【人事のプロが斬る働き方改革 #2】働き方改革の成否は「経営合宿」が左右する?

2017.11.06 ライター: 藤田 隼

前回の「そもそもベンチャー企業に働き方改革は不要!?」編はこちら


人事のプロとして活躍中の、プロ・リクルーター 河合聡一郎さん と 社会保険労務士法人シグナル代表 有馬美帆さん をお招きし、対談形式でお送りする【人事のプロが斬る働き方改革】。

第2回となる今回は、「働き方改革の成否は“経営合宿”が左右する?」編をお届けします!

働き方改革が上手くいくか否かの差は「経営者のコミット量」

河合さん:社労士の有馬さんとしての立場から見て、働き方改革が上手くいっている会社とそうでない会社って、どういうところに差異があると思いますか?

有馬さん:「経営者のコミットメント量」がイチバンだと思います。どういう風に働き方改革を推進していくか明確になっていて、ミドルマネジメント層、そして従業員へと浸透しています。

河合さん:なるほど、「ウチは組織として何を目指し、どのような行動を是とするのか」ということを定義して実現に向けてコミットメントしていくと。

有馬さん:そうすると経営方針って本当に重要ですし、しっかり浸透させる必要がある。その観点でいうと「経営合宿」って結構重要だと思いますね。

有馬美帆さん。社会保険労務士法人シグナル代表、特定社会保険労務士。急成長するベンチャー企業において、企業フェーズに応じた支援を行い、一歩先回りした提案により、お客様の成長を加速させており、IPOコンサルティング・労務トラブル相談・就業規則作成等で特に活躍中。

経営者のコミットには「経営合宿」が効果的

有馬さん:極端な話、経営合宿をした上で働き方改革を議論しないといけないくらいだと思います。副業OKとか、残業削減しますとか、明日から18時に帰れって、簡単に導入決定するようなものではなくて、本来は。

河合さん:30人くらいの規模感だと、働き方改革以前に、そもそも「ナゼ今こういうことをやるのか」という文脈がとっても大事ですよね。あるベンチャーで初めて人事制度を運用することになった際、説明に伺ったんですけど、「なんで今このタイミングなのか? どういう経営陣の思いがあってやるのか?」ということを丁寧に説明しました。説明責任というか文脈を伝えないと、ホント点になっちゃうんですよね。

有馬さん:線にしないと、ですね。

河合さん:「他の会社もやってるんでウチもリモート入れます」という単純なやり方ではどうしても点になってしまいますね。「ウチの会社と何を照らし合わせてそういう判断をしたんですか? なんで今なんですか?」って返答がくる。そういう意味でも、説明責任は必要ですね。経営陣が事業と制度を紐付けて説明できなければ、現場はもちろん運用する人事も混乱するし……。

有馬さん:本当にそうですね。働き方改革を考える上で、真っ先にすべきは「経営合宿」かもしれませんね(笑) これは案外大げさな話でもなくて、働き方改革の施策どうこう、というよりは、まず経営者の意識改革が大前提なんだと思います。

経営方針が浸透すれば従業員は自律駆動する

河合聡一郎さん。メーカー、リクルートグループ、BizReachの立ち上げ、外資系IT企業等を経て、創業メンバーとしてラクスルに参画。ラクスルでは、人事マネージャーとして活躍すると同時に、複数社の創業や社外人事も兼務し、うち2社のIPOに貢献。2017年5月にハンズオン型の採用コンサルティング、企業投資、HR系サービスを提供する株式会社ReBoostを創業、代表取締役に就任。

河合さん:お話を藤田さんに振りますが、SmartHRさんで今やられている働き方改革ってありますか?

藤田:おっと、振られると思っていなかったです(笑) そうですね〜。弊社ですと、今現在「働き方改革」と銘打って何かをしているっていうのは特にないですね。それこそ前回おふたりにお話いただいたように、今後の中長期的な経営戦略と想定しうる課題の中で、自社に適した人事施策を設計していくフェーズなのかなと思います。

河合さん:なるほど!

藤田:具体的に動いている制度では、テスト運用を経て、本格的に人事評価制度が走り出しました。その中で僕がイイなぁと思っているのは、会社の方針が社員に根付いていて、それをもとに自律駆動でひとりひとり行動できていることですね。

有馬さん:経営陣からメンバーに対して、しっかりとコミットメントされているんでしょうね〜。

藤田:それはものすごく実感しています。半年に1回全社合宿があって、前回は7月にやったんですけど。その合宿の1日目に、向こう半年の会社の目標とミッションを共有されて、それからチームにわかれて、各チームのミッションとそれに紐づく欲しい結果を議論して決めたんですね。それで2日目は、自チームだけでなく他のチームとそれぞれのミッションや欲しい結果について相互にフィードバックし、最終的に各チームでFIXさせて。

河合さん:楽しそう!

藤田:そこまでやった上で、個人目標へとブレイクダウンしていっているので、ひとりひとりが本当に「自律駆動」している組織だと感じます。会社の情報がKPIや銀行口座の残高までオープンにされているので、何か議論するにしてもポイントが明確になり、意思決定がとてもスピーディですね。手前味噌で結構話しちゃって恐縮です……(笑)

藤田隼。SmartHR mag. 2代目編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わる。2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトのディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。ウェブ解析士。

社員に経営方針が行き届けば「リファラル採用」にも生きる

有馬さん:経営合宿はもちろん社員参加の合宿も、やはり重要になってきそうですね。

河合さん:そうですね、以前勤めた企業でも、初めて人事制度を導入したとき30人ぐらいだったんですけど、全社で合宿やりましたよ! 1泊2日で。会社のこれまでの歴史と今後どうなっていくかっていうことを踏まえて。

藤田:MBOでやっている会社さんでも、先に「会社としては具体的にこういう成果が欲しい」その上で「各チームとしては明確にこれが必要」っていうのが予算以外で特にコミットされぬまま、「目標まずは自分で考えてね」って各個人の目標設定が始まっていったりすることもあるようで。そうすると個人の目標とチームや会社の目標が、実はまったく別のベクトルになっていたり……。

河合さん:そうですね。さっき藤田さんが合宿のくだりでおっしゃったように、会社としてのビジョンやミッションって、どうやって会社が生まれたか、今後どういう風な会社を創っていきたいか、世の中に貢献したいか……といったことを事業戦略とその時間軸に落としていく必要があって。その中で、従業員の能力を最大化するためにこういう制度を入れますよ、こういうルールがあってこういう運用をしていきますよってブレイクダウンしていかないと、本当に線にならず点になっちゃうってことですね。

有馬さん:なるほど〜。お話してて色々見えてきた! そうすると、方法論的にはまず経営合宿と必要に応じてマネジメント合宿を実施して、その後に全社合宿……というのが理想的な形のひとつかもしれないですね。30人規模だと小回りも効きますし。

河合さん:イイですね! 回数は各社に応じて。

有馬さん:多分3回やるとみんな、手間になっちゃうし、日帰りとかでも良いと思います。ここで大事なのは、経営者やマネージャーがいかにコミットメントするかの仕組みを考えることですね。

河合さん:そうだと思います。30人だったら、2回くらいかなと。そうすると、まずは経営陣+マネージャーで経営合宿。その後は全社合宿という流れですね。このように経営陣やマネージャーが従業員としっかり向き合う時間っていうのは、本当に必要ですね。

有馬さん:この流れが上手くいくと、社員も自律駆動できそうですね。リファラル採用などでも成果でそう!

河合さん:リファラル、確かにそうですね。ひとりひとりが、会社の強みも課題も理解しているし、その中で必要な施策だったり人材だったりも見えてきますからね。

藤田:それに関連してなのですが、今の弊社の社員のうち4割強がリファラルですね。かくいう僕もリファラルで入社したひとりです(笑)

河合さん:あ、以前おっしゃってましたね! いや〜、本当リファラル採用に生きてきそうですね。

有馬さん:ひとりひとりの従業員が語れるんですよね。事業としてはもちろん、そのような採用などでの波及効果もあるはずなので、絶対やったほうがいいですね、合宿。

成長の中の階層化は必然、意思疎通は非常に重要

河合さん:その通りですね。少なくとも3ヶ月〜半年に1回ぐらいはやっていったほうが良いと思います。前提として経営メンバーの目線がちゃんとすり合わさっていないと。

有馬さん:意外と、マネージャー含め経営陣の意思疎通ができていない企業さんは多いですよね。

河合さん:多いですね……。特に成長する段階においては、組織構造がだんだん階層化してきて、30人くらいだとだいたい2階層、多くて3階層ぐらいになるのかな。

有馬さん:更にそこから50、100と増えていくわけで。成長に伴い階層化は進みますね。

河合さん:そうなると経営者、マネージャー、そして人事の意思疎通はより大切になってくる。

「もし経営者と距離が遠かったら・・・」その時、人事に求められる主体性

有馬さん:でも、少ない人数の会社でも、意外に経営陣と人事の距離が離れてしまっている会社さん多いじゃないですか。経営とヒトって直結するから、経営陣がどう考えてるのかっていうのが人事側が理解しているかどうかというのは、すごく重要です。

河合さん:おっしゃる通りですね。そうすると、人事に期待されるのは、採用の実行とか評価制度だけじゃなくて、自社の事業戦略やビジネスモデルを学ぶスタンスも非常に必要だと思うんですよ。その上で、必要な人事戦略を考え経営陣に提案する。つまり、人事も経営陣とコミュニケーションをとるうえで、自分たちの置かれているビジネスマーケット環境の変化や、事業体の理解から人事戦略を考えていくのが非常に大事かなと思います。

「働き方改革」というキーワードが、経営者と人事が膝を突き合わせるきっかけに

有馬さん:経営陣のコミットが働き方改革前提だとしたら、経営陣と人事がコミュニケーションを強めるのは更にその一歩手前の大前提ということになりますかね。これを人事から経営者に持ちかけるにあたっては、キーワードとしての「働き方改革」を巧くフックにするのもアリかなと思います。先進的な事例をつくりましょうと。

河合さん:確かにそうですね。経営陣とコミュニケーションを取るうえでの、ひとつのきっかけにもなりそうですね。働き方改革をフックに声をかけ、スケジュールを抑えて、そして本題として「会社の今後」についてすり合わせる。

有馬さん:そして経営陣にジャブを打ったその次は、「これはミドルマネジメントも理解すべきだから予定抑えますね……」と巻き込んでいくと。

きっかけは「働き方改革」でOK、でも目的が企業成長であることは忘れず

有馬さん:3年後5年後を見据えてだとより良いですね。きっと社長は見据えてると思うんですけれども、人事までその共通理解があるとは限らない。でも人事が3年後5年後を見据えて、「今は働き方改革の施策は必要ないけど、社員のライフスタイルが時間の経過とともに変化するから、今後は要検討事項ですよ!」みたいなことも提案できるとGOODですよね。

河合さん:議論した結果、やっぱり導入しないでも当然OKです。その結論に至った経緯の説明もあれば、従業員にとっても安心ですね。働き方改革自体が目的なのではなく、企業成長と従業員の働き方と向き合って必要な改革を施していくのが本筋なので。

有馬さん:その通りですね。

河合さん:経営陣と人事が会社の歩む先を考えるきっかけとして生かせそうですね。企業成長を考えるきっかけとして。

有馬さん:企業成長。働き方改革は、企業成長という目的の中の手段ですからね!

(#3「人事制度運用のコツ」編に続く)

藤田 隼

SmartHR mag. 2代目編集長。ソーシャル系スタートアップでSNSマーケティングや自社メディア運営に携わり、2015年よりメディアに特化した事業会社で複数サイトのディレクターを経験した後、SmartHRにジョイン。ウェブ解析士。


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