「リモートワーク」のグダグダ運用を避けるための3つの対策


こんにちは。特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

新しい働き方のひとつとして、「リモートワーク」が今まさに注目されていますが、運用上の注意が多いのもまた事実です。

そこで、本稿ではどうすれば実効性のあるリモートワーク運用ができるのかについて解説をしていきたいと思います。

リモートワークとは?

まずは、「そもそもリモートワークとは何か?」について確認をしておきましょう。

リモートワークの「リモート」は英語の「remote(=遠隔の)」に由来しており、簡潔に言うと「(オフィスとは)離れた場所で仕事をすること」がリモートワークの意味するところです。

リモートワークに似た言葉で「テレワーク」という言葉があります。行政機関ではこちらの「テレワーク」が使われることが多いようですが、リモートワークと同義と考えて問題ありません。

もう1つ、リモートワークに似た言葉で、「在宅勤務」という言葉もありますが、在宅勤務はリモートワークの一形態と整理すると分かりやすいと思います。

すなわち、リモートワークという概念の中には、

  1. 自宅で仕事をする「在宅勤務」
  2. 移動時間を活用して仕事をする「モバイルワーク」
  3. カフェなどで仕事をする「ノマドワーク」
  4. 会社が用意したレンタルオフィスなどで仕事をする「サテライトオフィス勤務」
  5. 家族等と休暇を楽しみながら、本人は一定時間は休暇先で仕事を行うという「ワーケーション」

など、様々なオフィス外での働き方が含まれています。

リモートワークの4つのメリット

ここで、リモートワークのメリットを整理しておきましょう。リモートワークの主なメリットは4つあります。

(1)通勤負荷が軽減され時間を有効活用できる

第1は、通勤時間の削減による負荷軽減や時間の有効活用です。

首都圏や大阪圏などの大都市で勤務している方は、片道の通勤時間が1時間を超えることも珍しくないと思います。

しかも、身動きもとれない満員電車に揺られての1時間です。リモートワークを行い、自宅や自宅周辺のサテライトオフィスなどで仕事を行うことができれば、この非生産的かつ体力を消耗する通勤時間を一掃することが可能となります。

通勤で無駄な体力を消耗することなく朝一番の仕事に取り掛かれますし、浮いた通勤時間は自己啓発や家族との時間に充てることも可能です。

さらに言えば、男性であれば痴漢冤罪に巻き込まれるリスクを回避することができるというメリットもあるでしょう。

(2)育児や介護との両立を図れる

第2は、育児や介護との両立ができることです。

子供を保育園に預けて仕事をしているパパママにとって、たとえば、保育園のお迎えの時間を気にしながら残業をしたり、子供が熱を出したときなどに迎えにいかなければならないことは心身の大きな負担になっています。

自宅や自宅近辺でリモートワークを行うことができれば、保育園で何かあってもすぐに迎えに行くことができますし、子供を寝かしつけた後、仕事を再開するといったような柔軟な働き方も可能となります。

介護の場合も、在宅介護をしながら仕事を行ったり、デイサービスで何かあっても自宅からならばすぐに駆けつけることができます。

このように、生活圏と職場が近いことには大きなメリットがあります。

(3)レジャーや趣味と両立できる

第3は、仕事とレジャーや趣味が両立できることです。

リモートワークの一種として「ワーケーション」という言葉が市民権を得つつあります。

我が国においてはヨーロッパ諸国のように1か月のバカンスを取ることはまだまだ現実的ではありませんが、仕事をしながらバカンスを楽しむということは実現可能性は十分にあります。たとえば、家族で石垣島に2週間行って、家族には南の島を満喫してもらい、本人は平日の日中はリモートワークで仕事を行い、終業後や土日は家族と一緒にバカンスを楽しむというイメージです。

また、田舎暮らしに憧れていた、という人であれば、地方に移住して山や川といった自然に包まれて暮らしながらリモートワークで仕事を行うということも可能でしょう。

(4)離職防止や、多様な人材活用に繋がる

第4は、会社にとって離職防止や、多様な人材の活用できる可能性が広がるということです。

従来は通勤を前提とし、会社に通勤可能な人を採用することが常識でした。また、婚姻のための引越、親の介護のための帰省、配偶者の転勤への同行などに直面して、通勤が困難になった場合は退職という選択肢を取ることが一般的でした。

しかし、リモートワークを前提とすれば、日本中に向かって求人を出すことが可能ですし、通勤が困難になった場合の退職も回避することができます

現在「求人難」と言われ、人を採用することが困難な時代になっていますが、リモートワークを活用することで、採用の可能性を広げたり、退職を防ぐことで必要な社員数を確保したりという経営の舵取りも可能になってくるでしょう。

リモートワークの3つのデメリット

次に、リモートワークのデメリットです。デメリットについては3つ挙げたいと思います。

(1)コミュニケーションが不足しがち

第1は、コミュニケーション不足の問題です。

やはり、リモートワークでは実際に顔を合わせてオフィスで仕事をしている場合よりも、人間関係は希薄になってしまいます。職場の人間関係や信頼関係は、休憩時間の雑談や飲み会などによって形成されていく部分もあり、円滑に仕事を回していくためには軽視できません。

リモートワークで働く人と本社、あるいはリモートワークで働く人同士の人間関係や信頼関係を構築していくことが難しいというところがデメリットです。

通常はオフィスで勤務をしている人が、育休期間や介護期間だけ臨時的にリモートワークを行う場合は、そこまで問題にならないかもしれませんが、100%リモートワーク前提で仕事をする場合には、コミュニケーションを促す何らかの施策が必要になってくるでしょう。

(2)労務管理が行き渡らない

第2は、労務管理の問題です。

リモートワークでは、出勤や退勤、休憩時間、残業といった労働時間の管理など、本人の自己申告に委ねなければならない部分も増えてきます。管理者が、同じ空間で社員を目視しながら労務管理を行うことができない、というデメリットがあるわけです。

管理者の知らないところで過重労働が発生していたり、不正な労働時間の申告が行われていたりということも起こり得るので、可能な限りこういった目の届かないところで発生するトラブルを予防しなければなりません。

(3)情報漏えいのリスクを抱える

第3は、情報漏えいの問題です。

オフィスにおいては、パソコンやサーバー、インターネットの回線等にはセキュリティがかけられていると思います。また、紙の書類も重要なものは金庫や鍵付きのキャビネットに入っているでしょう。職場の出入りにも何らかのルールが設けられているはずです。

リモートワークは、こういった強固に守られたオフィス空間の外で仕事をすることになるわけですから、情報漏えいのリスクが高まるという問題があります。

リモートワークのデメリットの克服

しかし、リモートワークには大きなメリットがあることは間違いありませんので、是非活用をしていきたいところです。

そのためにも、デメリットの克服方法を考えていかなければなりません。

(1)コミュニケーション不足 → 「ビデオ会議」の活用

第1の問題点「コミュニケ―ション不足」に関しては、テキストコミュニケーションや、顔の見えない電話だけではどうしても無理が出てしまいます。ですから、ビデオ会議の活用が考えられます。

かつては高価なテレビ会議システムを導入しなければなりませんでしたが、現在はIT技術の発達で、スカイプはもちろん、チャットワークを導入している会社であればチャットワークライブ、Gmailアカウントがあればハングアウトなど、無料ないし安価に利用できる様々なテレビ会議サービスが登場しました。これらを活用し、「声」や「表情」でのコミュニケーションを高めて下さい。

また、年に1回くらいは会社で費用を負担して、リモートワーカーが集まる「オフ会」のようなものを開催することも効果があるのではないでしょうか。

(2)労務管理 → ルールの整備、クラウドタイムカード等の活用

第2の問題点「労務管理」に関しては、ルールの整備や、クラウド勤怠管理・クラウドタイムカードなどのシステム導入が考えられます。

たとえば、社員のワークライフバランスのためにリモートワークを導入したのに、「寝坊したからリモートワークを申請する」というような使われ方をしてしまっては、会社としては許容しがたい制度悪用です。こういったケースを避けるためには、「前日までに上長に申請し認められた場合に限る」など、リモートワークを行うためのルールをあらかじめ整備しておくこと必要です。

また、クラウドタイムカードで始業終業時刻を打刻したり、パソコンのオンオフで労働時間を集計できるアプリを入れてそれに基づき労働時間を計算したりすることで、本人の自己申告に頼るのではなく、可能な限り客観的に労働時間を把握することができるシステムを導入することが、不正を防ぐための対策になるはずです。

「取りあえずリモートワークを始めてみよう」と見切り発車するのではなく、リモートワークを円滑に運営するための「ルール」と「システム」をまずは整えることを忘れないで下さい。

(3)情報漏えいリスク → セキュリティソフトやセキュリティの高いクラウド空間に情報保管

第3の問題点「情報漏えい」についても、システム面でのあらかじめの対策とルールの整備がポイントになってくるでしょう。

具体的には、リモートワークであっても業務で利用するパソコンは会社が支給するとか、自己のパソコンを利用する場合は会社が指定するセキュリティーソフトをインストールするといったような対策です。

また、万一パソコン本体を盗まれても被害を最小限に食い止められるよう、パスワードで防ぐことは最低限の対応ですが、なるべくクラウド型のソフトを活用し、ローカルではなく、セキュリティの高いクラウド空間に重要情報を保管するようにすべきでしょう。

そして、新幹線や航空機の中、コワーキングのオープンスペースなどでは原則パソコンを開かないようにし、やむなく開く場合は覗き見されないよう細心の注意を払ったり、パソコンを置いたままその場を離れないようにしたりなどの「リモートワークの心得」については、単にルールとして定めるだけではなく、社員研修を行うなどして、ルールの定着を徹底させる必要があるでしょう。

まとめ

リモートワークは「最近はやっているから」とか「社員が喜ぶだろうから」と、何の考えも無く導入してしまうとデメリットの部分が表面化し、グダグダな運用になってしまう恐れがあります。

しっかりとしたルールやシステムを導入の上、会社にとっても本人にとっても意味のあるリモートワークを是非実現して下さい。

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。


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