人事評価制度と昇降格、そして昇給・減給の注意点とは?


こんにちは、社会保険労務士の倉橋 和之です。

時折、「成果主義的評価制度」を導入して、基本給の昇給・減給ができる仕組みをつくりたいという会社さんがいらっしゃいます。「売上・利益があがるから賃上げができるのだ」と力説されることもあります。

しかし、評価制度および給与については、細心の注意が必要です。

本記事では、人事評価における昇給・減給の注意点等について解説していきます。

従業員にとって給与とは?

労働者の立場で「給与」を捉えてみましょう。

労働者は、労務の提供に応じてその対価として会社から給与をもらっています。

当たり前のことですが、給与があるから生活ができるし、余暇を楽しみ、労働するエネルギーを蓄えることもできる。更には、給与があるからこそ、結婚して子どもを生み、次世代へと繋げていくこともできるわけです。給与にはこのような側面もあります。

ですから、給与を下げることは労働者の生活を脅かしかねません。基本給の安易な減給は、トラブルの元になると心得ましょう。

減給にも3つのケースが考えられる

給与が引き下げられる減給には、3つのケースが考えられます。

(1)懲戒処分により減給となるケース

(2)懲戒処分として降格となりその結果、減給となるケース

(3)人事上の降格により減給となるケース

主にこの3つですが、本記事では、3つ目の「人事上の降格により減給となるケース」を取り上げたいと思います。

「人事上の降格」により減給となるケース

これは、人事評価などの査定によって降格し、その等級に応じて給与が減給されるケースです。

「人事上の降格」とは、「能力」「成績」「役割」などにより従業員を等級を分け、その等級が下がることを言います。

実務上は、等級制度を含めた人事評価制度が定められている必要があると言えます。

通達では、格下げされたことにより従業員の職務が変更され、その結果として給与が減給されるのは明らかですから、就業規則の懲戒処分とは異なります。

ですから、労働基準法で定めている減給の制裁にはあたらないとされています。

違法に当たる場合も?

人事評価制度は、就業規則や給与規程において、規定しておくことが望ましいです。

降格の可能性や適用対象者に該当する要件、降格基準について規定すると同時に、それらの内容は従業員に対して十分な周知がされることが求められます。

なお、人事評価が著しくバランスを欠いて行われるなど「人事考課権の濫用」に該当する場合や、人事評価制度上定められた考慮要素以外の要素に基づき評価がされた場合は、違法となります。最悪の場合、従業員から損害賠償請求がされる場合もあります。

恣意的な運用は避けるのが賢明です。

人事評価制度の目的は、本来経営目標に紐づく

「従業員の貢献度を給与に反映させたい」「頑張っている従業員には賃金アップで報いてあげたい。それなりの従業員にはそれなりの金額にしたい」

経営者であれば、そういったお気持ちになるのは自然なことだと思います。

しかし、人事評価制度を運用しはじめた当初から、評価と賃金を安易に結びつけることはお勧めしません。

まずは人事評価制度に従業員が慣れることに神経を使うべきです。

人事評価制度の存在がストレスになってしまい、使わない人事評価制度になってしまっては元も子もありません。

そもそも人事評価制度は、本質的には経営目標を達成するためにあると考えます。

評価制度を通じて、従業員が育つ仕組みとなっていることが重要です。

人事評価制度には人事理念が反映されていることやさらに言えば、経営計画が策定されていることが望ましいでしょう。

社会保険労務士 倉橋 和之

社労士事務所に約1年勤務を経て平成23年11月開業。専門分野は、助成金申請業務を起点にした人事労務支援や資金調達支援。自身の開業経験を活かして事業計画書や経営改善計画の策定をメインに、起業者支援も行っている。


他の執筆記事はこちら

関連記事

年末調整特集