デジタル手続法成立。人事労務の生産性向上に「HRテクノロジー」が欠かせないワケ

2019.05.31 ライター: 特定社会保険労務士 榊 裕葵

こんにちは。特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

2019年4月1日より、働き方改革法が順次施行開始となり、有給休暇の5日取得義務化や、時間外労働の罰則付き上限規制といった法令を遵守するためには、長時間労働に頼らない仕事の進め方が必然的に求められます。

加えて、慢性的な人手不足により採用競争が激化する中、「ワークライフバランスを実現できない」「非効率的な働き方を強いられる」などの働きにくい会社には、人材は集まりません。

働きやすい職場づくりが必須の時代になったと言えるでしょう。

本稿では、その旗振り役となる人事労務部門の生産性向上とそのヒントとなるHRテクノロジーについて、デジタル手続法の成立も踏まえ、これからの働き方を考察します。

人事労務 生産性向上 HRテクノロジー

生産性向上は「気合や根性」で行うものではない

最初に申し上げておくと、人事労務部門の生産性を高めると言っても、気合や根性によるアプローチでは限界があります。

新入社員が入社したときに社会保険や雇用保険の資格取得届の書類作成を例に考えてみましょう。手書きで書類を作成することを前提としたら、どんなに手首を鍛えたとしても、2倍や3倍のスピードで書類を書き上げるのは人間業としては無理でしょう。下手をしたら腱鞘炎で労災になってしまう恐れすらあります。

同様に、勤怠管理において紙のタイムカードを集計する場合も、数名ならばともかく、何十名、何百名と社員がいたら、それなりに時間がかかってしまいます。電卓を早く叩く訓練をすればある程度は早くなるかもしれませんが、やはり限界があります。手先の器用な人とそうでない人によって、作業スピードに大きなバラつきも生じてしまうでしょう。

さらに言えば、このような訓練や職人的スキル頼みの効率化は、社員の異動や退職によって担当者が変わったとたん、無かったことになります。つまり、属人的な効率化になってしまうわけです。

属人化を防ぎ生産性向上を支えるHRテクノロジー

それでは、本当の意味での人事労務部門の効率化を図るために、会社はどのようなアプローチを取ればよいのでしょうか?

その答えこそが、「HRテクノロジーの活用」であると筆者は考えます。

属人的なブレを防ぎ、人事労務を効率化・標準化

筆者は社会保険労務士として開業する前は、自動車製造の業界に身を置いていました。トヨタやホンダといった世界を代表する自動車メーカーが、安定した品質で自動車を大量生産できるのは、工場の生産ラインに様々な機械や設備を導入し、属人的な理由で品質や作業効率にブレが生じることを徹底的に防いでいるからです。

これと同様に、属人的なブレを防ぎつつ、人事労務業務を効率化・標準化できるツールが、まさに「HRテクノロジー」です

HRテクノロジーには、「クラウド人事労務」や「クラウド勤怠管理システム」など、各業務ごとに便利なツールが存在します。

「仕組み化」が生産性向上を後押し

先ほどの例に当てはめれば、手書きだと作業が属人化しやすい資格取得届の作成も、SmartHRなどの「クラウド人事労務」を活用することで、誰が操作しても必要な書類が一瞬で自動作成されます。

タイムカード集計の例にしても、KING OF TIMEジョブカン勤怠管理といった、「クラウド勤怠管理」を導入すれば、社員が日々の打刻をした結果がシステム上で自動集計されます。これにより、月の終わりに「Aさんは今月、所定内労働●●時間、時間外労働▲▲時間、休日出勤■■時間」といった労働時間の集計結果を瞬時に確認できるようになります。「職人技」が求められたタイムカードからの勤怠集計も、効率化・標準化につながるわけです。

上記は一例ですが、このようにHRテクノロジーの活用によって「仕組み化」され、人事労務部門の生産性向上を図ることができます。人事労務部門に所属する社員も、書類作成や手続き、集計などの作業ではなく、働きやすい職場づくりに注力できるようになります。自ずとスキルアップにもつながるでしょう。

まだ万全ではないが格段に進歩中

とはいえ、HRテクノロジーも万能ではありません。

HRテクノロジーはまだまだ発展途上の領域で、クラウド人事労務においては「扶養手続の電子申請ができない」とか、クラウド給与においては「固定残業代を含む給与計算の自動化に対応していない」など、どんなサービスであっても、すべての業務やニーズに対応できているわけではないことを認識しておく必要があります。

しかし、それを差し引いても、ここ数年でHRテクノロジーは格段に進歩し、「対応できていないこと」に関しても利用者の工夫で何とかなるレベルにまで達しています。

「デジタル手続法の成立」がHRテクノロジー浸透を後押しするか

2019年5月24日に「デジタル手続法(デジタルファースト法)」が可決されました。

政府はデジタル手続法の理念の具体的な実現として、人事労務分野に関しては、まずは手続きの一本化を進めつつも、最終的には企業が「政府認定のクラウドサービス」に社員情報をアップするだけで、入社・退職等の手続きが完結するといった形を目指しています(現在の計画では2021年度を目標)。

この「政府認定のクラウドサービス」は、大企業は自社で所有するクラウドになりそうですが、中小企業の受け皿としては、SmartHRや人事労務freeeなど既存のHRテクノロジーが「政府認定クラウド」として選定される可能性が高いのではないかと予想します。

社会保険・税手続ワンストップサービスの取りまとめ(案)について – 首相官邸

いま導入すべきHRテクノロジー

生産性向上はもちろん、行政手続きのIT化にスムーズに対応するためにも、早期にHRテクノロジーを導入し、慣れ親しんでおくことが重要です。

まさに、「HRテクノロジー、いつ入れるか?」「今でしょ!」という時期に来ていることは間違いないと筆者は確信しています。

HRテクノロジーにはどのような種類のものがあるのか、HRテクノロジーを導入する順序や注意点などについては、拙著「日本一わかりやすい HRテクノロジー活用の教科書」にお目通しを頂けましたら幸いです。

(了)

 

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特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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