「集中力とは成長のポテンシャル」――JINSの“集中力採用”が問いただす新卒採用の本質

2018.05.22 ライター: 藤田 隼

世界初の“自分を見る”メガネ「JINS MEME」をはじめ、世界一集中できる環境を目指すワークスペース「Think Lab」など、“集中”という要素を軸に人々の働き方と向き合う株式会社ジンズ。そんな同社は、2019年度の新卒採用において、「JINS MEME」を通して計測される“集中力”を選考基準とする、「集中力採用」を試験導入することを発表しました。

果たして、どのような思いでこの取り組みが企画されるに至ったのか? その背景と今後の展望に迫るべく、JINS MEME事業部 事業統括リーダー 井上一鷹さん、人事戦略室企画開発チームリーダー 久保田賢二さん、コーポレートコミュニケーション室広報・PR 石井建司さんに、インタビューを実施しました。

JINSはなぜ「集中力採用」を試験導入するに至ったのか?

―― 昨年オープンした「Think Lab」に続き、先日発表のされた「集中力採用」が話題になっています。この採用方法に取り組もうと思ったきっかけを教えてください。

井上さん:実は広報の石井がきっかけだったんですよ。

石井さん:ここのところ「Think Lab」の取材で井上にずっとついて回っていたため、「集中」について話を聞いたり、考えたりする機会が多かったんです。その中でイノベーション創出に繋がる「知の探索」と「知の深化」といういわゆる「両利きの経営」を成す要素が大変重要であるということで、「Think Lab」のコンセプトにおいても、ひとつの軸であると。

でも、この考え方が当てはまるのは、何も「Think Lab」というハード面だけではないと次第に感じるようになりました。例えば「人材」というソフト面においても、人によって「知の深化」(≒集中)が得意なのか「知の探索」(≒コラボレーション、コミュニケーション)が得意なのかって分かれるだろうなと。

従来の弊社の採用においては、基本的に採用後、店舗配属からスタートになるので、お客様と接することが多いため、「知の探索」、つまりコミュニケーションを取ることに重視した採用を行っていたんです。

「知の探索×知の深化」を誘発する両利きの採用戦略

石井さん:ただ、「JINS」としてもっと新しいものをつくり生み出していくには、「Think Lab」などのハード面を構築するだけでなく、「知の深化」を得意とした、何かに没頭して考え集中して取り組めるような人材が一定数いてもいいんじゃないか、と採用担当者に相談したところ、この考え方に共感してくれて、「じゃあ人材面でも『知の探索』と『知の深化』についてバランス良く採用してみよう」となったのが「集中力採用」の始まりでした。

―― なるほど。「知の探索×知の深化」の、いわば“両利きの採用戦略”という観点から、「コミュニケーション力」のある人材だけでなく「集中力」のある人材も採用することで、イノベーションの生まれやすい環境をつくりだしていこうという考え方なんですね。そしてその採用を可能にするのがまさに「JINS MEME」。

石井さん:そうですね、これまで「知の深化」、つまり「集中」って採用では測れない部分でしたよね。でも「JINS MEME」を活用すれば、メガネをかけてもらうだけで簡単に計測可能なので、試験的に導入できるねという流れになりました。

コーポレートコミュニケーション室広報・PR 石井建司さん

新卒にとっての「集中力」とは成長のポテンシャル

―― なるほど。ありがとうございます。続いて、「新卒にとっての集中力とは?」という定義や位置付けについてお伺いしたいです。

質問の意図としては、Goodpatchさんの集中力調査の事例で、新人とベテランで集中力が異なるというお話がありましたが、それを踏まえると、今回の「集中力採用」における「集中力」は、目先の仕事で活躍するための能力というより、むしろ本人の伸びしろやポテンシャルを踏まえた「集中力」という考え方なのかなと感じています。

井上さん:まさにそうですね。これは恐らく根本的な話にも触れるんですけど、先ほど石井からもあったように、これまでの採用では、基本的に「店舗」での配属があり、つまり主な仕事内容が「接客」でした。

どれだけAIが発達しても「接客をする」というコミュニケーション主体の仕事は残るという説がある中で、その時にヒトとAIで仕事をどう棲み分けるか、どう活用するかという議論が盛んです。それに伴い「働く」の定義って今とは変化していくと思うんですよね。つまり、産業としても人材としても不確実性の高い時代がやってきます。

そんな時代にあって、人材要件における唯一無二のベースになるのが「不確実性への対応力」、そしてその対応力をもたらす「集中力」だと思っています。更に、集中できる人は、一つ一つの経験に対して、深く経験値を溜められるため、そうでない人と比べ経験値の差が大きく、集中できる人は成長率の面でも強みがある。つまり、「集中力≒成長率」だと考えています。

世の中全体の不確実性が増していくため、何かしらの事象に対してキャッチアップして深く自分の経験とする力や、その経験を自ら組み合わせて課題を解決したり、その事象に対して深く考えたりする力のある人材が、JINSとして求める人材像かなと思っています。

多くの企業において、新卒採用とはポテンシャル採用そのものです。なので、新卒採用で測るべき指標はポテンシャル、つまり成長率。そして成長率に結びつく「集中力」なんじゃないかなと個人的に考えています。でも、採用や人事担当者としての考え方とは別かもしれないけど(笑)。久保田さん的にはどうですか?

久保田さん:採用の話とはちょっとズレるかもしれませんが、私が考えているのは「集中すること=良い評価」になるかというと、現状はそこまで言い切れないと思っています。集中をした結果アウトプットに繋がったとか、集中した結果当社が求めるコアバリューを発揮することに繋がった、という際に初めて評価されるべきだろうなと考えています。

ただ、井上が申し上げた通り、「集中≒成長率」のような観点で、成長するひとつの要素として集中が必要だということを、仮説検証していくのは面白い試みだと感じます。

人事戦略室企画開発チームリーダー 久保田賢二さん

能動的な働き方が集中、そして成長に寄与するワケ

―― 「集中≒成長率」という観点でお伺いさせてください。これまで「JINS MEME」を活用することで働き方のPDCAを回してこられているかと思いますが、その中で成果・バリュー発揮の観点以外に、成長に寄与したような事例はありますか?

井上さん:僕と一緒に「Think Lab」の運営で動いてくれている部下は、とても成長していますね。そもそも、集中環境を提供する「Think Lab」を仕掛ける側なので、そんな人が集中していなきゃまずいというのもありますが(笑)。

彼の大きく変わった部分として、仕事に対する姿勢がかなり能動的になりました。

受動的に働いていると、自らでコントロールできない領域が増えてしまい、集中する時間が減ってしまいます。逆に集中して働こうとすると、能動的な働き方に辿り着くんですね。働き方が能動的になったことで、事業戦略をはじめ、様々な提案を持ちかけてくるようになりました。

その提案の中でも「ああ、確かにな」と感じることも増え、アウトプットの質の向上にも繋がっているように思います。僕の周りで起きた、一番わかりやすい変化の例だと思います。

―― 成果を出していく上で、パフォーマンスを推し測る要素として「集中力」がある。以前のインタビューでも、人はパフォーマンスを定量的に計測し、それが目に見えて改善できると、モチベーションが向上し、次なる改善に挑むというお話がありました。

今、井上さんにお話いただいた例と照らし合わせると、自分自身の働き方と集中、そしてそのアウトプット質の変化と日々向き合う中で、「集中」「成長」「成果」という3つのポイントが線となって結びつき、自分にあったPDCAサイクルを見出すことができたのかなと感じます。

井上さん:まさに、そうですね。このような観点からも、「集中」「成長」「成果」は明確に結びついていると考えられます。

JINS MEME事業部 事業統括リーダー 井上一鷹さん

入社後は「集中と成果」を結びつけていく

―― 今後の御社の人事戦略において「集中力採用」の以後、どのような展開を想定されておりますでしょうか?

例えば、「集中力採用」において、成長ポテンシャルの高い人材を採用し、そして入社後も定点観測していくことで、集中できる人材の中長期的な育成や評価と連動させることで、ひとつの人事基盤を築くことができるのではないかと感じています。

久保田さん:評価に関しては、ジュニアレイヤーの人材であれば、集中をしたことをダイレクトに評価をすることも、可能性としてはあるとは思います。

しかし、一定以上のレイヤーの人材であれば、集中することが評価、そして給与に直結させるのは難しいと考えています。

その中で、実際に試して分析してみたら面白そうだなと思うことは、各部署ごとの「集中して働いた時間」と「成果」の因果関係です。

―― なるほど、ありがとうございます。採用において集中という成長のポテンシャルをひとつの軸にし、入社後においては成果との因果を測り、成長と成果を結びつけていくということですね。

「集中力採用」が問いただす新卒採用の本質

―― 今後の展開において、「集中力採用」を、新卒だけでなく中途採用等に活用することは考えていますか?

井上さん:現実的には無いかと思います。これまでのお話の中でも触れましたが「集中」とは、それ自体が目的ではなく、あくまでも手段です。そして、中途採用で入ってくる方々は、アウトプットに対する責任と評価になります。そうすると、アウトプットを生み出す過程のインプットにおいては、結果として集中しているだろうと。このアウトプットが、新卒では基本的に見えないからこその「集中力採用」。

―― 確かに、実績をあらかじめ判断できる中途採用だと、手段である集中力を軸にすることはなく、「集中して働く力があるからこそ、これまでの実績がある」と考えられます。

一方、新卒だと実際のアウトプットを担保できないため、その人たちの成長のポテンシャルを測る1つの手段として、まさに「集中力」があり、それ即ち「成長率」として定量的に可視化していこうということですね。

井上さん:そうですね。

―― 僕が新卒採用を受けていた当時は、「自分にはこういう力があって、その中で何ができて、実際にこういう結果を出していくんだ」ということを体系的に捉えられる術って、専門職で無い限りなかなか難しいことで、「就活の難しさ」はそこに感じていました。もちろんポテンシャルなんて、もっとわからないものでしたし……(笑)。

井上さん:実は、以前JINS MEMEについてリクルートワークス研究所・所長の大久保幸夫さんと話している中で「JINS MEMEは採用に生かすべきだ」という話になりまして。

やっぱり「面接で人を見極めるには限界がありますよね」ということで、そこを可視化するためにJINS MEMEを活用できるのではないかと。

―― 面接って求職者のテクニックでどうにかなってしまう部分もあると思っています。でもそれって双方にとってミスマッチを生みかねない、要は本質的な採用とはいえないのではないかと感じています。

そう考えると経験と勘が頼りだった面接も、JINS MEMEのようなHRテクノロジーによって科学できる時代が来ているんですね。今回の「集中力採用」はまさにその先駆けたるひとつのヒントになるのではないかと感じています。

石井さん:やはり面接で見ることができるのは、コミュニケーション面が主体というか、それこそ口達者な人が目立ちがちです。

更に、これからの少子高齢社会において、採用の母数自体が減ってしまうため、いくらAIを導入して効率的に採用を行ったとしても、実数としては減る可能性が高いわけです。

そのような背景を踏まえ、新時代の採用ソリューションのヒントとして「集中力採用」を取り入れました。ゆくゆくは、「TOEIC***点」のようなイメージで「集中力**点」のような基準で見てもらえたら面白いのではないかと考えています。

―― 何とかマンパワーで母集団を形成し、その中で効率化して採用人数を確保していくというだけではなく、「集中力」という成長のポテンシャルをひとつのヒントとして、応募者1人1人と向き合っていきたいということでしょうか。

石井さん:そうですね。採用効率を求めるだけでなく、そもそも今まで発掘できていなかったポテンシャルの高い人材をしっかりと発掘することも必要だという思いがあります。

それを解決するひとつの手段として、「集中力採用」を生かすことができれば幸いです。

―― これからの採用や働き方を考える上で大きなヒントになりそうです。

井上さん、久保田さん、石井さん。本日はありがとうございました!

【参照】
集中力が高い人は一気に最終面接へ。「集中力採用」始まる! – JINS 2019 RECRUITING SITE


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藤田 隼

SmartHR mag. 2代目編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトのディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。ウェブ解析士。
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