「年末調整」で損をしないために知っておくべき8のチェックポイント【従業員向け】


こんにちは。特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

今年も「年末調整」のシーズンが近づいてきました。年末調整は、毎月の給料から仮で天引きされた所得税の過不足を精算して、給与所得者がその年の所得および所得税額を確定させるための手続きです。

多くの会社では、既に扶養控除等申告書や保険料控除申告書が配られ、皆様も記入を始めていらっしゃるのではないでしょうか。

年末調整の書類を書くのは「面倒」とか「大変」とか思ってしまいがちですが、これらの書類は、働く皆様にとって、とても大切な書類です。なぜならば、本人が漏れなく記入しなければ、本来還付されるはずだった所得税の還付を受けることができなくなり、皆様自身が損をしてしまうからです。

そこで、今回は、年末調整で損をしないために、書類作成時の漏れを防止するため「これだけは必ずチェックしておきたい」というチェックポイントを8つ紹介します。

(1)年の途中で「扶養親族等」は増加していませんか?

配偶者の有無や扶養親族の数によって、年間の所得から控除される額は変わります。もちろん、扶養親族等が多いほうが所得税も少なくなります。

もし、年の途中で結婚をしていたり、扶養控除の対象となる16歳以上の子女で会社への申告が漏れていたら、必ず会社へ申告をして下さい。

今回提出する扶養控除等申告書に正しく記入して申告すれば、増えた分の扶養親族等の所得控除は年末調整に反映されます。

(2)「寡婦・寡夫、勤労学生、障害者」に該当していませんか?

自分が寡婦・寡夫や勤労学生であったり、自分自身や扶養親族が障害者に該当していませんでしょうか?

扶養控除等申告書の、用紙の真ん中より少し下あたりを見ると「C 障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生」という欄が見つかると思います。こちらの欄に必要な事項を記入したりチェックを入れたりすることで、特別な追加所得控除を受けることができます。

たとえば、お子さんが17歳であれば通常は38万円しか所得控除されませんが、その子が障害者であるとすれば、当欄で申告することで、状況に応じ追加で27万円、40万円または72万円の追加の所得控除が受けられます。

(3)「民間の保険」に加入していませんか?

ご自身で民間の生命保険、個人年金保険、地震保険に加入している方は、既にお手元に保険会社からハガキが届いているのではないでしょうか。このハガキには、皆様が今年支払った保険料が記入されています。

このハガキの内容を保険料控除申告書に転記するとともに、ハガキの原本を添えて会社に提出することで、支払った保険料の一部が所得控除に反映されます。複数の保険に加入している方は、控除額に上限はありますが、全てを合算することができますので、自分が加入している保険を思い出して、漏れなく申告書に反映させるようにして下さい。

また、家族の生命保険料などを自分が保険料負担者として支払っている場合は、家族分の保険料も含めて年末調整に反映させることができますので、このことも覚えておいて下さい。

(4)「配偶者特別控除」を忘れていませんか?

保険料控除申告書の右3分の1には、「給与所得者の配偶者特別控除申告書」という枠があります。

給与収入が103万円以上(給与所得でいえば38万円以上)ある配偶者は、扶養控除申告書に記載できる被扶養配偶者には該当しません。

しかし、「うちの妻は103万円の壁を超えているから年末調整は関係ないな」と早とちりしてはなりません。被扶養配偶者に該当しなかったとしても、給与収入が103万円超から141万円以下であれば、配偶者特別控除に該当し、配偶者控除の38万円よりは少なくなりますが、段階的に本人の所得控除が受けられるのです。

ですから、配偶者の給与収入が103万円超から141万円以下の場合は、忘れずに「給与所得者の配偶者特別控除申告書」の欄を埋めるようにして下さい。

(5)入社前に支払った「国民年金や国保の保険料」はありませんか?

現在の会社へ就職前に、無職や自営業であったり、社会保険の適用が無い会社に勤めていたりして、当年中に自分で国民年金や国保の保険料を支払っていた人は、これらの保険料は全額所得控除の対象となります。

また、過去に未納だった分の保険料をさかのぼって支払った場合も、その全額を当年の年末調整の所得控除に反映させることができます。

そのためには、保険料控除申告書の右下の「社会保険料」という欄に、支払った年金や保険の種類等と、その金額を漏れなく記入するようにして下さい。

(6)子供の国民年金など「家族の保険料を肩代わり」で支払っていませんか?

よくありがちなパターンの一例を挙げれば、たとえばお子さんが20歳になったので国民年金の保険料支払い義務が生じたが、まだ学生で収入が無いので親がかわりに支払っているという状況です。

このようなとき、親は、お子さんのかわりに支払った国民年金の保険料を全額自分の所得から控除することができます

親が控除を受けるためには、上記同様、保険料控除申告書の「社会保険料」の欄に、この分の保険料についても必要事項を記載する形になります。

(7)「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に加入していませんか?

最近は、自己責任で老後に備えるため、自分で個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入する方も増えてきています。

年内に確定拠出年金に支払った拠出金は、全額が年末調整における所得控除の対象となります。

民間の生命保険などと同じように、確定拠出年金の運営機関から年内に支払った拠出金の額などを記したハガキが届きます。そのハガキを見て、保険料控除等申告書の右下に、「個人型及び企業型年金加入者掛金」という欄がありますので、こちらに金額を転記するようにして下さい。

企業型の確定拠出年金であれば会社として運用されている制度ですので、記入漏れがあれば、年末調整担当者が計算の段階で気がつくと思います。

しかし、個人型の確定拠出年金の場合は、年末調整の担当者は誰が個人型確定拠出年金に加入しているか通常把握していませんので、自分がきちんと申告書に記入しなければ、見落とされたまま年末調整が進められてしまいます。

(8)住宅ローンを組んでいませんか?

住宅ローンを組んでいると、一定のルールに基づき住宅ローン控除が受けられます。

今年新たに住宅ローンを組んだ方は、年末調整では対応できませんので、確定申告を行ってください。

2年目以降の方は、税務署から「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」兼「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」という書類が届き、また、住宅ローンを組んでいる金融機関からは「住宅ローンの年末残高証明書」が送られてきていると思います。

これらの書類を会社へ提出するのを忘れてしまいますと、年末調整で住宅ローン控除が受けられませんので、忘れないように気を付けて下さい。

まとめ

以上のように、年末調整の申告書記入等にあたり、漏らしてはならないポイントを8つ紹介しました。

なお、年間の医療費が多額になった場合の医療費控除、書籍やスーツなどで多額の自己負担があった場合の特定支出控除、災害を受けた場合の雑損控除などは、年末調整では対応されません。これらに該当する場合は、自分で確定申告を行って還付を受ける必要がありますのでご注意ください。

年末調整が終わった後に、万が一漏れに気が付いた場合は、自分で確定申告を行うことで、修正をかけることができます

しかしながら、自分で確定申告を行うのは手間や時間がかかりますので、上記の医療費控除のような特別な事情が無ければ、漏れなく確実に申告書を記載して、年末調整でスッキリと所得の確定を終わらせたいですね。


【修正】
[2017年11月21日] 冒頭に誤記がございましたので、下記のように訂正いたしました。
(誤)「毎月の給料から仮で天引きされた消費税の過不足を精算して」
(正)「毎月の給料から仮で天引きされた所得税の過不足を精算して」

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。


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