こんにちは、特定社会保険労務士の榊 裕葵です。
9月に入り、暑さも和らぎ秋の訪れを感じます。秋といえば、人事労務ご担当者ならおなじみの「年末調整」シーズンに入っていきます。
そろそろ、今年の年末調整をどのように進めるか考えはじめている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
年末調整の準備を始めるにあたっての第一歩は「そもそも誰が年末調整の対象になるのか」ということだと思いますが、中でも今回は、正社員に比べ分かりにくい、アルバイト社員やパート社員(以下「アルバイト」とする)の年末調整対象者の範囲や、それに関連する注意点について説明をしたいと思います。
アルバイト・パートで「年末調整が必要」なケース
結論から言えば、年末調整の対象となるアルバイトは「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(以下「扶養控除等申告書」という)」を会社に提出している人です。
言いかえれば、毎月の給与計算で源泉所得税の徴収を月額表の「甲欄」で行っている人ということになります。
勤務時間が週1日だけとか、どんなに短時間であっても、扶養控除等申告書が出されてて、源泉所得税の徴収を「甲欄」で行っているならば、会社は年末調整を行わなければなりません。
アルバイト・パートで「年末調整が不要」なケース
逆に、扶養控除等申告書が出されていないアルバイトについては、年末調整は不要です。
アルバイトの場合、複数の仕事を掛け持ちしている可能性がありますが、そのような場合、扶養控除等申告書は本人が主たる勤務先と考えている会社1社だけに提出するのが税法上のルールです。
扶養控除申告書を提出されていない場合は、毎月の給与計算において源泉所得税の徴収は月額表の「乙欄」で行っていると思います。
このように「乙欄」で源泉所得税の徴収を行っているアルバイトについては、本人は他社で年末調整を行っているはずですので、年末調整を行うことは不要です。
扶養控除等申告書が提出されていない場合の、その他の注意点
なお、おそらく自社でしか勤務を行っていないはずなのに、扶養控除等申告書が提出されていないアルバイトがいた場合は、扶養控除等申告書の提出漏れではないか、人事労務担当者等から本人に確認をしてあげると親切です。
それでも本人が扶養控除申告書等を提出しなかった場合は、会社は無理矢理に年末調整を行う義務まではありません。
逆に、明らかに他に主たる勤務先があるはずなのに、自社に扶養控除等申告書が提出されているような場合にも、本人が制度をよく理解せずに複数の会社に扶養控除等申告書を提出している可能性がありますので、年末調整を二重に行ってしまうことにならないよう、本人に確認してください。
年末調整実施にあたっての注意事項
アルバイトの年末調整を行う場合には、当年度中に退職した他の勤務先の「中途退職者の源泉徴収票」を漏れなく回収するよう気を付けてください。
年末調整は、自社の給与だけでなく、年内に退職した他社からのその年の給与も合算して計算します。アルバイトの場合は、年内に何社も勤務先を変わっている場合もありますので、正社員以上に前職の源泉徴収票の回収漏れが無いように気を付けて下さい。
なお、年末調整の対象となるアルバイトが現在進行形でダブルワークをしている場合は、ダブルワーク先の給与所得との合算は確定申告で行われますので、年末調整においては現在進行形のダブルワーク先の給与所得は無視して頂いて大丈夫です。
そして、もう1点気を付けて頂きたいのは、年末調整の対象とならなかったアルバイトにも、「源泉徴収票の発行」と「市区町村への給与支払報告書の提出」は必要になりますので、忘れないように気を付けてください。
まとめ
アルバイトの年末調整は、誰が年末調整の対象者なのかを確定し、過不足なく対象者を絞り込むことが、実務上の大きなポイントになります。
アルバイトの扶養控除等申告書の提出状況を確認し、早目に対象者を確定させておくことが、スムーズな年末調整の実施につながるでしょう。
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