SmartHR 副島が語る「ペーパーレス年末調整」誕生秘話。パワーアップした2018年版の注目ポイントは?

2018.10.01 ライター:渡邊順子

SmartHRの主要機能のひとつ、「ペーパーレス年末調整」。

この機能により、年末調整が従来の書類に手書きで行うアナログな方法から、スマートフォンやPCで質問にサクサク回答していく簡単な方法に変わり、年末調整の大幅な効率化が実現可能になりました。

従業員は、年末調整の書類にある小さい欄への記入から解放され、わかりにくい専門用語に戸惑うこともなくなります。

この「ペーパーレス年末調整」は、人事労務の経験を積んできたSmartHRのプロダクトマネージャー・副島が、SmartHRが誕生する前から構想してきた結果、2016年秋に実現し、毎年進化を遂げている機能です。

今回は「ペーパーレス年末調整」機能初公開までの道のりと、公開から3年目を迎えてバージョンアップした2018年版のポイントを副島にインタビューしました。

17年の人事労務経験から生まれた「Web年末調整構想」

―― 従業員でさえ書類を渡されると憂鬱になってしまう年末調整ですが、人事労務の担当者の皆さんにとっては、どれくらい大変なんでしょうか?

年末調整は、書類の印刷・配布・回収・中身のチェック・情報のデータ化、そこからやっと税額の調整のための計算。店舗や支店をもつ企業の場合はFAXや郵送の時間やコストもかかってきます。この作業の間にも従業員から書き方の質問を受けたり、内容確認の連絡をしたりと、とても手間のかかる作業です。

さらに今年度から、これまで1枚だった「控除申告書(給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書)」が2枚(※)に分離されるほか、従業員が自身の収入額から給与所得額を計算しないと配偶者控除額が算出できないという変更があるので、例年より大変になります。

人事労務担当の皆さんにとって一番大変なのは、これらの作業を限られた日数で完了させなければいけないことなんです。

(※ 給与所得者の保険料控除申告書 , 給与所得者の配偶者控除等申告書)

SmartHR プロダクトマネージャー 副島 智子

―― 人事労務の皆さんが年末調整の作業で苦労されている一方で、書類の書き方や年末調整の必要性など、従業員の皆さんの理解度はどれくらいなのでしょうか?

人事労務担当者として年末調整を実施していた頃は、毎年書き方のマニュアルや記入例を作成してきましたが、実際にどこまで理解してくれているかどうかは、皆さんそれぞれです。

書類の中には、「勤労学生」や「寡婦(かふ)」など難しい用語がたくさん並んでいて、自分がそれらに該当するのかどうかがわからない人も多くいます。

いろんな課題があるんですが、そもそも「わからないこと」に対応するのってとても難しいと思うんです。なので、「何のためにやっているのか」を積極的に伝えていました。

給与から天引きされる所得税は、本来納めるべき額より多めに払っている場合が多く、「その過不足の精算を年度末にやるんだよ。多く払っていたらお金が戻ってくる。だから書類出したほうがお得だよ。」を伝えると、書類提出に対するモチベーションが上がって、アルバイトが多い飲食会社の場合でも提出率はかなりの高さでした。

一方で、「書類にある言葉の意味がわからなくても正しく申告ができるようにしたい」「誤った申告をして損をしてほしくない」という思いから、Webを使ってもっと簡単にできないものか、業務をこなしながら考えていました。

そんな矢先、2014年の秋に電子政府「e-Gov」がAPIを公開したというニュースを耳にしました。こういった手続は今後Webで完結できるのではと思ったんです。

 

―― いわば「Web年末調整構想」ですね。

そういった人事労務業務をもっと効率化できるサービスを自分でやりたいなあと思っていたときに、「SmartHRがTechCrunch TOKYO 2015で優勝した」という記事を見て、はじめてKUFU(旧社名)の存在を知りました。

SmartHRなら自分の構想を実現できる!」と確信し、入社を決意したんです。

SmartHRでカタチになった「ペーパーレス年末調整」

―― SmartHRに入社してから、どのような経緯でWeb年末調整構想をカタチにしていったのでしょうか?

SmartHR(旧KUFU)には、もともとカスタマーサポートとバックオフィス業務の担当者として入社しました。ユーザーからのお問い合わせにチャットでお応えをしていく中で、「もっとこうなっていたらいいのに」「これだと実際の業務フローに乗らないなあ」と感じる部分が出てきたんです。

社内でいろいろと改善提案をしていたところ、プロダクトマネージャーに就任することになりました。

年末調整機能も作りたいと思い、2016年の7月頃から、自分の頭の中にあった、アンケートに回答していくと情報が蓄積されて書類が自動で出来上がる「ペーパーレス年末調整」の構想を、Prottに落とし込みました。

 

―― 年末調整の業務フローを知らないエンジニアメンバーの反応はいかがでしたか?

今までSmartHRにはなかったユーザー体験になるものでしたし、世の中にもこういった考えによって書類が作成されるプロダクトはありませんでした。

比較対象もなかったので、まずは社内に受け入れられるのかがとても心配だったんですが、エンジニアに「こういう設計でやりたい!」と提案したところ、「やろう!」とすぐに受け入れてもらえました。

エンジニアも従業員として年末調整の書類を書いた経験がありますから、労務担当者の業務フローは知らなくても、従業員側の大変さは自分ごととしてイメージできたみたいで、そこから一気に開発が進みました。

ペーパーレス年末調整 開発チームMTGの様子

 

―― 公開後にかなり反響がありましたが、ユーザーさんの声を聞いていかがしたか?

「簡単すぎて感動した」
「小さい文字を書くことから開放された」

と、たくさんの感想をいただいて、すごく嬉しかったですね。

公開前に一部のユーザー企業の労務担当者さまには試していただいたんですが、実際に画面上で操作するのは従業員の方なので、公開するまでとても不安でした。

でもたくさんの良いフィードバックをいただけたので「昔からの夢が実現できた! 年末調整の煩わしさが払拭できた!!」と実感できた瞬間でした。

進化を続ける「ペーパーレス年末調整」。2018年版の注目ポイントは?

―― ペーパーレス年末調整の仕様を設計する際に気をつけていることはありますか?

給与所得者の扶養控除等申告書の裏面にはびっしり説明書きがあるんですが、それを1回読んだだけでは理解することが難しい内容が多くあります。

例えば「寡婦」の条件や「寡婦」と「特別の寡婦」の違いがスラスラと説明できる人は少ないと思います。そういった要件を噛み砕いて、従業員が「はい・いいえ」で回答ができるような情報の整理に注力しています。

また、今年はなんといっても追加された「配偶者控除等申告書」ですね。この申告書は従業員本人の所得額を記載しないといけなくなりました。これってすごく難しいんですよ(苦笑)。給与収入額から所得控除額を算出して「所得額」を記入するだけでも難しいんですが、それ以外にちょっと罠があってですね……。

そもそも年末調整書類の提出期限のあとに、残業手当やインセンティブ、賞与の支給があると、自身の年収額がわからないという状況になってしまうんです。

当初は従業員本人の年収額を入力してもらって、自動計算をSmartHRで行って所得額を算出するものを予定していたんですが、「収入額を聞いてもわからなくて入力できないかも」という課題とあらためて向き合うことにしました。

調査したところ、自分の年収額が年末調整のタイミングではわからないと答えた人がとても多かったんです。では、「年収が1,120万円を超えるかどうかは判断つきますか?」と聞いたところ、ほとんどの人が「わかる」と回答したんです。

具体的な年収額はわからないけど1,120万円を超えるかどうかはわかる。ここがポイントだなと思い、収入額を入力してもらうのではなく、配偶者控除等申告書の「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」の判定区分から選んでもらうことにしました。いくつかのユーザーさまにもこの提案をしたところ、みなさん賛成してくださったんです。

今回の配偶者控除の改正は、実務フローからすると従業員による申告はちょっと無理があるなあと感じており、こういった「折衷案」を考え抜いてプロダクトに反映していくことに注力しています。

 

▼「年末調整 2018版」アップデート

SmartHRの入力画面と添付書類のアップロード画面を並べて確認できます。

2018年版の
カイゼンポイントを見る

 

―― 最後にこれから年末調整に挑む人事労務担当者の皆さんへ、アドバイスやメッセージをお願いします!

通常業務に加えて、全従業員に対して書類提出をしてもらう必要があるというこのイベント。毎年本当に大変だと思います。

SmartHRのような書類作成と提出を効率化するツールを使うことによって大幅に作業時間を削減できるので、もしまだ紙だけの運用をされている方はぜひ導入をご検討いただければ幸いです。

とはいえ新しいツールの導入って精神的なハードルがある人も多いと思います。私も昔はそうでした(苦笑)。でもツールを導入することで、見えてくる課題もあると思います。実は人事情報がきちんと整備されていないことがわかったり、人事データの管理が属人化していたり。そういったいったことの解消のきっかけになるかもしれません。

次回予告

今回はSmartHRの「ペーパーレス年末調整」誕生秘話と今年のカイゼンポイントについて、副島の想いとともにお届けしました。

ペーパーレス年末調整によって、隣の部署から助っ人まで要していた膨大な作業が、残業なしで完了したユーザーさんもいらっしゃいます。

労務の現場で17年、年末調整の煩雑さを感じていた副島の経験から生まれたこの機能は、従業員にも負担なく、簡単に正しく申告できる年末調整を実現します。税制改正の対応と、大量の情報をチェックする機能をポイントにバージョンアップされた2018年版のペーパーレス年末調整で皆さまの業務効率化を後押ししてまいります。

次回は「経営者視点の労務変革」についてお届けします。お楽しみにお待ち下さい!

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渡邊順子

株式会社SmartHR 広報。経済産業省で約7年半、秘書業務や政策部門などの経験を通じて様々な企業やサービスの面白さを知る。その後、アパレルメーカーの営業、グリーを経てスタートアップ企業に飛び込み、広報部門を立ち上げた経験を活かしてSmartHRに入社。
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