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読む、 #ウェンホリ No.26「チームプレーに疲れないために」

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目次

ラジオ書き起こし職人・みやーんZZさんによるPodcast「WEDNESDAY HOLIDAY(ウェンズデイ・ホリデイ)」書き起こしシリーズ。通称「読む、#ウェンホリ」。

今回のゲストは、看護師で文筆家としても活動している木村映里さん。現役の看護師として働きながら、その視点から見えるものを丁寧に綴った著書『医療の外れで』『看護師に「生活」は許されますか』はいずれも好評を博しています。そんな木村さんと今回は、「負の感情は表に出していけないのか? チームプレーに疲れないために」をテーマに対話します。(書き起こし内容はトークの一部を抜粋しています。)

ゲスト木村映里(きむら・えり)

1992年生まれ。日本赤十字看護大学卒。2015年より看護師として急性期病棟に勤務。手術や抗癌剤治療など、病気や怪我の集中的な治療を必要とする患者のケアに携わる。2018年に医学書院「看護教育」にて、「学生なら誰でも知っている看護コトバのダイバーシティ」というタイトルで1年間連載を行う。2020年に晶文社より『医療の外れで──看護師のわたしが考えたマイノリティと差別のこと』を刊行。『看護師に「生活」は許されますか』は2冊目の著書となる。

仕事における気持ちの起伏、感情の揺れとどう向き合う?

堀井

なにか、(仕事で)悲しいことがあったりとか、つらい時に木村さんなりに立ち直るっていうのは、時間が解決するような感じですか? 他には……。

木村

そうですね。起こった出来事と、そのときに自分がどう思ったか。そして振り返ってどう思うかというのを時系列順に思い出して考えていって。

で、起こったこと、そのときの出来事、自分が悲しかったその瞬間を細かく刻んでいくような感じに解像度を上げていくと、どこかで「悲しい、悲しい」という状態から「じゃあ、次はこうしよう」って思える瞬間があって。

だいたいそうなると、「次はもっとうまくやろう」って思えると、なんとなく悲しいのも解決するような感じですね。

堀井

ちゃんと言葉で置いていく。整理していく。

紙に書き出し、起きたできごとを刻んでいく

木村

そうですね。白い紙を3つに分けて書き出したりもします。もう、誰が見るものでもないんですけれども。

今、お話したように一番左側には起きた出来事。真ん中にはそのとき、自分がどう思ったか。で、一番右に今、どう思うかとか、次どうするか。次、同じようなことがあったらどうしたいかとかを書いてみたりもすると、なんとなく「ああ、刻みきったな」っていうときに立ち直る感じはありますね。

堀井

でも、とてもいいやり方ですね。自分の消化の仕方としてはね。で、たぶんその悲しみとか、気持ちの起伏、感情の揺れとかは普通の会社に勤めてる人よりも、木村さんはとても多いと思うので。その都度その都度、されてるっていうことですよね。

木村

そうですね。その都度、やるようにはしていますね。もちろん、もう疲れちゃって。「何も考えたくない」って、寝ちゃったりもするんですけれども。

でも、同じことをなるべく繰り返さないように。次はちょっとでもいいケアができるようにした方が、もちろん患者さんのためにもそうだし。自分のためにもいいかなとは思っています。

堀井

他の看護師さんたちはどういう風に乗り切ってるとか、聞いたことありますか?

木村

他の看護師は……まあ、とにかく寝る子もいるし。あとは、私もそうなんですけれども。結構、職場で話しますね。「何が悲しかったか」とか「何がつらかったか」とか。

まあ、できるだけ愚痴にならないような形に……でも、愚痴は愚痴かな? うん。愚痴のときもあるし。「もうちょっと生産的に話そうか」っていうテンションのときもあるし。でも、感情を1人で抱え込まないようにはみんな、しているかなっていう感触はあります。

堀井

愚痴をぶつけ合う時って、すごく安心しますよね(笑)。一番いい時間ですよね(笑)。

木村

本当に、本当に(笑)。

怒りの感情への対処法

堀井

そうですよね(笑)。じゃあ皆さん、仲間で共有したりして。なるほど。お仕事で怒りの感情が出たりしたときは、どういう風に対処するんですか? 怒りって、どういうところで出るんだろう?

木村

なんか怒りを抱く場面が、前は私、みんな同じだと思っていたんですけど、結構人によって違うらしいっていうのを看護師をやっていて思って。

たとえば私は患者さんに怒鳴られるのは全然平気なんですよ。「てめえ、バカ野郎! この野郎!」みたいなのは割と平気で。それはあんまりストレスにならないんですね。

でも一方で、チクチク言葉……たとえば私が採血を失敗してしまったときに患者さんに「あなたが痛い思いするわけじゃないから、いいよね」って言われてしまったりとか。あとは、「自分の娘が看護師みたいな、こんな汚い仕事をしていたら倒れちゃう」みたいなことを言われてしまったりとか。

そういう明らかな問題になる言葉ではないけれども、でも敵意はあるっていう感じのことを言われると、結構心がもたないっていうか、イラッと、モワッとしてしまう(笑)。

怒りを感じるポイントは人によって違う。チーム内で臨機応変に対応を重ねていく

堀井

イラッと……すごくおっとりして静かにお話しされていますけども。イラッとしたときは、どうされるんですか?

木村

そのときは、とりあえず距離を置く。深呼吸して、距離を置く。で、結構職員によって、その「どういうタイミングで怒りを抱くのか」っていうのが違うので。人に代わってもらったり。対応する人を。

もちろん最低限、お熱を測ったりとかは受け持ちの自分がやるけど。採血とか、点滴の針を入れるとか、別に自分じゃなくてもいいことだと、そういうチクチク言葉が大丈夫な同僚に「申し訳ないけど、ちょっと私、つらいかな」って言って代わっていただいたり。

逆に、たとえば怒鳴られるのが本当にダメで。怖くて固まっちゃうっていう同僚とか、部下とかであれば、「じゃあそういう人は私がちょっと行ってくるよ」とか。「あれだったら、一緒に行こうか」とか。

そういった形で職員同士、看護師同士で支え合って。怒りに対する距離を置くっていうか、耐性を高めつつ……でも、人の対応を見ていると勉強にもなるので。そこで「ああ、そうか。こういう風にやれば、うまくいくんだな」とか、そういうのを学んでいくような感じですかね。

若手の悩みにどう寄り添う?

堀井

本当にチームワークが大事ですね。その、共有にしても、連絡にしても。あとはバトンタッチするとか。臨機応変にそのチームのなかでやっていくっていうのが。

で、先ほど若手の方もいろいろと悩んでらっしゃるっていうお話もありましたけど。若手の方が悩んでたりとか、木村さんに相談したりっていうことは、きっと多いですよね?

木村

ですかね。今の職場だと、私はまだ入って1年なので。それでも看護師歴でいうと、まあ中堅くらいというところで。1年目、2年目くらいの子が相談してきてくれたりとかは、ちょこちょこありますね。

なんだろう? 本当に長い上司さんにはちょっと言えないような感じの、ささやかな相談っていうか。「このとき、患者さんにこう言われて、うまく返せなかった」くらいの相談の方が多いんですけれど。それは今もあるし。

前の病院はそれなりの年数いたので。その下の子を教えたり、相談を受けたりする機会は多かったかなと思います。私も自分が新人だった頃とか、若手……今も8年って若手と中堅のちょっと間ぐらいだと自分では思っているんですけど。

辛いとき、上司は何も言わず、聞いてくれた

木村

でも本当に若手だった頃に、そうやって上司の方に話を聞いていただいて。

たとえばその患者さんが急変した……元々、元気だった患者さんが次にカーテンを開けたら心臓が止まってましたっていうことがあったときに、もう本当に最初は怖くて。固まっちゃって。「もう私、看護師をやっていけないかも」っていう気持ちになってしまう。

怖くて。「自分のせいで亡くなってしまったんじゃないか?」とか、自分のことを責めてしまったりもして。

そういうときに、上司に相談して。相談っていうか、もう何が言いたいかも自分でもわかんなくなってるんですよね。「怖い」と「つらかった」と「家族から責められるんじゃないかと思った」とか。

それこそ「上司とか師長から責められるんじゃないかと思った」「私のせいになるんじゃないかと思った」とかがもう、ぐちゃぐちゃになってしまったのを、もうそのまんま上司さんに聞いていただいて。

そのときに上司が何も言わずに全部聞いてくれて。最初は「こうしたらよかったんじゃないの」とかのアドバイスもなく、まずは「そうだね、そうだね。つらかったよね」って聞いてもらえただけで、かなりスッキリしたし。

なんだろう? そのときに具体的なアドバイスは別になかったんですけれども。ただ、その経験が自分のなかですごく大きかったなと思っているので。なので同じように後輩たちに接していきたいなと思ってます。

若手・ベテラン関係なく意見が言えるチームは患者さんにも良い影響があった

堀井

もう8年目とは思えない(笑)。若いのに。8年の間で、いろんなチームで動いてきたかと思うんですけど。「ああ、このチームはよかったな」とか「このチームはちょっとなかなかストレスがかかったな」みたいな。そのチームごとのなにかは、ありますか?

木村

若手でもベテランさんでもあんまり関係なく意見が言えるチームは、やっぱりやりやすいなと思いますね。3年目の子が「この患者さんの処置の方法をこういう風にしてみたいんだけど」とかが風通し良く提案ができる。そういったチームは仲もいいし、みんな言いたいこと言えるし。

で、結果として患者さんに対する影響も良い方向、ポジティブな方向に向かっていたなと……前の職場がそうだったんですけれども。そんな風に思っていて。

今の職場も比較的そうなので、今もすごく私自身も自由に動かせていただいていて。すごくいい環境で働いているなと思うし。

一方で、一番最初に働いた職場だとかなりトップダウンがすごくて。チームのなかでベテランさんがリーダーで、その下が誰で、とか。もうナンバーが振ってあるくらいの。

で、新人とか2年目とかは意見も言えない。上司に「飲み会あるよ」って言われたら、断ってもいけないみたいな。そういうところはしんどかったですね。意見も言えないし、疑問も言えないし。

疑問をもって「なんでだか、わからないな」って思っても、それを言うと「何で調べておかないの?」って言われちゃうとか。そういったことが多かったので、チームによって違いはかなりありますね。

堀井

たぶんもう今の教育の方針……皆さん、いろんな会社でも研究したり。どうすればみんながより良く働けるかっていうのをいろいろ研究して、それで新人さんを育てているので。

たぶんそういう精神論は段々消えてきて、本当に意見が言いやすいような風通しの良い環境にもだんだんなってきているかと思うんですけどね。でもやっぱり職人さんの世界だと……看護師さんもそうだと思いますけど。

木村

ああ、なるほど。職人さん方面になるんですね? 精神論だと。たしかに、そうかもしれない。

堀井

そうですよね。なんか「黙って見ておけばわかる」みたいなの、ありますよね。きっと看護師さんもそういうスキルを伝えていくっていう面では、あるのかもしれないですよね。

木村

そうですね。「体で覚えろ」みたいなところかもしれない。うん。

<書き起こし終わり>

文:みやーんZZ

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