「経営戦略から人事戦略を逆算できる人事」が求められるワケ【働き方改革を成功に導く人事部の役割】#03

2018.12.04 ライター:藤田隼

【アジェンダ #02】「働き方改革2.0に必要な取り組み」はこちら


2018年9月11日、株式会社SmartHR主催イベント「SmartHR Next 2018 – HRの最先端が集結する日」を開催しました。

「SmartHR Next」は、産官学の有識者のパネルディスカッションに加え、参加型ワークショップや来場者の交流・情報交換を通じて、明日から取り組める施策を学び・活かすための「働き方改革の明日」を創る等身大の人事労務イベントです。

同イベントのパネルディスカッション第一部において、「働き方改革を成功に導く人事部の役割」をテーマにディスカッションを行いましたので、同内容を全3編にてお届けします。

アジェンダ #03は「働き方改革の中で『人事部に求められる役割』とは?」です。

従業員の働き方と向き合える「企画型人事」

藤本さん
次のアジェンダは、働き方改革の中で「人事部に求められる役割とは?」です。

本質的な働き方改革を進めていくには、人事部もマネージャー陣もかなり大変になっていきます。特に、個が多様化していく中で、それぞれの多様性に対して個別最適化していく必要がある。けれども「そんなこと言われてもね」と感じている方も、いらっしゃると思います。

では、実際に働き方を進めていく上で、「人事部に求められる役割」として、何が必要になってくると思いますか? 田中さんいかがでしょう。

田中さん
ひとくちに「人事」といっても、採用のほか給与・労務などのオペレーション系業務など、様々な役割があります。

ただ、今後より求められてくるのは“従業員が生き生きと働く環境づくり”や、先ほどあった“多様性の個別最適化”“エンプロイーハピネス(従業員幸福)の創出”など、従業員目線でサービスを提供できる人事が求められるのではないかと思っています。

オペレーション系業務は、テクノロジーに代替されていく世の中になります。

逆に人間がやるべきことは何なのかと人事自身の役割を再考し、もっと従業員の働き方と向き合い何ができるか考えられる「企画型人事」が求められると思っています。

「経営戦略から人事戦略を逆算できる人事」が求められる

藤本さん
ありがとうございます。白石さんはいかがですか?

白石さん
いま田中さんがおっしゃったことに尽きると思います。定型的なオペレーションをまわすだけではなく、もっと経営戦略に合わせて、柔軟に組織や人事のシステムを組み替えていく必要があるんじゃないかと感じています。

では何に基づくのか? 経営戦略に基づき、会社に必要な人材を定義し、短期的にも中長期的にも採用・育成の計画を立てていく。経営戦略を実現するということが必要であって、それを実現するために人事戦略について社長や経営陣と対話できる人事になれるかどうか。

“人材”ってものすごい可変的な資産で、働き方や気持ちによってパフォーマンスが倍にもなれば半分にもなります。まさに企業の命を決めるリソースであることを、経営者も人事も認識する必要があります。

なので、これからの人事に求められるのは、経営視点で人事戦略を打ち立てていけるような役割だと思います。

経営戦略から逆算した「メンバーシップ2.0」

藤本さん
そうなると(人事の役割として求められるレベルが高くなり)、辛い面もあるかなと思います。大室さんからアドバイスはありますか?

大室さん
僕も、経営戦略から逆算して考えるというのが一番必要だと思っています。

先ほど、ジョブ型とメンバーシップ型のお話をしましたが、日本の多くの企業がメンバーシップ型である中で、働き方改革においては半分ジョブ型に移行していこうというメッセージでもあると理解しています。

一方で、非常に好調の、例えばサイバーエージェントさんはメンバーシップ型の最たる例です。極端な話、明日からは飲食事業を始めるからといったら、みな「やります」と応えると。

また、僕もお世話になっている「NewsPicks」というメディアは、自由にリモートワークができる一方でジョブ・ディスクリプションがなく、つまり働く範囲が決まってないらしいんですよね。

なぜなら、ジョブ・ディスクリプションを提示してから入社する間に、もう経営戦略が変わっているかもしれないから。要するに、変化が早すぎてジョブ・ディスクリプションを書けないっていうような。

藤本さん
面白いですね!

大室さん
だから、これ「メンバーシップ 2.0」ってことですよね(笑)。今までのメンバーシップ型ともちょっと違う。

で、経営戦略が変われば採用戦略も変わってくるし、各社員に向けてどのような施策をすればいいのかも変わってくる。なので、まず自社の経営方針がどうなのか指差し確認をするところから常に逆算していく。

例えば、Aさんという社員を採用した理由を、経営戦略から逆算しながら説明できる。このようなことができるのが、今後の人事だと思います。

働き方改革の議論は「レベルやフェーズ」が異なると噛み合わない

藤本さん
素敵ですね、ありがとうございます。次に、グローバルでのHRトレンドについて参考になりそうなものがあれば、田中さんより解説いただけますでしょうか。

田中さん
詳しくは、デロイトのWebサイトを見ていただければと思いますが、これからの大きなHRトレンドは、「企業の社会的責任」が今後ますます増大していきます。世の中に対する政府の役割はもちろんですが、それ以上に企業が持つ責任は大きくなります。

それから「テクノロジー活用」や、先ほどあった「ジョブ型」。やはり海外ではジョブ型がメインです。これからの日本の働き方を考えると、切っても切り離せません。

藤本さん
なるほど。一方で、日本も海外も変化のスピードが早くなる中でどう変化していけばいいのか困っている方もいらっしゃると思います。

ジョブ型に移行しようとなったときに、「とはいえそんなにすぐにはできない」、という声もあると思います。じゃあ具体的に何から始めれば良いでしょうか? 大室さんお願いします。

大室さん
例えば、六本木交差点の渋滞を解消したいという議題が「朝まで生テレビ!」であったとしたら、「道路幅を広げればいいんじゃないか!」とか「麻布警察署に頼んで取締を強化しよう!」とか、あるいはもっと突拍子もないことを言う人もいるかもしれない。根本解決につながるような案だとしても、果たしてそれは実現可能なのかと。

あるいは、個人の目線でできることとしたら、抜け道マップを使いましょうとか、どうにもならないんなら音楽でも聞いて気を紛らわせましょうとか。

これらを一緒に話すと、レベルやフェーズがズレて、議論が噛み合わないんですよね。

働き方改革も、渋滞解消の議論の例えのように、フェーズや視点がごっちゃになると噛み合わない。企業としてできること、個人としてできることをどのレベル、どのフェーズで議論するのかをしっかり整備して考えなきゃいけない。

藤本さん
確かに。そこを整理した結果、自社にとって本当に必要なのは、ジョブ型かもしれないし、あるいは先ほどのメンバーシップ 2.0なのかもしれない。

大室さん
会社によっては、出した結論が「うちはそっちじゃない」というのもアリかもしれない。

藤本さん
みんながみんな同じ方向へ行くのではない、それが大事ですよね。

「働き方を選べる」仕組みづくりが必要

藤本さん
そういうときに、政府に色々と変えてほしいとか音頭をとってほしいみたいな意見ってあると思います。そんなこと言われたりしませんか? 白石さん。

白石さん
色々な会社さんや人事の方に会ってお話をする中で一番言われるのは、「解雇規制の緩和」です。でも正直なところ、経産省としてもこれを実現すべきとは今は思っていなくてですね。

というのも、働き手にとって非常に不安なんですよね。いつ首を切られてもおかしくないと。

それより、動きたいと思った人が動けるような仕組みをどう作っていくかが大切だと思っています。背中から突き落とすような方向性ではなく……(笑)。

藤本さん
背中から突き落とすのは酷いですね(笑)。

白石さん
先ほど「滅私奉公の忠誠」と言いましたが、今のメンバーシップ 2.0のあり方は、会社のやりたいことと自分のやりたいことがマッチしているということで、それぞれが自分の判断で奉公していると思うんです。

一方で、危険なのは“滅私”ですよね。終身雇用・年功序列の中で何も考えずにすべてを捧げていればOKだったのはある意味楽だったかもしれませんが、終身雇用が事実上崩壊し、人生100年時代を迎える世の中では、いわゆる定年から先の自分のキャリアをもっともっと考えていく必要があります。

「ここでしか働けないんだ」ではなく「ここでこそ働きたいんだ」という、数ある選択肢の中から自ら働き方を選んでいけるような仕組みづくりができれば良いと思っています。

藤本さん
実は本当にその会社に忠実に「そこで添い遂げる」みたいな人がいても、おかしくないのかなとも思います。

大室さん
今の白石さんのコメントは奥歯に物が詰まったような(笑)。

白石さん
(笑)

大室さん
実はメンタル不調って、期待値とのギャップがあるときに起こりやすいんです。

例えば、昭和40年代の板前さんが丁稚に入った瞬間、親方から「お前、何やってんだ」とゲンコツをくらっても、メンタル不調になる可能性は今よりだいぶ低かったと思うんです。なぜかというと、そういうもんだと思って入ってきているから。要するに、期待値とのギャップが少なかったんですよ。現代でそれをやったら翌日から来なくなると思います。

でもそれは別に現代人が弱くなったんじゃなくて、期待値とのズレからショックを受けてしまうから。

で、この話は解雇規制の話とつながるんですけど、「ある日突然クビを切られてもおかしくない」と思って外資系企業に新卒が実際にクビを切られるのと、そういうもんだと知らなかった人がクビを切られるのは全然違うんですね。

実際、僕もいろんな会社を見てきて、このようなシーンになったときに、外資系企業とそうじゃない会社とでは、ショックの度合いが違うと。

今まであった制度が明日から変わることに、人間ってそんなに慣れていないので、経産省はその期待値ギャップをなくすようにエクスペクテーション・マネジメント(期待値管理)をやっているんだと解釈したんですけど、白石さん違いますか?

藤本さん
すごい振りですね(笑)。

白石さん
すごい振りですね(笑)。いやいや、そんな裏の意図があるわけではなくてですね(笑)。

先週くらいのニュース(※ 神戸大学の調査結果)で、人の幸福度に何が影響を与えるのかが発表されていたんですが、「健康」や「人間関係」に次いで「自分で決定したか」が大事だと。なんとこれは「学歴」や「所得」より高い影響度らしんですね。
※ 所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査 – 神戸大学

数ある選択肢の中から自ら選んでいくことが活力を生みますし、広い意味での幸せにもつながっていきます。そういう“働く幸せ”を取り戻すべく、(産官学で)その選択をできるようにしていくのが大切かなという考えです。

キャリア選択肢の中から「自分でイニシアチブ」を持てるかが大切

藤本さん
白石さんありがとうございます。「at Will Work」も、まさに働き方の選択肢がある世の中を目指しています。

最後に田中さん、いかがでしょうか。

田中さん
今のお話の中で特に大事だなと思ったのは、やはり自らキャリアを握れるかということですね。

白石さんもおっしゃっていましたが、同じ会社に勤め続けるのは悪いことではないと思っています。

しかし、求められることと自分ができることのギャップが出てきて、会社の中でだんだん働きづらくなったり、自分のキャリアに自信が持てなくなったりもするはずです。そうすると期待値の話もありましたが、だんだん苦しくなってしまうのかなと。

そうなった時に、(1社しか選択肢がないのではなく)いくつものキャリア選択肢の中から自分でイニシアチブを持てるかが大切だと思います。

先ほど解雇規制の話がありましたが、会社側が潰れてしまうピンチに際し、大室先生のおっしゃったようなギャップが出てくる状況になるため、自分のキャリアのイニシアチブを握ることが、会社の分野に関わらず大切なんだと思います。

藤本さん
ありがとうございます。大変名残惜しいのですが、時間がきてしまいました。

ご来場の皆さまも、本日の話を踏まえて、今後どう歩んでいくのかを模索していただきたいと思っています。

田中さん、大室さん、白石さんありがとうございました。3名に大きな拍手をお願いします!

【編集後記】

全3編にわたり、パネルディスカッション第一部「働き方改革を成功に導く人事部の役割」をお届けしました。

今回示唆された、これからの人事部の役割として、「経営戦略から人事戦略を逆算できる人事」が軸になりそうです。ポイントとしては、以下の3つが挙げられます。

  • 働き方改革の目的の明確化
  • 指標の定義、KGI/KPI設定
  • 業務の棚卸しによる取捨選択

これらを紐解くと、働き方改革を始めるその前に、自社の課題にあわせて目的と指標を明確化する必要があると考えられます。つまり経営戦略から人事戦略を逆算し、自社に適した働き方改革のロードマップ策定が必要となるでしょう。

上記を、各社において等身大の視点から捉えるにあたり、パネルディスカッション第一部に続く形で、パネルディスカッション第二部「サービス産業が抱える課題と変革推進のポイント」のレポートも後日配信予定です。

サービス産業を牽引する各社が、どのような課題のもと働き方と向き合い、そして課題解決しているのか。具体的な事例をもとに、変革推進のポイントを考察してまいります。

【お役立ち資料】人事労務から始める「働き方改革」資料集

人事労務から始める「働き方改革」
SmartHR 働き方改革

「働き方改革」には担当者の負担がかかるため、まず着手すべきは旗振り役となる“人事労務改革”となるでしょう。こちらの資料集を参考に、ぜひ働き方改革の第一歩を踏み出してください。

【こんなことがわかります】

    • なぜ今「働き方改革」なのか?
    • 人事の現状と今後の姿
    • 電子化が激変させる労務の働き方
藤田隼

SmartHR ガイド編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトの制作ディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。
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