社労士が予想! 2018年注目の「人事労務トレンドワード」10選


明けましておめでとうございます。特定社会保険労務士の榊 裕葵です。今年もよろしくお願いいたします。

2017年は「働き方改革元年」と言われるほど、働き方改革にまつわる様々な人事課題や「テレワーク」「プレミアムフライデー」などの施策、その他各種サービスが話題になりました。

さて、2018年はどのような流れになるでしょうか?

年始ということで、これまでの文脈も踏まえ、2018年注目の人事労務トレンドワード10選を予想したいと思います。

(1)「無期転換ルール」の本格運用開始

2013年の労働契約法の改正で、「有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときに、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換される」という、無期転換ルールが制定されましたが、いよいよ2018年4月に無期転換ルールが策定されて丸5年を迎えます。

多くの契約社員が「無期転換権」を取得すると考えられますので、契約社員から無期転換された社員をどのように処遇するか、未対応の会社はルール作りが急がれます。

(2)「36協定未締結事業所」への指導強化

昨年、厚生労働省は、2018年度から、民間事業者を活用した相談指導に乗り出す方針を決めました(*1)。

労働基準監督官だけでは個別企業の指導に手が回り切らないところ、社会保険労務士団体や労働基準監督官OBなどを活用して、特に36協定未締結の事業所に対する指導を強化していくということです。

自社が36協定未締結であったり、過去に締結したが更新がされていない事業所は、指導を受ける前に自主的に適正な形で36協定を締結すべきでしょう。

(3)「改正職業安定法」による適正な求人募集のための規制強化

2018年1月1日より、改正職業安定法に関して、次の4項目が施行されます(*2)。

  1. 募集から労働契約締結までの間に労働条件に変更があった場合は、速やかに変更内容を明示すること
  2. 上記の労働条件変更の明示は、適切な方法(=書面)により行うこと
  3. 求人の際には「試用期間の有無」「固定残業代の金額および時間数等」「募集者の氏名又は名称」「派遣労働者として雇用する場合はその旨」を求人内容に明示すること
  4. 労働条件の明示にあたっては、職業安定法に基づく指針等を理解し、これに従うこと

2018年に求人を出す場合は、上記の点に気を付けて採用活動を行って下さい。

(4)「障害者雇用」の一層の促進

2018年4月1日より、障害者の法定雇用率が引き上げになります。

2018年3月31日までは、民間企業における障害者の法定雇用率は2.0%でした。すなわち、従業員数50人以上の事業主に障害者の方の雇用義務があったということです。

これが、2018年4月1日からは、民間企業における障害者の法定雇用率が2.2%に引き上げとなります。したがって、従業員数45.5人以上の事業主から障害者の雇用義務が生じるということになります。

2021年までに民間企業の障害者の法定雇用率は、さらに0.1%引き上げられる予定ですので、事業主の方には障害者雇用に対する理解や準備が求められます。

(5)「確定拠出年金」の拠出方法の緩和で柔軟な運用が可能に

従来、確定拠出年金は、企業型にせよ個人型にせよ、月単位で拠出限度額の範囲で拠出金を出して積み立て運用する方法に限られていましたが、2018年1月1日より法改正で年単位の拠出も可能となりました。

すなわち、従来の毎月積み立てる方法を継続することも可能ですし、毎月の拠出はせずにボーナス時に半年分や1年分をまとめて拠出したり、相場の流れを読んで自分が有利になると思ったタイミングでまとめて拠出するようなことも可能になるわけです。

確定拠出年金は、自助努力・自己責任で老後に備えることを目的として2001年に始まった年金制度ですが、今回の緩和で運用の選択肢は増えたものの、それと表裏一体として、60歳や65歳時点の運用成果においても、上手く運用できた人とそうではなかった人で、差が出るのではないかと思われます。

確定拠出年金を採用する会社や、個人型で加入する人も増えてきていますので、2018年は、ますます資産運用や金融に対する勉強が必要な年になっていくでしょう。

(6)「副業解禁」の時代へ

2017年度中から「副業解禁」は注目を集めていたキーワードですが、2018年はさらに注目を集めるキーワードになるでしょう。

厚生労働省が民間企業への指針として示している「モデル就業規則」は、現在は副業を制限する内容になっていますが、厚生労働省は2017年度中(すなわち2018年3月末)に副業を容認する内容に改訂する方針を明らかにしていますので、実際に改定が行われたら、副業を解禁する潮流が名実ともに加速することになるかもしれません(*3)。

また、2017年は大手企業においても副業を容認する動きが多数あり、2018年にはこの動きが中小企業にも広まっていくのではないでしょうか。

(7)「リカレント教育」が注目される

「リカレント教育」とは、現在働いている社会人や退職した人が新たな技術や知識を学ぶための教育のことを指します。

政府は、人口が減少する中、働き手の数を維持するには高齢者の労働市場への参画が不可欠だが、高齢者の持っているスキルが必ずしも新しい仕事で通用するものではないというミスマッチを懸念し、リカレント教育の制度整備に本格着手しようとしています。

また、大学などの教育機関も、少子化で経営が厳しい中、リカレント教育の受け皿となることで活路を見出そうとしています。

それだけでなく、「人生100年時代」においては、AIやIoTの進化の中で、絶えず自分自身のスキルの棚卸しとアップデートが求められます。

経産省主導で開催される、「必要な人材像とキャリア構築支援に向けた検討ワーキング・グループ(人材像WG)」でも、「リカレント教育」はひとつの大きなテーマになっています。

これらの動きが、2018年内にどこまで具体化するかはまだはっきりとは見えていませんが、「リカレント教育」は間違いなく2018年に注目されるキーワードのひとつでしょう。

(8)「生産性革命」で賃上げを享受できるか?

政府は、新しい経済政策パッケージの柱のひとつとして「生産性革命」を掲げていますが、その全体像や具体像はまだハッキリとは見えてきません。

しかしながら、2017年12月5日に政府が自民党に提出した生産性革命の原案で、その断片は明らかになりました(*4)。

政府は、企業の国際競争力を高めるために、設備投資や賃上げに積極的な企業に対しては法人税を減税する方針を掲げ、その中でも3%以上の賃上げを実現した企業に対しては、減税額がさらに上乗せされるということです。

過去に「雇用促進税制」という雇用者数を増やしたら減税が受けられるという税制がありましたが、今回の政策では、賃上げが減税に結びつくような制度設計になるようですので、本当に私たちの賃上げにつながるような制度になるのか、注目していきたいものです。

(9)「HRテック」が市民権を得る

働き方改革を実現する手段として、期待を集めているのがHRテックです。

金融や会計の分野において「フィンテック」というキーワードは既に市民権を得ていますが、2018年は、その人事労務バージョンの「HRテック」も市民権を得るのではないかと思われます。

従来、従業員の入退社に伴う年金事務所やハローワークへの手続書類作成、毎月の給与計算、年末調整などは会社の人事部や総務部にとって大きな手間となっていました。

このような状況の中、ここ数年で、更新や細かい設定の必要のないクラウド型の給与計算ソフトや、新入社員の個人情報を分かりやすいインターフェースに基づいて入力すれば年金事務所やハローワークへの手続書類作成が自動作成され、電子申請まで完結するような手続ソフトも登場しました。

登場した当初は機能も不十分だったり、世間の注目も決して大きなものではなかったですが、2017年に人事労務領域のクラウドソフトの性能は大きく進歩し、2018年もその進歩はさらに大きなものになりそうです。

いよいよ2018年は、「HRテック」が注目を集める年になるのではないでしょうか。

(10)「ピープル・アナリティクス」の活用が進む

2017年以前から「働き方改革」というキーワードは散々注目されてきましたが、具体的にどのように「働き方改革」を実現するかについては決め手に欠けるという職場も少なくないのではないかと思います。

そのような中、徐々に注目され始め、2018年にはその注目度が高まるのではないかと考えられているのがHRテックの中でも注目度の高い「ピープル・アナリティクス」です。

ピープル・アナリティクスとは、適性検査の結果や評価結果など社員のビッグデータを分析することに加え、カード型やウェアラブル型の機器を従業員に身に着けてもらい、オフィス内での行動パターンやどこで誰と話したかなどのデータを収集することで、業務の効率化につなげるという手法です。

従業員のプライバシーへの配慮など気を付けなければならない課題はありますが、気合や根性ではなく、客観的データや科学的アプローチに基づいて、自社に合った働き方改革の手法を構築していくための手段として、ピープル・アナリティクスは大きなポテンシャルを持っていると期待されています。

結び

以上、私なりに予想した「2018年注目の人事労務トレンドワード」を10選でご紹介しました。

法的なことからテクニカルなことまで内容は様々ですが、皆様の会社における2018年の人事労務戦略や情報収集のヒントに少しでもなれば幸いです。

【参照】
*1:監督業務支援 民間業者に委託へ – 労働新聞社
*2:労働者を募集する企業の皆様へ ~労働者の募集や求人申込みの制度が変わります~ – 厚生労働省
*3:副業認める就業規則 厚労省がモデル改正案 – 日本経済新聞
*4:生産性革命原案 賃上げ・投資促す 法人税20%台前半に – 毎日新聞

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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