プロセス大公開!「形骸化を防ぐ」従業員サーベイの運用【セミナーレポート】

2022.12.20 ライター:SmartHRガイド編集部

近年、従業員サーベイを導入する企業が増えています。しかし、「なんとなく同じ質問を続けてしまう」「サーベイの結果を組織改善に生かせていない」という状況の企業も少なくありません。

2022年10月20日に行われた「『形骸化を防ぐ』従業員サーベイの運用 人事担当者が語る、経営者・社員を巻き込むPDCAサイクルの回し方 」と題したセミナーでは、従業員サーベイの企画・運用に携わるSmartHR社の担当者が登壇し、運用事例を交えながら、従業員サーベイを形骸化せず、組織の課題解決へつなげるポイントをお話ししました。本セミナーのレポートをお届けします。

【スピーカー】

六本木 啓央

株式会社SmartHR 人事グループ

新卒でシンクタンクに入社。システムエンジニアを経て、人事として人事制度の企画・運用、採用、研修および人事データの利活用を推進するための企画・実装・運用に従事。2022年1月に組織人事担当として株式会社SmartHRに入社し、従業員サーベイ企画・運用、人事施策の企画・運用を通じた組織課題の解決に幅広く携わる。

 

埜村 勇斗

株式会社SmartHR プロダクトマーケティングマネージャー

大学院卒業後、デロイトトーマツグループやHR系のコンサルティング会社にて組織人事コンサルティングに従事、その後HR系スタートアップの経営に参画。2020年にSmartHRに入社し、主に人事データや人材の活用に関する機能の企画や仕組みづくりを行う。

 

【司会】

小西 圭介

株式会社SmartHR マーケティンググループ

 

SmartHR社におけるサーベイ活用

六本木:はじめに、SmartHRでのサーベイ活用の全体像からご紹介します。現在、弊社の社員数は約700名で、毎月10名から20名ぐらいの方が入社しています。私たち人事グループは、会社や組織が成長していくなかで生じる変化を捉えるために、継続したサーベイを実施しています。

SmartHRの組織は、セクション、グループ、ユニットの3階層で構成されています。ユニットごとにチーフが存在し、ユニットをまとめたグループに、グループや複数のユニットを管轄するマネージャーがいます。

六本木:今回、運用事例としてお話するのは、この組織に焦点をあてた組織サーベイです。組織サーベイは、当月入社以外の正社員を対象に毎月1回の頻度で実施し、マネジメントの向上と個別ケアを目的に、短期と長期目線の両方から組織と個人をカバーしています。

回答の公開範囲としては、人事グループの一部メンバーはバイネーム(個人名あり)の回答を参照できるようにしています。一方、マネージャーにはバイネームの結果は公開せず、例えばユニット別などで集計した結果のみを公開しています。また、会社全体の結果については、全社員から見える場所に公開しています。

回答期間は1週間ほどで、回答率90%前後で推移しています。

質問は、レギュラー設問、準レギュラー設問、不定期設問の3つから構成されています。

(運用の全体像)

形骸化を防ぐ従業員サーベイ運用のポイント

サーベイは健康診断、改善の運用がカギ

六本木:サーベイでわかることは、組織や個人のざっくりとした状態です。ざっくりであっても、とても価値があります。人事には、人にまつわるさまざまな声が集まりますよね。サーベイを行うと、たとえば「この上司を信頼している部下の割合はチームの30%」というように、組織の声が客観的に可視化されます。組織の状態をデータで語れるようになるのは、サーベイの大きなメリットです。

また、サーベイは健康診断にも似ています。大まかな状態を見て気になる点があれば、その背景をマネージャーや個人に確認し、不満や課題の解像度を上げる取り組みへつなげられます。健康診断をして健康になるわけではないように、サーベイの実施だけで組織は改善しません。PDCAサイクルを回す、サーベイ運用が重要です。

埜村:今回、サーベイ導入に関する質問をいただいています。まずは、「サーベイ導入にあたり、経営陣を含めた社内からの理解が必要です。SmartHRでは、どのようにサーベイの目的や位置づけを提案していますか」です。

六本木:SmartHRでは、経営陣の見える場で、サーベイの結果をもとにしたマネジメントへのフィードバックを実施しています。あわせて、マネージャーが集まる場で、サーベイの結果を報告し、現場の課題感とのすり合わせをしています。

埜村:サーベイ導入の検討時、経営陣からは「サーベイの具体的なメリットが知りたい」と聞かれやすいです。サーベイの中には、エンゲージメントサーベイなど、事業にインパクトを与えられるものもあります。それらによって「事業課題を解決できる」という提案をすると、経営陣も納得感をもって意思決定できると思います。

サーベイ運用を設計するときのポイント

六本木:続いては、サーベイ運用を設計するときのポイントです。大きく3つあります。

会社の目指す方向性が設問に現れているか

六本木:まず1つ目、「会社の目指す方向性が設問に現れているか」。これは、レギュラー設問に会社のバリューを反映するようにしています。たとえば、組織サーベイの設問に「情報はオープンにされている」「会社として意思決定のスピードは早い」などの内容が含まれていますが、これはSmartHRのバリューを反映しており、設問を通して「実現できているか」を確認しています。

これには、バリューの浸透や意識を社員に促すような副次的効果もあります。また、マネジメント上で悩みになりやすいところを、設問のエッセンスに入れています。

埜村:不定期の設問では、どのような設計をしていますか。

六本木:何に関して確認をしたいかの観点から、普段の設問を深掘りするような設計が多いです。過去のサーベイから課題感が見えてきても、その背景や理由はわかりづらいんです。そのため、次のサーベイでその内容に関するフリーコメントの設問や理由として考えられる選択肢を提示するようにしています。

埜村:不定期の設問は、回答者から見て「なぜこれを聞くんだろう?」と感じやすいかもしれません。どのようなフォローが必要でしょうか。

六本木:弊社の場合、月次のサーベイのあとに行う全社向けの結果報告で、不定期の設問設定の背景や意図を伝えています

 

回答結果をどうアクションにつなげるかが見えているか

六本木:続いて、2つ目のポイントです。「回答結果をどうアクションにつなげるかが見えているか」では、まず選択肢のつくり方が大切です。

SmartHRでは、組織サーベイの設問の回答を、「Yes」「Yesとは言い切れない」「No」の3択にしています。選択肢が多いと、回答からのアクションが判断しづらいんですね。「Yes」はいい感じ、「Yesと言い切れない」はちょっとモヤモヤがある、「No」は強いアラートと捉えていて、従業員がどんな感覚で回答しているかがわかりやすいです。

埜村:私自身も初めて組織サーベイを回答するとき、この3択は自分の気持ちを表現しやすくて、工夫されているなと感じました。ちなみにSmartHRでは、この3つの回答の割合はどのくらいなのでしょうか。

六本木:たとえば、「会社の雰囲気が合っている」のような感覚的な内容の設問では、「Yes」がほとんど、「Yesとは言い切れない」が少数、「No」がごく少数です。「No」がかなり少数のため、アクションをとる対象は絞り込みやすいです。

埜村:サーベイのあとに実施しているアクションについて教えてください。

六本木:先ほどお話ししたように、経営陣、マネージャー、人事が集まる場で全社傾向を共有して議論するほか、全社集会でも結果を報告しています。回答結果が気になる方がいるときは、人事のメンバーが個別のケアにあたる場合もあります。また、マネージャーへのサーベイフィードバックは、普段マネージャーが感じている感覚的な組織の課題と、サーベイにしか現れない回答を掛け合わせる場として運用しています。

埜村:では、ここまでのお話に関する質問に回答していきます。「サーベイには、個人への報復やネガティブな内容が集まるのではないかという不安や、経営陣がパンドラの箱を開けてしまうのではという心配があり、積極的になれない会社もあります。SmartHRではどのように考えていますか」。

六本木:なるべく、人ではなく「こと」に目が向くようにしたいと考えています。まず、マネージャーにはバイネームの回答が見えません。「誰々がこう言っている」ではなく、「ユニットの状況が数字としてこのように現れている」と伝えています。また、ネガティブな意見だけを集めるのではなく、「組織をこんなふうにしたい」という未来志向の意見も一緒に報告するとよいですね。

埜村:私の経験則から、フリーコメントはネガティブな意見が集まりやすいと感じています。サーベイ運用開始当初は固定の選択式の設問で進め、フリーコメントは回答者がサーベイに慣れたころに加える方法がおすすめです。

続いての質問です。「個人名の有無でサーベイを行うメリット、デメリットを教えてください」。

六本木:匿名だからこそ答えられるケースもありますが、個人名があるとアクションにつなげやすいんですよね。現在のSmartHRのサーベイはすべて匿名回答ですが、今後は設問別にバイネームにするかどうかを切り分ける必要性も感じてはいます。

埜村:「回答する意欲を促すため、サーベイの前にはどんなアナウンスをしていますか」はいかがでしょう。

六本木:SmartHRの従業員サーベイでは、回答前に説明欄が表示されます。その欄に「回答はこのメンバーに共有されています」「この回答を元にこのようなアクションを取っています」という説明を表示しています。

 

従業員の体験が見えているか

六本木:それでは、3つ目のポイント「従業員の体験が見えているか」です。マネジメント向上のような観点では、人事担当者が全社集会で説明をすることがありますし、気になるスコアがあるときは、マネージャーからメンバーへ直接話をするきっかけを作ることもあります。

個別ケアでは、従業員の回答傾向に一定の基準を設定し、その基準に触れたタイミングで声をかけるようにしています。また未回答が続く場合は、本人と人事の間だけで確認をしています。

埜村:回答率を高めるための、特別な飛び道具はありません。サーベイの目的や、結果から改善につなげた内容を社内に伝えていくことが大切ですね。

 

サーベイ運用で感じる課題

六本木:ここまで、SmartHRで行っているサーベイの運用ポイントをお伝えしてきました。同時に課題も見えていまして、たとえば実施の頻度があります。改善サイクルを回す上で1か月間は短いとも感じており、月1回の実施が最適かどうかは考えていきたいです。

そして、設問のつくり方も課題です。今は15問ですが、設問のアップデートと年に1回の大規模な見直しに取り組んでいます。結果の共有の仕組みにも改善の余地があります。サーベイを通して具体的な組織課題を伝えて、従業員の皆さんの「答えようかな」という気持ちを育むような工夫を考えて運用したいです。

 

質疑応答

Q:月次でサーベイを行って大きな変化はあるか?月次で行うメリットは?

小西:残りの時間は、いただいた質問に答えていきます。まずは、「月次で組織サーベイをして大きな変化はありますか?月次で実施するメリットは何でしょうか」です。

六本木:現在SmartHRには、毎月10名から20名くらい入社しています。ですから、1か月ごとのサーベイは「前月入社した方はどう思っているのかな?」を確認できるメリットがありますね。ただ、組織全体の傾向が1か月で大きく変化することは少ないです。

Q:サーベイの失敗例、誤った活用例

小西:続いて、「サーベイ活用の失敗例や誤った活用法を教えてください」はいかがでしょう。

六本木:SmartHRで、失敗だなと感じたことはあまりありません。これまでの経験から挙げるとすれば、マネージャーとメンバーのやりとりで「このスコアが下がっているのは、なぜでしょうか?」といった直接的な問いかけは、課題解決に結びつきにくいため、聞き方の工夫が必要です。

Q:「サーベイで何が変わったかわからない」と言われてしまう。価値を理解してもらうには?

小西:「社員にサーベイの価値を理解してもらうための良い方法はありますか?」について、お願いします。

六本木:価値を十分に届けられていないという点では、同じような悩みを感じますね。

埜村:サーベイの運用支援をしていた経験からお答えしますと、サーベイは人事や経営層だけではじめるケースが多いです。運用に慣れてきたら、部署単位で行い、分析や施策を現場に寄せていくと、改善の効果が現れますし、社員視点でも変化の実感が出てくると思います。

Q:「サーベイが多くてうっとうしい」と感じている従業員への対応

小西:「サーベイばかりで、ちょっとうっとうしいという感じている社員には、どう対応すると良いか?」はいかがでしょうか。

六本木:おそらく背景に、サーベイが何に使われているかわからないという体験が積み重なっていると思います。価値の発信と一緒に、実際にアンケートの数が多くはないか、棚卸しの機会をつくってみてもよいかもしれません。

Q:グループやユニットでのアクションはどのようなものがある?

小西:最後の質問は、「グループやユニットでのアクションはどのようなものがありますか?」です。

六本木:たとえば「グループの意思決定はスピーディか?」の設問にNoが多ければ、「会議に出る人数を少なくする分、情報共有の仕組みを工夫する」ようなアクションが考えられます。仕事の進め方に直結する設問は、アクションに落とし込みやすいです。

 

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