老舗企業がはじめて踏み出したDX推進 〜検討の一歩目から現場活用の工夫まで〜

2022.05.27 ライター:元田有紀

4月19日に開催されたセミナーでは、株式会社千鳥饅頭総本舗さまをお招きし、老舗企業が初めて踏み出したDX推進をテーマに事例を紹介しました。

株式会社千鳥饅頭総本舗は、九州だけでなく全国で愛されている「千鳥饅頭」や「チロリアン」に代表される、1630年創業の老舗お菓子メーカー。400年近い歴史がある同社も近年のデジタル化の流れの中、既存の業務を見直し、DXを推進して新たな歴史を歩まれています。

本セミナーでは、専務取締役とご担当者さまを迎えて、「なぜクラウドシステム導入に着目したか」「どのように導入を推進し、現場で活用しているか」「導入後の運用実態や効果」「効率化の先に描く期待」などを経営目線と実務目線の両方から紐解きました。

システム導入を検討されている方、サービス活用の不安、DX推進のお悩みがある方は、ぜひご覧ください。

■株式会社千鳥饅頭総本舗 専務取締役 原田 広太郎 氏

■株式会社千鳥饅頭総本舗 総務部 人事労務課 荒牧 恵美子 氏

■株式会社SmartHR 宮下 真之

SmartHR 宮下:本日はよろしくお願いいたします。まずはお二人から自己紹介をお願いいたします。

原田さん:弊社は2030年に400周年を迎えます。ポルトガル菓子にルーツがある菓子技術を引き継ぎながら、カステラ、丸ボーロ、それらと日本のおまんじゅうと融合した「千鳥饅頭」、巻きせんべいをクッキーとワッフルのような生地で作ることで誕生した「チロリアン」、最近では、ポルトガルに先祖返りをしまして、カスタードまんじゅうの「ポルトス」などの商品を製造しています。

2030年までに「日本一愛情あふれる会社」を目指しており、各部署で、「愛情あふれる会社とはどういう状態なのか」を考えながら、組織運営に努めています。

荒牧さん:人事労務課の荒牧と申します。2008年に入社し約14年間、給与計算や勤怠管理、入社・退社に関わる事務手続きなどの業務を担当してきました。人事労務課は2名体制で、約230名の社員分の実務を行っています。

登壇者紹介スライド

老舗お菓子メーカーが抱えていた、導入前の課題

約230名に対し、2名で人事労務業務全般を担当する限界を感じていた

SmartHR 宮下:昨年2021年7月からSmartHRをご活用いただいていますが、導入を検討した背景について教えてください。

原田さん:労務や経理の業務は、企業経営にとって大切な業務です。DXの一環で、何かできることはないかと考えていました。とくに、労務は反復作業や手間がかかる作業が非常に多いんです。

弊社は2名で給与明細、年末調整、入社手続きなどを担当しているため、かなり忙しくしていました。そんな時にSmartHRさんのCMを見たり、商工中金さまからご紹介いただく機会があったりしましたので、「試してみよう」と思いました。

「日本一愛情あふれる会社」を目指すため、業務効率化し、新たな取り組みを始めたかった

SmartHR 宮下:なぜ人事労務業務の効率化を優先されたのですか?

原田さん:他の業務効率化では、現状人員が十分に確保できていました。一方労務業務は、230名に対して、2名の人員で対応していましたので、喫緊の課題だったんです。販売職はパート・アルバイトさまが多くいらっしゃり、入れ替わりも激しいため、このままでは厳しいと感じていました。

また、7年ほど前から導入した人事考課制度に関わる業務も労務担当2名の役割になっていました。「日本一愛情あふれる会社」を目指す当社は、今以上の新しい取り組みにも注力していかなくてはなりません。労務の2名が、社員にとって有益な労務・法務関係のサービスを提供できるような状況を作るには、今よりも時間が必要です。

これらの課題から、単純作業を一気に省略させてくれるSmartHRがとてもいいツールだと思いました。

SmartHR 宮下:御社のようないわゆる老舗の企業さまは、DXに着手したい想いがありながらも、その一歩が踏み出せないお悩みを抱えています。御社の場合は、どのようなことから着手されましたか?

原田さん:大抵の企業では現状のままでも業務を回せるでしょう。そんな中でも新しいことに踏み出す必要性があるかどうかが議論のスタートになると思います。最初に行ったのは、効果の見える化でした。業務にかかっている工数と、紙代などの諸経費を洗い出し、サービス導入の費用感と比較したんです。

あわせて、システム導入でやりたいこと、効率化したい箇所を明確にしていきました。それは類似サービスとの比較にも役立ちましたね。

導入の第一歩

導入の決め手

充実した機能と使いやすさが魅力

SmartHR 宮下:SmartHRを採択した決め手や重要視したポイントを教えてください。

原田さん:幅広い機能がワンストップで利用できるところです。類似サービスには付帯費用が多くかかったり、複雑なカスタマイズが必要なものがありました。SmartHRさんは、労務と従業員のやりとりがシンプルなところもいいなと思いました。

サポートコンテンツやチャットサポートで初期の準備を乗り越えた

SmartHR 宮下:ありがとうございます。導入後はいかがでしたか? スムーズに進みましたか?

荒牧さん:初めて導入するシステムでわからないことばかりでしたが、SmartHRさんからご提供いただいたサポート資料を活用して、なんとか運用できました。

SmartHR 宮下:はじめは難しく感じる点もあったのですね。SmartHRはユーザーとなる従業員側や、設定する労務側に向けて、それぞれサポート資料をご用意しています。チャットサポートはご利用されましたか?

荒牧さん:たびたびチャットサポートを利用いたしました。返答のスピードは迅速で、わかるまで何度もお付き合いくださいましたので、本当に感謝しています。

事前に、導入に必要な設定項目やスケジュールが記載されたチェックリストもいただきましたので、それに沿って進めました。定期的にウェブでのミーティングの時間も設けていただき、そこで細かな設定などを直接伺えたため、大変助かりました。

従業員の不安に寄り添いながら導入を推進

SmartHR 宮下:SmartHRの導入にネガティブな反応はありましたか?

原田さん:やり方が変わることに対して、「今まで通りの方法でやりたい」という方はいらっしゃいますね。「給与明細の印刷にそんなに時間はかかりません。紙のままでも問題なくできます」との反応もありました。

しかし、導入したら印刷の時間がゼロになったわけです。改めて感想を聞くと、「業務がかなり改善された」とのことでした。

荒牧さん:スマホの操作が不得意な方がどう感じるか、はじめは不安に思っていました。60歳以上の社員が約50名ほど在籍しているため、不安に思った方もいらっしゃると思います。

そこで、導入前の各部署への事前説明会を開催するほか、個別でのご質問にも応じることを事前に告知しました。ちょっとした積み重ねですが、従業員の方に寄り添うことで、少しずつ慣れていき、不安の声も少なくなったように感じます。

導入後の効果

年末調整の効率化と、副次的なコミュニケーション上のメリット

SmartHR 宮下:昨年末には、初めてSmartHRでの年末調整を実施されましたね。実際に運用した感想を聞かせてください。

荒牧さん:若い社員は理解力も早く、入力に手間取ることもありませんでした。中高年者からは、「スマホの画面が小さいので文字が見えにくい」とか、「どこに何を入力すればいいのかわからない」という声がやはり多くあがりましたね。

とくに生命保険料を入力する箇所でとまどった方が多かったようです。今年はその情報も登録されている状態ですので、2回目以降は効率化できるのではないかと思います。

SmartHR 宮下:労務担当の皆さんにとって、年末調整業務の負荷に変化はありましたか?

荒牧さん:はい。弊社は工場と37の店舗があり、社員も約230名程度在籍しています。紙を使用していた時は、店舗や部署ごとに人数分の枚数を振り分けて発送する作業に、大体半日ほどの時間を要しておりました。SmartHRを活用したことでこのような手間も減りましたし、回収の手間や保管場所の確保に悩まされることもなくなりました。

導入後の効果

SmartHR 宮下:年末調整以外で効率化できた業務はありますか?

荒牧さん:雇用保険や社会保険の電子申請機能も効率化されました。導入前は遠方の役所まで足を運んで提出する必要がありましたので、半日ほど時間がかかっていました。SmartHRを導入して電子申請に切り替えたことで移動時間を減らせたのは、大きな効果です。

また、紙で配布していた給与明細もウェブ化しましたので、時間短縮や経費の削減ができました。

SmartHR 宮下:効率化してできた時間で、何か取り組まれていることはありますか?

荒牧さん:今は勤怠管理システムの導入を進めています。SmartHRで初めてクラウドサービスを導入しましたが、その経験をもとに、他のシステム導入にも取り組んでいきたいと考えています。

SmartHRには本当に便利で、優れた機能がたくさんあるので、労務担当者として理解を深め、社員の労力を軽減していきたいですね。

原田さん:実は、SmartHR導入の過程で、世代間ギャップの解消につながるシーンが見られました。役職を越えて、使い方を共有したり手伝ってあげたりしたことで、それまでコミュニケーションが取りにくかった高齢者と若い方たちの間に「ありがとう」という言葉が生まれたんです。

SmartHR 宮下:それは素敵なお話ですね。

原田さん:また、労務領域は、法令が変わるたびに、労基署や社会保険労務士の先生から情報をキャッチアップしなくてはなりません。もちろん労務担当者は把握していますが、社員一人ひとりにも理解してほしいという想いがあります。

それは、人生を有利に動かすことにつながると思うんです。生活環境や人生のフェーズが変わった時に、社員が制度を積極的に利用できる会社にしたいですね。そのための効率化ができるような土台として、SmartHRをこれからも活用したいと思います。

質疑応答

Q:キーパーソンや従業員への説明会の頻度は?

SmartHR 宮下:ここからは質疑応答のお時間となります。「キーパーソンや従業員の方への説明会は、どのくらいの頻度で実施されていたのでしょうか?」

荒牧さん:当社では昨年(2021年)の7月1日から本格的に導入しましたので、その前の5月に「SmartHRを導入しますよ」と全社員に向けて案内しました。

店舗にはメール、事務所では回覧の書面を、工場内には掲示を出す形でした。6月の上旬には、初期登録用のマニュアルを配布し、同時期に店舗責任者が集まる定例会議があったので、その場でも説明会を実施しています。

Q:サービス選定・比較の作業は誰が進めましたか?そのために必要な業務知識はおもちでしたか?

SmartHR 宮下:ありがとうございます。次のご質問です。「サービス選定・比較の作業は社内のどなたが行ったのでしょうか? そのために必要な業務知識などはお持ちだったのでしょうか? 総務のお2人は、通常業務で手一杯の説明でしたので、この選定・比較作業には関われないのではないかなと想像をしています」とのことです。

原田さん:たしかに手一杯の状態ではありましたが、必ず業務効率と作業効率化ができると思いましたので、労務の2人にお願いしました。私も一緒に資料を揃えたり、経理にも費用の算出で協力してもらいました。やはり未来が見えていると、大変な状況でも乗り越えられるものです。

SmartHR 宮下:先の見えない闇雲の作業の中で無理をお願いするのは、原田さんのお立場的にも難しいところだったと思います。ゴールを共有することで、経理、総務、労務の皆さんで協力し合えたのかもしれませんね。

原田さん:まさにそうですね。

Q:DX推進に躊躇する中小企業の経営者さまに対して、皆さんから後押しするとしたらどのような一言をかけますか?

SmartHR 宮下:つぎに、とても面白い質問です。「システム導入、DX推進に躊躇する中小企業の経営者さまに対して、皆さんから後押しする一言をかけるとしたならば、どういったお話をされますか?」

原田さん:これは非常に難しいですね。経営者の皆さまには、それぞれのお考えと方針がありますが、単純作業の無意味さは、共感してもらえる1つのポイントだと思います。ストレートな言い方かもしれませんが、せっかく生きているなら、なるべく人が豊かになるところに多く時間を費やしたいものですよね。

便利な世の中になっているため、単純作業は技術を活用しサクッと終わらせて、余った時間を人の豊かさのために使いたい。もしくは充実感を得られる仕事に振り分けたいと思うんです。DXはそれを成し遂げるための大事なツールになると考えています。

当然、情報漏洩などのリスクはありますが、そこに従事する人たち一人ひとりの豊かな生活を大切にしたいんです。

SmartHR 宮下:なるほど。機械でできるところは機械で、人がやらないといけないところは人がやる、ということですね。

Q:弊社はアナログな会社で1人1台のPCがありません。その場合、どのような対応ができますか?

SmartHR 宮下:続いて運用周りのご質問です。「弊社はアナログな会社で1人1台のPCがありません。その場合、どのような対応ができますか?」

荒牧さん:弊社も1人ずつパソコンを保有している部署と、そうでない部署があります。多くは個人のスマホを使ってもらいますが、スマホを持たない方は店舗に1つずつ配布しているタブレットをお使いいただくか、本人とやりとりをしながら私たちが対応するようにしています。

SmartHR 宮下:他のユーザーさまの傾向を補足的にお伝えすると、店舗ごとに貸与している共有PCを利用されているケースが多いです。ただ、個人アカウントからログアウトすることを忘れないよう注意する必要があり、運用面での工夫は必要ですね。

Q:従業員にSmartHRの操作方法を伝えるため、資料の作成はどうしましたか?

SmartHR 宮下:続いてのご質問です。「従業員にSmartHRを教えるにあたって、資料の作成はどうされましたか?」

荒牧さん:SmartHRさんからいただいた導入マニュアルを、必要な部分だけ配布しました。イラストと文字で、わかりやすく手順が説明されています。

ほかには、スライドを見せながら説明をすることもありました。「こういうメールが届きますから、届いたらここを開いて、合意をしてください」と細かなところまでわかりやすく説明いただいているので、大いに活用しています。

SmartHR 宮下:私から追加の質問なのですが、資料を共有しても、必ず全員が目を通すとは限りません。見てもらえるようにするための工夫はされましたか?

荒牧さん:目を留めてもらえるような工夫をしました。店舗にはメールやFAXで伝達し、事務所では回覧資料として、工場内は掲示、といったように、見られやすい形で告知しました。見てわからないことがあった場合は、お問い合わせいただくようにしました。

SmartHR 宮下:事前に関係者への情報共有をしながら、わかりやすく目につくところに掲示されたのですね。

Q:SmartHRのシステム環境の運用や管理、メンテナンスが必要になるかと思います。新たに発生した工数について、お悩みはありますか?

SmartHR 宮下:続いてのご質問です。「SmartHRを導入して工数削減ができた一方で、SmartHRのシステム環境の運用や管理、メンテナンスが必要になるかと思います。新たに発生した工数について、お悩みはありますか?」

原田さん:導入して1年未満ですので、システム環境の大きな変化はまだ経験していません。単純な運用管理やメンテナンスなら、当然あります。そもそも不慣れですので、模索しながらやってきた状況です。

ただ、これまでの年末調整でやってきたような、1枚ずつの確認作業や修正作業に比べれば、圧倒的に効率化されています。

荒牧さん:契約書などは、以前は1人当たり2枚作成して、ご本人に送って、印鑑をもらって、またこちらに2枚戻してもらって、会社の代表者の印鑑を押して、1枚は本人宛てにまたお戻しする……というやりとりでした。それを、新しい社員が入るたびに繰り返していたんです。SmartHRを入れてからは、そのような手間や時間がかなり削減できました。

一方で、完全なペーパーレスにはまだ至っていません。SmartHRを使いこなせば実現できるのかもしれませんが、今は苦労しながら進めている最中ですね。ただ、手間も時間も短縮されましたので、苦労する部分がありながらも、従業員の皆さんの負担を減らせるように取り組んでいきたいですね。

SmartHR 宮下:ありがとうございます。運用が軌道に乗れば、工数削減もコストの省略も実現しますが、最初の設定などでは工数、かかるのもまた事実ですね。

ほかにもご質問は頂いていますが、そろそろお時間となりました。改めまして、原田さん、荒牧さん、ご参加ありがとうございます。本日のセミナーが、皆さまの今後のシステムの導入や、業務の効率化の一歩となれば幸いです。お時間ありがとうございました。

【執筆・まえかわ ゆうか】
エディター / ブランディングプランナー / カレー屋さん。アパレルからビジネス分野まで幅広い分野でクリエイションを提供する。専門分野は食。

元田有紀

SmartHR ガイド 編集部員。ファッションアプリ、子育て・働く女性向けメディアの運営・編集担当、HR系SaaSのマーケティング担当を経て、2020年SmartHRに入社。マーケティンググループにてさまざまなコンテンツ制作に関わる。ダンスが好きな関西人。
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