでしょうか。

【参照】
*1:労働基準関係法令違反に係る公表事案 – 厚生労働省
*2:「過労死等ゼロ」緊急対策(案) – 厚生労働省

特定社会保険労務士 篠原 宏治

社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント代表。元労働基準監督官。特定社会保険労務士。労働基準監督官として残業代不払いや長時間労働などの労働問題に関する数多くの相談対応、監督指導(臨検)、強制捜査などを行ってきた経験を活かし、「労働問題に強い社会保険労務士」として、労使双方からのご相談に対して実務的な助言やコンサルティングを行っています。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント
他の執筆記事はこちら

人事労務の関連記事

人事労務の新着記事

働き方改革特集

SmartHR スタートガイド