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【SmartHR Next 2018】人事部集合!私たちの働き方改革 - ハイライトレポート

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超高齢・人口減少社会に突入した日本。

生産年齢人口が減少していく中、官民一体となった働き方改革が推し進められ、多様な働き方と生産性向上の実現に向けた、経営者や人事部の役割がますます重要になっています。

2018年9月11日、今回初開催となる株式会社SmartHR主催イベント「SmartHR Next 2018 – HRの最先端が集結する日」を開催しました。

「SmartHR Next」は、産官学の有識者によるパネルディスカッションに加え、参加型ワークショップや来場者の交流・情報交換を通じて、明日から取り組める施策を学び、「働き方改革の明日」を創る等身大の人事労務イベントです。

本年度のテーマは、喫緊の課題として働き方改革が迫られる“サービス産業”を中心にフォーカスし、「人事部集合!私たちの働き方改革」と題して、開催しました。

本稿では、今回得られた“明日の働き方のヒント”を、マクロからミクロへと順にまとめ、ハイライトとしてお届けします。

「働き方改革」のイマ

at Will Work 代表理事 藤本あゆみ氏

at Will Work 代表理事 藤本あゆみ氏

パネルディスカッション01では、at Will Work 代表理事 藤本あゆみ氏をモデレーターに迎え、「働き方改革を成功に導く人事部の役割」をテーマに議論されました。

ポイントは、経営戦略に紐づく人事戦略の策定とKPIによる可視化。そして従業員のやりがいの尊重です。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャーの田中公康氏によると、生産性向上をにらみつつも、その効果を実感できている企業は3割程度にとどまっているようです。

更に、従業員満足を得られなかった企業は7割に達し、そのうちの4社に1社以上が「KPIを定めず、モニタリングできなかった」ことを原因課題として挙げています。

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー 田中公康氏

デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 シニアマネジャー 田中公康氏

また、従業員満足度を向上できない働き方改革の多くが、従業員の取り組みへの評価に繋がっておらず「“やらされ改革”になっている可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。

これを受け、経済産業省 産業人材制作室 室長補佐 / 弁護士 の白石鉱一氏も「働き方改革の構造として、企業と従業員がWIN-WINの関係になっていない」とし、労使双方のベクトルが向き合わずトレードオフになっていることが課題であると捉えています。

経済産業省 産業人材制作室 室長補佐 / 弁護士 白石鉱一氏

経済産業省 産業人材制作室 室長補佐 / 弁護士 白石鉱一氏

なぜ企業と従業員の間で思惑がすれ違ってしまうのか?

産業医として多くの企業成長を支える大室正志氏は、「議論がかみ合わない時は、それぞれの目線がずれていることが多い」と語ります。双方の目線をあわすには、共通言語として語ることのできる前提や定義、そして定量的指標が必要だと考えられるでしょう。

医療法人社団同友会 産業保健部門 産業医 大室正志氏

医療法人社団同友会 産業保健部門 産業医 大室正志氏

そのうえで、企業と従業員でWIN-WINの関係を築きつつ、“やらされ改革”でない本当の働き方改革に取り組んでいくためのポイントは「やりがいの尊重」。

白石氏や藤本氏は、多様な選択肢の中から従業員自らその働き方を選択していくことの重要性を説いています。

サービス業界における「働き方改革」。定義と具体的事例

しかし「やりがい」「働きがい」を向上させるのは簡単ではありません。

マクロ視点で展開されたパネルディスカッション01の内容を継ぐ形で、「サービス産業が抱える課題と変革のポイント」と題し、よりミクロな視点で議論されたパネルディスカッション02。モデレーターはリクルートワークス研究所 研究員 城倉亮氏です。

リクルートワークス研究所 研究員 城倉亮氏

リクルートワークス研究所 研究員 城倉亮氏

同研究所の調査では、人手不足が深刻化するなか、事業への影響が既に出始めている企業が飲食サービス業では約6割とされ、この業界にとっていかに喫緊の課題になっているのかは明白です。

人材確保待ったなしの状況の中、採用競争力、ひいては人材力を高め、生産性向上を推進していく上で「働きやすさ」と「働きがい」の両面の重要性が示唆されています。

この課題を踏まえ、具体的にどのような取り組みが求められるのか?

当セッションでは、サービス産業において目下働きがいの創造に取り組む、先進的な3社の取り組みがピックアップされました。

この3社は、図らずも、パネルディスカッション1と同様「企業と従業員のベクトルを一致させた働き方改革」という点で共通しています。

就活離職を防ぎ、学生アルバイトの長期活躍を実現させたエー・ピーカンパニー

元株式会社エー・ピーカンパニー 副社長 大久保伸隆氏

元株式会社エー・ピーカンパニー 副社長 大久保伸隆氏

店舗でのユニークな取り組みで人気を博す地鶏居酒屋チェーン「塚田農場」を運営する株式会社エー・ピーカンパニーの副社長を務めた大久保伸隆氏は、塚田農場の取り組み「ツカラボ」を紹介。

サービス産業を営む多くの企業において、学生アルバイトが成長し大きな戦力となった頃に就活で離職してしまうという課題が生まれがちです。同社も例に漏れず、その課題解決策として考案されたのが「ツカラボ」。就活中も出勤してもらいつつ店舗で無料の就活支援セミナーを行うことで、就活に励む学生アルバイトの従業員をサポートしています。

また、この取り組みに賛同する企業も卒業後の就職先候補として加わり、中には「塚田農場でアルバイトしていたら、即採用!」という一部上場企業もありました。

これにより、学生アルバイトを定着化させたい自社、就活と平行して収入を安定化させたい学生、人材確保したい第三者企業。更に大学、学業も含めた「新卒採用・大学生教育におけるALL WIN」を目指していました。

ブランドをジブンゴト化させ、従業員の主体性を引き出すスープストックトーキョー

株式会社スープストックトーキョー 取締役 兼 人材開発部部長 江澤身和氏

株式会社スープストックトーキョー 取締役 兼 人材開発部部長 江澤身和氏

全国に展開するスープ専門店「Soup Stock Tokyo」のほか冷凍スープの卸売・通販なども展開する株式会社スープストックトーキョーからは、取締役兼人材開発部長の江澤身和氏が登壇。

同社は「世の中の体温をあげる」という企業理念を、営業も人事も含めたすべての取り組みの物差しとし、社員ひとりひとりによる“働き方開拓”を掲げています。

その理念に紐付き、「体温をあげるための施策」として、“働きやすさ”を構築するための年間120日の休日・休暇「生活価値拡充休暇」などや、“働きがい”を向上させる「SSTグランプリ(成果発表会)」「Smash(WEBで読める社内SNS)」などの施策の両軸を紹介。

特に後者では、パートナー従業員を主体者として巻き込むことでブランドを「ジブンゴト化」させつつ、オフライン施策(「SSTグランプリ」)で高めた熱量をオンライン施策(「Smash」)で持続させるような好循環を生んでいます。

これら多様な施策を浸透させるため、従業員にとって親しみのわくキャッチーなネーミングや「楽しさ」を織り込むのも重要なポイントになっていると言えるでしょう。

キャリアを可視化し、プロとしての働きがい創造を後押しするベイクルーズ

株式会社ベイクルーズ 人財統括 取締役 CHRO 梶村努氏

株式会社ベイクルーズ 人財統括 取締役 CHRO 梶村努氏

「JOURNAL STANDARD」をはじめとしたアパレルブランドのほか、ライフスタイルに携わる多様な事業を展開する、ベイクルーズ 人材統括 取締役 CHRO 梶村努氏は、同社の「働きがい創造」を紹介。

「おしゃれにこだわり楽しもう! ついでに仕事も楽しもう!」という行動指針のもと、パートナーの成長と未来を創造し応援するため「BAY☆CAREER」という人事制度を設立しています。

「BAY☆CAREER」は、採用、能力開発・キャリアサポート、エンゲージメントの3つの軸で成り立っており、各軸・各フェーズにあわせた事細かな施策を展開。1人1人がプロフェッショナルとして歩んでいくためのキャリアステップが明確に見える化されています。

この制度のひとつ「BAY☆FA(ファッションアドバイザー)」では4年間でのべ91名が認定されているそうです。また、現行ブランドでの活躍を支えるだけでなく、新規ブランドを立ち上げたい従業員も自らその一歩を踏み出せるよう「START UP CAMP」という新規事業提案制度を設けているのも特徴的です。
※ BAY☆FA ・・・ 販売のプロフェッショナル(プロFA)として社内で認定する制度

「働き方改革」は「経営改革」

少子化ジャーナリスト / 作家 白河桃子氏

少子化ジャーナリスト / 作家 白河桃子氏

特別講演では、少子化ジャーナリスト / 作家の白河桃子氏が「御社の働き方改革、間違ってませんか? – 経営戦略としての働き方改革」のテーマで、イマの働き方改革にメスを入れています。

「働き方改革」というと、「残業削減」などの枝葉の議論が先行してしまいがちです。これに対して白河氏は、「本来、各社の経営課題はまったく異なっているため、どのような自社課題に対してどのように解決していきたいのかを考えていく必要がある」とコメント。

狭義の働き方改革を施策ごとに捉えるのではなく、パネルディスカッション01でも議論されたように「経営戦略・経営課題から紐解いて働き方改革に取り組んでいく」ことが求められるでしょう。

このような、経営戦略に基づく働き方改革によって、目覚ましい企業成長を実現させた象徴的な事例として、株式会社良品計画が挙げられます。

「無印良品流 人生100年時代を生きる企業経営と人材育成」と題した、松井オフィス代表取締役 / 良品計画 前会長・松井忠三氏の基調講演にそのヒントが眠っています。

松井オフィス代表取締役 / 良品計画 前会長 松井忠三氏

松井オフィス代表取締役 / 良品計画 前会長 松井忠三氏

2000年代初頭の業績急落の真っ只中に社長へ就任した松井氏は、「敗けた構造から勝つ構造」を見出すべく経営変革を掲げ、見事なまでのV字回復と成長を遂げました。

その屋台骨を支えたのが、他でもない“人材改革”。

最も重要な経営資源である「人材」を根本的に改革すべく取り組んだ、店舗業務マニュアル「MUJI GRAM」をはじめとする人材マネジメント・育成基盤を紹介しています。

松井氏は、人事に向けた結びの言葉として、「人材戦略と商品開発をイコールにし、一本芯を通していくには、経営者と一緒になって全社視点で人事戦略を捉えていってほしい」というメッセージを残しました。

飲食業におけるテクノロジー活用のポイントは?

経営戦略に紐づいた人事戦略の中で推し進めるべき働き方改革。

特にサービス産業において効果的だと考えられるのが、「働きやすさ」と「働きがい」の二軸による改革でした。

パネルディスカッション02では、主に「働きがい」が議論されましたが、これに加え「働きやすさ」を改善していくためには、どのような対策が考えられるのか?

ここでは飲食業にフォーカスし、ヒントを模索します。

テクノロジーによる常連革命

株式会社トレタ 代表取締役 中村仁氏

株式会社トレタ 代表取締役 中村仁氏

スポンサーセッション「トレタが目指す飲食店の常連革命 〜テクノロジーを活用した生産性向上への取り組み〜」では、株式会社トレタ 代表取締役 中村仁氏が登壇しました。

1980年代の「POSレジ革命」以後、現場オペレーションにテクノロジー革命のなかった外食業界において、低い労働生産性や過酷な労働環境が人材不足を招いている悪循環を指摘。

中でも、顧客台帳としても活用できるトレタは、来店日や注文履歴などの顧客情報が蓄積し、従業員間でナレッジの共有が可能です。

中村氏は、「繁盛店の条件として“リピーター”の存在が欠かせない。顧客満足を向上させるには技術と接客の質が問われる。限られた滞在時間で、いかにしてお客さまに楽しんでもらえる会話ができるか、好みのフードやドリンクを提供できるか。これらが顧客満足度やリピート率の向上に繋がっていく。」と語っています。

現場オペレーションの業務効率化は、従業員の働きやすさを向上させるだけでなく、顧客と向き合う時間を創出でき、働きがいにも繋がると考えられるでしょう。

働きがい創造や人材力向上で接客の質を高める。業務効率化で顧客と接し、付加価値を高める時間を生み出す。

この「働きがい」「働きやすさ」という二軸の働き方改革が、実務上の成果を生み出す経営改革のヒントとなるのかもしれません。

「働き方改革の先にある理想の未来」を1人1人が言語化

ここまでの講演やセッションを踏まえ、参加者1人1人が「明日から私たちが取り組むことは何か?」を言語化するために開催したのが、ワークショップ「働き方改革のその先へ」。

手を動かしながら自分との内省や理想のビジョンを描いていく「レゴ®シリアスプレイ®」と、プロセスや対話をリアルタイムで視覚化する「グラフィックレコーディング」を用いて「働き方改革の先にある理想の未来」を描き、その実現に向けた最初に踏み出す一歩を宣言しました。

ワークショップのグラフィックレコード

ワークショップのグラフィックレコード

以下に、ある参加者の宣言をピックアップし紹介します。

「私は、明日から“1人働き方改革”に取り組みます。今日の講演では、働き方改革の現状として、KPIを定めなかったために思うように成果がでていない、従業員の満足を得られていないという企業が多いと伺いました。働き方改革を推進する立場にある私が、まずは自分からKPIを定めて取り組み、そしてその成果をもって経営陣に提案し、全社的な取り組みへとしていきたいと思っています。」

明日から踏み出す「働き方改革」の第一歩

「SmartHR Next – HRの最先端が集結する日」というコンセプトのもと「人事部集合!私たちの働き方改革」と題し、働き方改革の現状やサービス産業における成功事例をマクロとミクロで捉え、そして理想の未来に向けて踏み出すべき最初の一歩を言語化しました。

とはいえ、多くの人事担当者の方々が目の前にある業務に追われ、最初の一歩を踏み出せずにいるのが実情かもしれません。採用や労務など多様な人事業務を兼務するケースが多い人事担当者にとって、歯がゆさを感じているのが現状ではないでしょうか。

そのため、理想の未来に向けた最初の一歩を踏み出すためには、業務の棚卸しや業務効率化が求められます。こと、労務の領域においては付加価値の低い書類作業等の定型業務が多く、これらの削減によって、採用や育成をはじめとした、より付加価値の高い業務へのリソースシフトが必要になってくるでしょう。

株式会社SmartHRは、皆さまの明るい働き方の未来のため、その起点となる人事労務から働き方改革の第一歩を踏み出せるよう、日々開発と改善、普及に努めています。SmartHR代表・宮田昇始が発表した「プラットフォーム化構想」は、まさにそのための大きな手がかりのひとつです。

株式会社SmartHR 代表取締役 宮田昇始

株式会社SmartHR 代表取締役 宮田昇始

企業と働き手がより良い明日へのベクトルを一致させ、サービス産業、ひいては日本経済の成長に向け「働き方改革の第一歩」を踏みだしていけるよう、SmartHR一同邁進していきます。

今後のSmartHRにご期待ください。

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【参考】講演・登壇者一覧(敬称略)

・基調講演:松井忠三(松井オフィス代表取締役 / 良品計画 前会長)

・特別セッション:宮田昇始(株式会社SmartHR 代表取締役)

・パネルディスカッション01:
パネラー
大室正志(医療法人社団同友会 産業保健部門 産業医)
田中公康(デロイト トーマツ コンサルティング合同会社 ヒューマン キャピタル ディビジョン シニアマネジャー)
白石紘一(経済産業省 産業人材政策室室長補佐 弁護士)

モデレーター
藤本あゆみ(一般社団法人at Will Work 代表理事)

・パネルディスカッション02:
パネラー
江澤身和(株式会社スープストックトーキョー 取締役 兼 人材開発部部長)
梶村努(株式会社ベイクルーズ 人財統括 取締役 CHRO)
大久保伸隆(元エー・ピーカンパニー 取締役副社長)

モデレーター
城倉亮(リクルートワークス研究所 研究員)

・スポンサーセッション:中村仁(株式会社トレタ 代表取締役)

・特別講演:白河桃子(少子化ジャーナリスト / 作家 / 相模女子大学客員教授)

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