世間を賑わす「有休クイズ問題」。有給休暇運用の注意点は?


こんにちは、社会保険労務士の吉田 崇です。

ジャパンビバレッジ東京の支店長が2016年に従業員に送ったとされる、クイズに全問正解しないと有給が取得できないといった内容のメールがTwitterで公開され、世間を賑わせています。

具体的にどのようなポイントが争点となったか、また有給休暇運用の注意点について解説します。

実質的には、有給休暇を取らせない圧力があった?

同社のリリースによると、以下のように記載されています。

当該社員へのヒアリングを含めた調査を実施し、問題のメールについて事実確認を行いました。その結果、当人が 2016 年頃メールを送付した事実および内容について概ね認めたため、厳重注意を行うとともに、今後、会社規程にのっとり適切に処分いたします。
なお、有給休暇の取得について、繁忙期には取得時期の調整を行うことがありますが、報道にあるような、クイズに正解しなければ有給休暇の取得ができないといった制度はございません。(引用:株式会社ジャパンビバレッジホールディングス「当社社員による不適切なメールに関する報道について」)

簡単にいうと、メールの送信自体は事実だが「クイズに正解しないと有給休暇を取れない」という実態はなかったとのことです。

しかしながら、同社従業員によると、上司によるパワハラや、有給休暇を取れないなどの状況が常態化していたとの発言もあるようです。

「度の過ぎた悪ふざけ」だとしても、上司から部下にこのような内容のメールが実際に送られているという事実から、有給休暇を取らせない圧力が会社内あったと思われても仕方がないでしょう。

本来、労働者には有給休暇を自由に取得する権利がある

しかし本来、有給休暇は労働者の権利であり、その目的を問わず、労働日の好きな時に取得することが可能です。

有給休暇「時季変更権」の行使ハードルは高い

例外的に「時季変更権」として、企業側が従業員からの有給休暇取得の申し出を拒否できる制度はありますが、これは会社が従業員が希望する日に有給休暇を取得できるように最大限の努力をしたにも関わらず、「労働者の有給休暇希望日において、その日の労働内容が、会社の運営に必要不可欠であり、かつ代わりとなる人員を確保することが困難な場合」のみに有効です。

つまり、時季変更権の行使のハードルはとても高く、よほどのことがないと認められません

2019年4月から「有給休暇の年5日取得」が義務化

さらには2018年7月、働き方改革関連法が成立しました。

これにより、有給休暇の取得については、年10日以上有給休暇の権利がある従業員について、最低でも5日以上取得させなければならないと義務付けられました。この義務の施行は、企業規模による猶予期間の差はなく、2019年4月からすべての企業に適用されます。

違反した場合は、30万円以下の罰金が課されます。

有給休暇の取得申請を事前に義務付けることは可能

労働基準法では、労働者からの有給の申し出を拒否したり、有給を取得した従業員に対して、不利益な取り扱いをすることは禁止されています。

ただし、有給の取得申請を事前に義務付けることは可能です。

就業規則などに定め、「それが合理的であり、制限が著しく労働者にとって不利」なものでない場合、具体的には代替要員の確保に会社が通常要する日数分を、有給休暇の申請期限とすることは可能です。

おわりに

働き方に関する意識・行動の変革が求められる時代に移っています。

そんな中、この度の「有休クイズ」は、従業員はもちろん企業にもメリットがないどころか、デメリットばかりです。

会社として、従業員に「有給休暇は法律で認められた当然の権利であること」を周知し、取得しやすい雰囲気と体制をつくることが求められるでしょう。

これからの管理職には、労働法の知識を身につけていく必要があるのではないでしょうか。

社会保険労務士 吉田 崇

よしだ経営労務管理事務所代表。関西を中心に、社長と従業員が安心して働ける職場環境作りをモットーに多くの事業所と顧問契約し、 労務管理で成果を上げる。通常の社労士業務の他に、集客、ブランディングコンサルタントとしての実績も多数。一級カラーコーディネータの資格を有し、ポスターやロゴ等のデザイン業務やWeb制作も行う個性派社労士。よしだ経営労務管理事務所 公式サイト
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