ビジネス環境の変化と人材マネジメントの必要性

2021.07.20 ライター: 髙橋 豊

現在は、新型コロナウィルス感染症の感染拡大によってwithコロナ時代となっています。全世界的に減少と拡大を繰り返しており、afterコロナ時代はまだ先になりそうです。

2020年を境に、2019年までのbeforeコロナ時代と比較すると、コミュニケーションなど企業のヒトを取り巻く環境は驚くほど変わりました。

これまでも経営資源であるヒト、モノ、カネ、情報などの中で、最も基本的な経営資源である「ヒト」に関するマネジメント活動は、会社経営で最も重要な活動として経営学の中でも古くから研究されてきました。

例えば、19世紀後半のアメリカにてフレデリック・W・テイラーによる「科学的管理法」や、ウエスタン・エレクトリック社ホーソン工場での実験(1924-1932)などによって企業で働くヒトへの注目が増し、この100年間、ヒトに関する研究は、各種分野で進んできました。

今回お話しする「人材マネジメント」は、その集積となります。そして、これから大きく変わる分野です。

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人材マネジメントとは

人材マネジメントに関しては、様々な角度から定義がなされています。

  • 人材マネジメントの目的は、「人材を活用して、会社の戦略を達成し、さらに次の戦略を生み出す人材を提供すること」(学習院大学 守島基博『人材マネジメント入門』
  • 人材マネジメントの提供価値は、「戦略を達成する」「生産性の高い組織の仕組みを築く」「従業員のコミットメントとコンピテンシーを向上させる」「組織の変革を実現する」の4つ(ミシガン大学 デイヴ・ウルリッチ)
  • 人的資源管理は、「基本的に企業組織において労働者の自律性と他律性を組織目的に向けて統合しようとする諸制度(雇用・キャリア開発・人事考課・報酬・福利厚生・労使関係)」(奥林康司『入門人的資源管理』

これを考慮し、この連載では、人材マネジメントを

  • 「企業組織で働く人材のミッションやビジョン、戦略、バリューへのコミットメントを高めてコンピテンシーを向上させること」
  • 「成長した人材を活用して、会社の戦略を達成し、ビジョンを実現していくこと」
  • 「さらに次の戦略を生み出す人材を提供し、生産性の高い組織の仕組みを築いて組織の変革を実現していくこと」
  • 「企業組織において働く人材の自律性と他律性をミッションやビジョン、戦略、バリューといった組織目的に向けて統合しようとする諸制度(雇用・キャリア開発・人事考課・報酬・福利厚生・労使関係)によって短期・長期の組織パフォーマンスをあげること」

と定義して解説していきます。

人材マネジメントが必要となった外的要因について

afterコロナは正解のない時代へ

現在は、VUCA時代(Volatility(不安定性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧さ))と呼ばれています。

その意味は、時代が今までよりも不安定性が増していき、不確実になり、複雑性も増して、色々な境界が曖昧になってきているということです。

これは、これまでのように皆が正解とされたことを知った上で活動する時代ではなく、正解を皆で自ら素早く作っていくことが一般化する時代に変化したことを指します。『ブルー・オーシャン戦略』や『リーンスタートアップ』などの考えが必要とされるようになりました。

ここにプラスして、afterコロナ時代を見据えた戦略も考えていかなければなりません。なぜなら、コロナによって社会が大きく変わってしまったからです。グローバルだけではなく、国内でもテレワークが推進され、オンラインで結ばれ、場所を意識せずに仕事ができるようになりました。

また、各地域・人種などそれぞれの事情も大きく違うという前提で『ダイバーシティ』が叫ばれ、それぞれのローカルな考え方も鮮明になり、多様な価値観が大事にされるようになりました。その結果、グローバルに考えながらローカルで行動することを求める『グローカル』という考え方が出てきました。

さらにこれらの変化は、第四次産業革命である『デジタル革新(デジタルトランスフォーメーションDX)』によってAI・IoT・ブロックチェーンなどの最先端ITを日常業務で安く活用できるため、大きく、激しく、速くなっています。

このような状況では、一社で全ての技術を持って、一社で完結してサービスを開発していくことが難しくなります。変化のスピードに追随するための投資が莫大になる上に、アイデアやノウハウを持つ人材が自社にいるとは限らないからです。

オープンイノベーションを推進する人材マネジメント

そこで出てきたのが『オープンイノベーション』という考え方です。各企業の境界にとらわれずに各社・各人の強みを最大限活かしてイノベーションを起こし『ブルー・オーシャン』を作っていくことであり、『オープンイノベーション』は、VUCA時代をよく表している考え方です。

この環境下で日本政府は、Society5.0を提唱し、実現に向けて日本企業と連携して一気に『デジタルトランスフォーメーション』を推進しようとしています。

この世界観が現実になると、既存のビジネスモデルは大きく変わります。今までのような『単発型のサービス提供』から、オンライン・スマートフォン・5G・IoT・AIなどを活用した『常時寄り添い型のサービス提供』へ転換が必須になるからです。顧客へタッチポイントが連続することで、今までのサービスの境界がなくなり、拡がっていきます。

まさにVUCA時代は、各企業間の境界が、ドンドン曖昧になっていくのです。その境界を超えて制約を外して考え、他者と協働していくことができる人材が、『ダイバーシティ』を意識して『グローカル』に考え『オープンイノベーション』で『デジタルトランスフォーメーション(DX)』を実現し、『ブルー・オーシャン戦略』を実行することができるのです。

しかし、そのような中で、これからのVUCA×with/afterコロナ時代を担うはずの若い年代の労働力人口が減少しています。

株式会社パーソル総合研究所の調査では、2030年には、7,073万人の労働需要に対し、6,429万人の労働供給しか見込めず、「644万人の人手不足」となると推計をしています。現在は、人材獲得競争が激化してきているのです。

この人手不足時代の中でこれまでと同じの人材マネジメントでは、成果を出せない時代になっています。

企業内でどう人材マネジメントを推進するか

人材マネジメントの推進は、人事部が担うことが一般的です。しかし、これまでのように人事関係の業務を実施するだけではなく、経営戦略の立案に参画し、社内の労働人口動態と社外の労働力市場に注目し、経営戦略を担う人材をいかにして採用して育成していくか、制度面・施策面などから企画していくことが求められます。主に従業員の雇用管理やキャリア開発、人事考課、報酬、福利厚生などがテーマとなります。

また、これからは、人事部だけではなく、事業部門の管理職も人材マネジメントを推進する立場になります。人材マネジメントの制度を具体的に部下へ適用し、諸制度を運用し、部下の業務能率を刺激し、経営効率を高める役割を管理者が担うからです。

そして、部下が活躍できる組織設計や業務のアサイン、効果的な業務遂行、モチベーション向上、成長などをプロデュースしていくことが求められているからです。

人材マネジメントによって企業はどう変わるのか

若手の労働力人口が減っていく中、新卒採用した若手人材の定着に向けて、対象者及び受入職場やその管理者にとって『組織社会化』(新しく組織に参画した人が、組織目標を達成するために求められている役割や知識、スキル、規範、価値観などを獲得して、組織に適応していくプロセス)を教育していくことが求められます。

これまでと同じように人事部に一任するのではなく、受け入れる職場全員も含めて新卒採用社員を定着させ、育成していくことが必要になります。

同じように中途採用社員を定着させ、垂直的に立上げていくために『組織再社会化』(転職して新しく参画した組織社会化を再度実施していくプロセス)を同じように教育していくことも必要になります。

また、労働力としての人材を増やす場合に、今まで以上に女性活用やミドルシニア躍進、外国人労働者採用などに関する制度や施策を考えなければいけません。

これからは、人材マネジメントを念頭に置かずに進めてしまうと、時代の変化についていけない企業になってしまいます。今まで世間で注目されながらも成果が出てない分野を対象に、制度や施策に対して大きな改革を実施していく必要があります。

これからの人材マネジメントは、今までの常識にとらわれず、既存の制度や施策などを客観視(メタ認知)して、現実を直視した上で課題を設定し、制度構築や施策企画・実施をしていかなければならないでしょう。

未来のビジネス課題に対応できる人材の量を拡大し、質を高めていくことが、市場での競争に打ち勝つための源泉になります。

まとめ

これからの『人材マネジメント』は、VUCA × with/afterコロナの時代になります。これまでに人類が経験したことがない時代へ突入していきます。だからこそ、Society5.0という社会イメージが提唱され、デジタルトランスフォーメーション(DX)が求められるようになっているのです。

この時代に必要とされるのは、今まで通りのビジネスモデルなどの制約に無意識に固執してしまう人材ではありません。これからは、以下のような人材が必要となります。

  1. 制約を取り払って、広く、深く考えられる
  2. 境界を意識せずに他者と協働できる
  3. 誰よりも早いトライ&エラー(特に失敗)から学習できる
  4. カスタマージャーニーへのタッチポイントで顧客の成功につながる新しいサービスを構築できる

そしてこのような人材を採用・育成し、組織に定着させ、組織戦略を実現して同時に組織変革を実現できる新しい『人材マネジメント』が求められています。

株式会社パーソル総合研究所 執行役員 / デジタルラーニング事業本部 本部長。大学卒業後、大手建設会社に入社し総務人事を担当。その後、電気メーカー子会社にて採用及び研修担当、株式会社日本能率協会コンサルティングを経て、2015年にトーマツイノベーション株式会社に入社。講師派遣研修事業の事業責任者に従事しながら、人材育成コンサルティング及び研修を実施。2018年10月より現職。
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