【生産性の落とし穴・後編】“生き生き働く”ことこそが非連続な成長を促す

2017.11.10 ライター: 藤田 隼

前編「なぜ“生産性”は人をモチベートできないのか?」編はこちら


これまで企業目線で語られることが多かった「働き方改革」。

ひとりひとりの働き方と向き合おうという本質とは裏腹に、特に「生産性」などの言葉を中心に、その主語は企業であることが多く、以前配信した「『会社都合で語られる生産性という言葉が嫌いです』JINS MEMEが切り拓く働き方の未来」の記事も多くの共感を呼びました。

そこで、人々の「働く」をモチベートする、新たな指標や概念が無いかを探るため、JINS MEME グループマネジャー・井上 一鷹氏と、「次世代の新しい働き方」をテーマに研究・提言を行っているリクルートワークス研究所 研究員・城倉 亮氏にお声がけし、対談いただきました。

後編となる今回は「“生き生き働く”ことこそが非連続な成長を促す」をお届けします。

業務効率化は評価システムやインセンティブ設計が必要不可欠

藤田:前半の振り返りとしては、旧来の経済成長モデルにおける労働観の中で語られる「生産性」が、現代日本での産業にも当てはめて考えられてしまっているのが、働き手にとっての違和感になり、モチベートされないというお話だったと思います。

井上さん:そうですね、ざっくり課題が2つあって、1つはイマの「生産性」の先に、イノベーションが見えてこない。もう1つは、「根性論バンザイ」な価値観がやっぱり根づいてしまっている。

藤田:その根性論の部分と近いところで、経済産業省 伊藤参事官と弊社の宮田(SmartHR 代表取締役)の対談の中でも上がったんですが、日本と海外の働き方の大きな違いのひとつに「職務の無限定性」といいますか。

城倉さん:ジョブ・ディスクリプションなどの有無ということですね。たしかに、日本ではこれまであまり明確に職務を定義してきてこなかったですね。

藤田:長い歴史の中で「働くのはいいことだ」というのが根付き、現代の労働観にも繋がっているのかもしれませんね。そもそも資源に乏しい国だから、頑張って青天井で働かないと負けちゃうと。そして成果でなく時間で縛るから、仕事ができる人にはその分だけ仕事がふってくる。

「働き方改革」って実はツライ?

井上さん:僕も何か似たようなことを思ってますね。やるべき仕事の中で効率を上げていくと、日本の働き方ではインプットを変えない。つまり「8時間働こう」を変えないので、仕事ができる人はどんどん仕事が増えるんですよね。だから、効率上げようというモチベーションにならない。効率を上げることがインセンティブに繋がらないんですよ。

城倉さん:本当にそうですね。効率を上げても新しい仕事が次々に追加される仕組みになってしまっている。

井上さん:だから効率を上げること自体に、本当にモチベートされるような仕組みがなくて。そして1人1人が「効率上げたら辛いし、ダラっと仕事して残業してたほうが残業代もらえるし」という気持ちになってしまう。

なので、従来インセンティブだった「残業代」にかわって、効率化における新たなインセンティブをしっかり設計しないと上手くいくはずないと思うんですよ。根性論への評価の話ともつながりますが。

城倉さん:この間、働き方改革について話をしていたときに、ある人事の方が「働き方改革したら、辛いじゃん」と言われていて(笑) つまり、今まではダラダラ働いていてもお金がもらえたのに、密度高く働いたのに貰える給料が減るっておかしいじゃないかと言うんですね。

労働の質が高まり、アウトプットも増えて、そして従業員本人が貰う給料も増えていくというサイクルがないと、働き方改革は成し得ないんですよね。インセンティブが示されないうちは、密度濃く働かされてしまうだけだと思ってしまっている部分がある。

井上さん:いやぁ、その通りですよね。残業時間削減して、ついでに、コストカットしようと。でもそれが従業員にインセンティブとして還元されなければ、それはモチベートされるはずがない。

城倉さん:おっしゃる通り。

城倉 亮さん。リクルートワークス研究所・研究員。2004年東京大学文学部思想文化学科卒業後、大手航空会社、日系コンサルティングファームを経て、2012年株式会社リクルート(現株式会社リクルートホールディングス)入社。グループ人事労務を担当する部門のマネジャーとしてグループ各社の人事業務を支援。その後、ITベンチャー企業での人事を経て、2015年10月リクルートへ復帰し、現職。

「集中して働いた人にお金を還元したい」

井上さん:僕の理想は、「集中して働いた人」にお金を還元させたいんですよ。会社から。働き方改革で削減される残業代って、日本全体で8.5兆円分だと言われているんですよね。

じゃあこれを手にするべきなのって会社じゃなくて、業務効率化に向けて頑張ったその人なんじゃないかと思っていて、全てではないにしろ。だからそのための物差しを増やしていきたいなと思ってるんです。

城倉さん:先程触れた社内コミュニケーションの実証実験で「1日の中でどれぐらい話している時間があるか」をデータ化して、5つの時間幅に分類しました。そのなかで印象的な結果がありまして、「15分未満のちょっとした会話」に分類された時間が、あるグループの平均で12.4%もあったんです。

1日で12.4%ということは、1日8時間働くとすると、ちょうど1時間になってしまうんですね。ちょっとした会話に実は1時間も取られているんだと気付いて。

井上さん:1時間! 恐ろしいですね(笑) もっと集中して働きたいのに、みたいな。

城倉さん:1人で15分以上集中して働いている時間は16%ぐらいしかなくて、「じゃあこの集中時間をもっと高めたい」みたいなことを、そういった客観的なデータがあることによって考えることができる。これをコミュニケーションだけでなく、集中度という別の視点から測れたりもするようになってきていると。

つまり、様々な角度から自身の集中と向き合うことで、よりアウトプットを高めるためのパフォーマンス向上を意識し、もっと楽しくPDCAサイクルをまわせるようになると思うんですよね。

井上さん:集中という観点で言うと、人は深い集中に入るのに23分かかるんですよ。それなのに途中から話しかけられたら、それまでの時間とそこからの23分は「捨て」なんですよ。なので、先程の12.4%のくだりだと、ちょっとした会話の回数×23分の「本来集中できたかもしれない時間」が無駄になってしまうと。

城倉さん:そうなりますね、もう大したことじゃないなら話しかけないでくれよと(笑)

井上 一鷹さん。株式会社ジンズ 慶応義塾大学理工学部応用化学卒業後、新卒でADLに入社。大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事。現在は株式会社ジンズにて、JINS MEMEグループマネジャーを務める。2017年7月、「JINS MEME」を活用したアイデア・ソリューション「JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS」で、「HR-Solution Contest ―働き方改革×テクノロジー―」のグランプリを受賞。

イノベーションには「コンセントレーション」も「コミュニケーション」も欠かせない

井上さん:もちろんコミュニケーションも大切な要素です。イノベーションを起こすには、コンセントレーションとコミュニケーションの両方の質を上げるのが、少なくとも必要なんです。であれば、それぞれの時間を分けたほうがイイと思っていまして。

この時間はせっかくチームで働いているんだから、コミュニケーションを大事にしよう、でもコミュニケーションするのはこの時間だけにしよう。その分、残りの時間は集中して働く時間にしよう、という具合に。

城倉さん:さっきもありましたが、ちゃんと区切ってあげると。

井上さん:そうですね。例えば僕の集中時間は1日4時間が限度なんですよね。8時間を2時間×4セットに分けて、1セット目と3セット目は集中して働く。2セット目と4セット目はコミュニケーションと決めて。集中する時間ではお互い干渉し合わないというルールを決めるみたいな。

城倉さん:コンセントレーションとコミュニケーションって完全に並列になっているわけではないので、コンセントレーションできる人は、自ずとコミュニケーションにおいての質も高まりそうですよね。

コミュニケーション質を高める適切なチームビルディングを

井上さん:まさにそう思っていて、集中している人が集まらないと、コミュニケーションの質も上がらないと。やはりテーマに対して深く考えてきた人同士が、深くコミュニケーションすることでイノベーションって生まれるんじゃないでしょうか。そういう意味では、集中できない人が、軽はずみな気持ちで始める「とりあえずちょっとブレストしません?」みたいなのは最悪だと思っています(笑)

城倉さん:おっしゃる通りですね。

井上さん:会議の場でも「アジェンダ出せ、ゴール決めろ、それをコントロールするファシリテーションが大事だ」とか言うんですけど、それ以前に「そもそもちゃんと仮説を考えてきた人がどれぐらい集まるのか?」みたいな話も大切ではないでしょうか。

だからコンセントレーション、コミュニケーション、コンセントレーション、コミュニケーション……の繰り返し。コミュニケーションにおいても、健全なチームビルディングをしていかないと。

人生100年時代は「遊ぶ・学ぶ・働く」がパラレルなものになる

城倉さん:またまたちょっと話が飛ぶんですけど、先日、人工知能の研究者の方と話した時に彼が言っていたのが、小さい頃は「遊び」、学生になって「学び」に変わって、そして最後に「働く」という人生のキャリアだったものが、そういう画一的な区切りじゃなくなると。

いま「人生100年時代」で言われているような、全部が並行して、「遊び」もあれば「学び」もあるし、「働く」もあるということを、100年の間でパラレルに繰り返す時代になってきた。まさにそうなんですよね。

井上さん:「ワークライフバランス」という言葉もやっぱりしっくりこないと思っていて、分断しちゃっているんですよね。「ワーク」と「ライフ」。

城倉さん:そういう意味では、新しい時代を切り拓いていこうという時なのに、昔の言葉を使っちゃっているのかもしれないですね、それこそ「生産性」という言葉もそうだし。今あがった「ワークライフバランス」も。

井上さん:まさにまさに。

城倉さん:昔はそれでよかったんだと思うんですけど、時代が変わったなら言葉も変えていかなきゃいけない。インターフェイスが変わってきているんですから。意識改革を促すためにも、やっぱり新しい言葉が必要ですね。

「生き生き働く」が非連続な成長に

井上さん:石川善樹さんは「進歩」と「進化」の違いだ、というようなことをおっしゃっていて、うなぎのぼりだったイザナギ景気のときは、効率だけ考えていれば「進歩」して、昨日より今日、今日より明日とイイ世界が広がっていたんですよね。

だけど僕らはもう効率を突き詰めるのは、うんざりしちゃっていて。それこそイノベーションと言われるように、急激な「進化」が求められる時代の中で、まだまだ感性のシフトチェンジができていない。非連続な成長というのを生み出さなきゃいけないのに、ある決まったレールの中での連続的成長にちょっと心を振り過ぎているのかもしれないなという。

城倉さん:ハードル高いんですかね、発想を変えるというのは。自分も含めてですけど。

井上さん:自戒の念も込めてですね。やっぱり会議終わるまで、あるいは終わってもしゃべっちゃいますしね、アレだけ言っといてなんなんですが(笑) 難しいんですよね、理屈は分かっても。染みついていますから。

部下が「これ8時間頑張ってやっちゃいました!」と言われたら思わず「そうか、よくやったね」って褒めちゃう。でもその染みついた意識を改革するしかないと。

客観的なフィードバックは無意識下で行動を変える

城倉さん:それこそ、働くとは何か、集中とは何かというのが可視化されてきていることで、自分が思っていたことと実態とがズレていることも、客観的に認識できるようになっている。そしてこういったことが、これからもっと増えてくるはずですね。

非連続な成長をしなきゃいけない時代だから、管理される嫌悪感ではなくて、主体的に自分の行動を楽しく改善していく仕組みづくりによって、ガラッと変えなきゃいけないと思うんですよね。だからこそ、自分はどう行動したくて、実際にどう行動して、その行動をどう振り返るのか、という一連の流れを見えるようにしていくのは、とても大事だと思います。

井上さん:客観的なフィードバックがあると、自ずと人は改善のための行動をしていくんですよね。

城倉さん:僕もJINS MEMEをかけたとき、どうしてもあの赤いメーターに届かせたくて、つまり高い集中度の基準まで届かせたくて、何とかしようとしましたからね(笑) そういうのはきっと人間の発想としてあるのでしょう。

あと AppleWatch や Fitbit といったウェアラブル端末を身につけ始めてから1駅前で降りて歩くようになったという話はよく聞きますね。何歩多く歩いた、何キロカロリー消費したというのが見えるようになるだけでモチベーションが上がる。行動が自然に変わっていく。

井上さん:JINS MEMEも頑張らなくちゃな〜、ちゃんとつくろう(笑)

意識改革をもたらす新しい概念「生き生き働く」

城倉さん:結構色々話逸れましたけど、大丈夫ですか?(笑)

藤田:いや〜、面白いです! 多分編集しながら「面白いな〜」と振り返るはず(笑) 整理すると今回の話は大きく2つのポイントがあったと思っていて、そもそも生産性という言葉と日本経済の歴史に隠された「言霊と労働観」。そしてそれによって生まれた課題を解決するための「働きの可視化」。

井上さん:そうですね、ざっくりまとめると。

藤田:で、実際にそれをモチベートするためには、労働観の意識改革が必要で、新たなワーディングが必要になると。

城倉さん:そうですね、言葉というか概念というか。最後に考えてみましょうか。

井上さん:僕は結構自分で気にしている言葉が「自己肯定感」で。本当に自分でいい仕事をしたなと思えるかどうかを突き詰めていけば、統計的にはいい世界を生むと思っています。ということは、短期的に振り返る指標としては、1日が終わったそのときに、いい仕事したなあと思える比率をどれだけあげられるかだと思います。

それがひいては収益や社会貢献につながると思っていて。で、その「自己肯定感」をもたらす1つの要素が「集中」。集中すると人は幸せに感じるんですよ。何か今日よかったなと。

城倉さん:「如実知自心」の話ともつながりますね。

井上さん:そうですね。集中時間と自分の自己肯定感ってかなり相関すると思っていて。何かこう、生産性よりも「自己肯定感」を感じられる比率を上げるというのが、一番いい社会なんじゃないかなと思っています。まだ測るの難しいんですけどね。

でも、1日1日振り返りが大事で、今日はGOODだったBADだった。で、これを365日分の何個がGOODだったのかをモニタリングしてあげる。じゃあ、このGOODを250個にするために何するかなということを結構本気で考えれば、よくなるんじゃないかと思っていますね、最近。

城倉さん:なるほど。最終的にそういう自己肯定感のような方向へとつながる中間指標として、集中などの要素があって。それが高まっていくということを実現できるのが、本来の「働き方改革」みたいなところなんじゃないかと思いますね。

井上さん:やっぱりビジネスする上で、会社の収益や売り上げありきになっていることがほとんどだと思いますが、本来あるべき姿はそうじゃないと思うんですよね。要は、誰かの幸福や満足度を生んだその結果、対価として売上を得る。

つまりお金をつくることではなく、真の目的は、やっぱり幸せをつくることなので……、それをどういう言葉で言うかはわからないけれども。もちろんそこには自分自身も含まれていて、三方良しですと。その幸せの総量を測れればいいんですかね。

「生き生き働けている人」は現状わずか5.7%

城倉さん:ワークスは「一人ひとりが生き生きと働ける次世代社会を創造する」をミッションに活動しています。井上さんと藤田さんと今日の対談についてすり合わせる中で「働きがいって何だろう」を考えはじめて、ワークスの調査を調べていたところ、「全国就業実態パネル調査」という、日本の約5万人の働き方を追う調査がありました(*1)。

井上さん:「生き生き働く」、いい言葉ですね。

城倉さん:それで「あなたは生き生きと働けていると思いますか?」と質問した項目があって、なんとそのYESの割合がわずか5.7%なんですよ。これが、藤田さんから昨日シェアしていただいたギャラップ社の調査で「日本人のエンゲージメント(仕事への熱意度)は6%」(*2)だったのと、ほぼ一緒なんですよね。

藤田:へ〜!! なんと、これはすごい……(笑)

城倉さん:生き生き働くという人が5.7%しかいないというのは、何かちょっと寂しいですよね……。「どちらかというと」を入れても、計32%なので、それでも3人に1人。

JPSED 全国就業実態パネル調査2017〔データ集〕 – リクルートワークス研究所

井上さん:これってどれくらいパネル調査とっているんですか?

城倉さん:2016年からですね。でも2年とも5%ぐらいで全然変わっていないのが現状なんですよね。ちなみに高齢者のほうが比較的生き生き働けているんですね、65歳以上。多分働きたい人が働いていますよね、65歳以上ですと。

井上さん:確かにそうですね。「働く」という時点でスクリーニングをされているんだ。

城倉さん:そうそう。

他人に惑わされぬ内的欲求が「生き生き働く」を促す

井上さん:今の話でもう1個思ったのは、これまた石川善樹さんが言っていたんですけど、人って若いときは、内的な欲求で物を始めると。楽しいからサッカーやり始める。だけどサッカー選手になって、高校とかで全国大会とか出ちゃうと、承認欲求に変わるんですよ。対外的なものに変わる。

そしてプロになってゴール量産してスゴイとか、年俸が上がってスゴイとか、外的なものですね。でも、最後に40代を超えてくるとカズ(プロサッカー選手・三浦 知良氏)みたいに外的なものじゃなく、俺やっぱり「自分自身やりたいんだ」と内的なものに変わってくる。

城倉さん:内的から外的、そしてまた内的な欲求へ。

井上さん:内的な欲求に早く戻れれば、幸せなんですよ。何でかというと、相対的じゃないから。相対性にしたら、絶対に上位5%が幸せで、不幸せな5%がいて、という具合にガウス分布の中で比べてしまうと。だから本来、絶対的には幸せなはずなのに、相対的な面で不幸を感じてしまう。

城倉さん:そうじゃなくて、絶対的な幸せが大切だと。

井上さん:「俺は絶対的に幸せなんだ!」と言える人が増えてくれれば良いなと。どうやってその領域に行けるかというのをサポートできればいいなあと思っていて。今の時代は、食うに困るほど厳しい世の中じゃないじゃないですか、昔よりは。それなのにみんなが相対的に、「俺は人より幸せじゃないなあ」っていう尺度で生きるのって変だなと。

城倉さん:確かに。おっしゃる通りですね。

井上さん:だからそういった意味で、内的な欲求で気持ちよく働くと。つまり「生き生き働く」。本当に大事ですね。

城倉さん:そして、現状少しも当てはまらない人が13%もいるというのは、何かちょっと寂しいですね。

井上さん:よく見てみると、正規雇用の人より非正規雇用の人のほうが生き生き働けているのは面白い傾向ですね。

城倉さん:そうなんですよ。多分いろんな解釈できると思うんですけど。

井上さん:食うために仕方なく働いているというモチベーションではなく、自分がやりたいことをやるために働いているという人が多いんでしょうかね。

藤田:自分でやりたいことを言語化できている、将来像をイメージできている。それも「主体性」と関わってきそうですね。

城倉さん:そうですね、そうかもしれません。

藤田:やりたいことをやるために働いているという人と、食べるために仕方なく働いているという差が、この調査結果に出てきているのかなというところなんですかね。結論としては、「生き生き働く」という考え方をベースに、労働観の意識改革をしていくということになりそうですね。

井上さん:そして、「自己肯定感」ですと。

城倉さん:これまでのように、効率・生産性だけを切り取って働き方を語るのではなく、「生き生き働く」ということが大前提にあって、そこを目指す上でのひとつの羅針盤が「自己肯定感」。それを指し示す中間指標となるのが「集中」。

井上さん:そうですね。もっと個人のパフォーマンスやモチベーションにフォーカスするには、これらのことを念頭に置く必要があるということですね。


<おわりに>

前後編に分けてお送りした【生産性の落とし穴】。

今回の城倉さんと井上さんの対談において、会社都合で語る「働き方改革」そして「生産性」が、従業員のモチベーションとリンクしない理由が3つありました。

■ 「生産性」という言葉の3つの落とし穴

まず1つ目は、経済産業省の伊藤参事官もおっしゃったように、企業と働き手の利害がトレードオフになってしまうことと考えられます。働き方改革をすればするほど、働き手が辛くなってしまう仕組みになっているということです。

次に、「生産性」という言葉自体が持つ背景が挙げられました。高度経済成長時代を支えた第二次産業のビジネスモデルがあり、これは第三次産業がリードする21世紀の経済アウトプットとは合致しておらず、生産性向上が必ずしもパフォーマンスの最大化につながらない時代を迎えているということです。

そして3つ目が、古くから続く日本的な労働観。ただひたすら働く、愚直に努力することをよしとする根性論が上司部下問わず根づいてしまっている側面もあり、その労働観から脱却できていないことがあげられました。

■ 「生き生き働く」を模索するために

これらの課題に対するアプローチのひとつとしては、企業と働き手の利害のトレードオフを解消する「インセンティブ設計の仕組み化」がありますが、それ以前に、そもそも新しい時代のビジネスモデルに適応し、旧来の労働観を払拭する「意識改革」が必要になります。それに際して「生産性」という言葉は最適ではなく、そもそものワーディングを考えようという議論に発展しました。

そのひとつのヒントこそが「生き生き働く」だと考えられます。内的な欲求を突き動かす「自己肯定感」。そして“如実知自心”によって引き出される「集中」。

そうすると、「働き方改革」は、むしろ働き手こそ主体的に自分の働き方と向き合っていく必要があるのではないでしょうか。「働き方改革」とともに「人づくり革命」が今まさに推進される理由は、ここにあるのかもしれません。

その中で「人生100年時代構想会議」や「人材力研究会」が動き出しています。

SmartHR Mag. としても、その動向に注目して、人々にとっての「生き生き働く」を考察し、次代へのヒントを模索していければと存じます。

【参照】
*1:JPSED 全国就業実態パネル調査2017〔データ集〕 – リクルートワークス研究所
*2:「熱意ある社員」6%のみ 日本132位、米ギャラップ調査 – 日本経済新聞

藤田 隼

SmartHR mag. 2代目編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトのディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。ウェブ解析士。


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