ブラックな労働環境を一掃して「飲食業」を経営するには3つの課題がある


国の主導のもと「働き方改革」の実現に向け、産官学が連携し、様々な取り組みや研究がなされています。

「働き方改革」における大きな課題のひとつとして、「長時間労働削減」が挙げられますが、これは全ての企業に一様の課題があるわけではなく、業界・業種などによって、その特徴は大きく異なります。

中でも「飲食業」の一部で、「ワンオペ問題」「ブラックバイト訴訟」など、様々な問題がここ数年相次ぎました。氷山の一角に過ぎず、まだまだたくさんの問題が眠っている可能性も充分に考えられます。

今回は「なぜ飲食業はブラックな労働環境に晒されやすいのか」について考えてみたいと思います。

なぜ飲食業は「ブラックな労働環境」に晒されるのか?

端的にいうと、「ヒト・モノ・カネ」のバランスが極端に崩れ、ヒトにしわ寄せがいっている状態といえるのではないでしょうか?

生き残りをかけての価格競争や年中無休での営業、24時間営業等で慢性的な人手不足、長時間労働に陥っています。その延長線上で、「過労死」「未払残業」「ワンオペ問題」などが露見し、マスコミに取り上げられることによる、マイナスイメージは計り知れません。

激しい競争の結果として、店舗閉鎖に追い込まれるケースもあり、皮肉な結果となっています。

(また、アルバイトなどがネット上に面白半分で非常識な写真を投稿し、炎上するケースも少なくありません。)

そして、「飲食業=ブラック」の悪評が広まり、ますますヒトが集まらないという、悪循環になってしまいます。

労働問題なく飲食業を経営するための3つの課題

これらの問題を解決すべく、向き合うべきポイントはどのようなことが挙げられるでしょうか?

まずは、経営トップの意識改革が最重要です。そして、飲食業の誇りと信頼を取り戻すことでしょう。

具体的には、以下3点を挙げさせていただきます。

(1)経営トップは「労働基準法」を甘くみないこと

経営トップは強行法規である労働基準法(以下、労基法)を甘く見ないことです。労基法は、労働者が人たるに値する生活を営むための最低基準です(労基法1条)。

労基法を甘く見るということは、従業員を甘く見るということであり、労使トラブルがいつ起こってもおかしくない状態にあるといえます。

「残業代がつかない」「休めない」「休憩がとれない」「辞めさせてもらえない」等があってはなりません。

経営トップは労基法を勉強し、徹底遵守する必要があります。

(2)「従業員教育」は必要不可欠

汚れたままの制服、不潔な身なり、汚いトイレ、挨拶ができない従業員などであふれると、クレームや低評価に繋がり機会損失してしまう可能性があります。

更には、不衛生そのものが食中毒や異物混入を招く危険も考えられるでしょう。

そのほか前述のように、非常識なアルバイトが悪ふざけの写真や動画をSNSで公開したことで炎上、最悪店舗を潰してしまうケースもあります。

逆にそれらの問題が起きることなく丁寧で清潔な店舗環境・接客状況が保たれていれば好評価、ひいては競争力の向上に繋がります。また、仮に何かしらの問題があったとしても真摯に対応・改善することで、顧客と良い関係を築くこともできるかもしれません。

このような観点からも、従業員教育は必要不可欠です。

あわせて優秀な人材を確保すべく、魅力的な人事評価、賃金制度の検討も必要となるでしょう。

(3)「ダイバーシティ」の検討、時代の変化への対応を

少子高齢化やライフスタイルの多様化に、飲食業界も対応していく必要があります。

インパクトの大きな社会課題として人口減少がありますが、これは労働人口の減少や国内市場の縮小要因となりうる問題です。

そんな中、人種や性別、LGBT、ライフスタイルなどを問わず、多様な働き方の実現に向けた「ダイバーシティ」などの取り組みが注目されています。

雇用の確保の観点ではもちろんのこと、「多様性を受容する企業であるか」は、逆に考えれば「多様な社会がその企業を受容するか」にも影響するでしょう。

おわりに

飲食業界で働くメリットも多いはずです。美味しい食べ物や飲み物で、人々に幸福感や活力を与えることに生きがいを感じる人もいるはずです。

また、つい先週にはVorkersにより「飲食業界『ホワイト度』ランキング」も発表されました(*1)。様々な業態が名を連ね、学ぶべきポイントも多いのではないでしょうか。

一方、人手不足だからといって、無理やりシフトを繕い、結果的に不潔な従業員や店舗構えで、思わず入店もためらうような飲食店の食べ物は、口にしたくはありません。

劣悪な環境が巡り巡って店が潰れてしまえば、店長や経営者自身の首を絞めることになります。極端な話、24時間営業にはこだわる必要もないのではないでしょうか?

そんな中にあって、業界のイメージを変えるべく、本気で働き方改革に取り組む「日高屋(ハイデイ日高)」や「はなまるうどん(はなまる)」などの動きも注目されています。はなまる・成瀬社長は「人手が足りなければ店を閉めてもいい」とまで語っており、その本気度が伺えます(*2)。

単に売上を追いかけるだけでなく「サービスコストと収益性」に考え方をシフトするときが来ているのかもしれません。もちろん働く人々あっての事業ということを忘れないでください。

清潔な環境で美味しい飲食物を提供すべく、優秀な人材確保し、飲食業の誇りと信頼を取り戻すことに本気で取り組むべきときだと思います。

【引用・参考】
*1:飲食業界「ホワイト度」ランキング – Vorkers
*2:“脱ブラック”対決 はなまるうどんvs.日高屋の「小麦粉大戦争」 – BUSINESS INSIDER

特定社会保険労務士 小高 東

平成13年東京都千代田区飯田橋にて開業。一方的な法律用語のたれ流しではなく、生きた(使える)情報を顧客に提供。日本経済新聞、ビジネストピックス(みずほ総研)、労働・社会保険完全マニュアル(日本法令共著)、月刊ビジネスガイド、経理ウーマン、ビジネスアスキー他執筆・講演多数。東京都社会保険労務士会千代田統括支部広報委員長等拝命。

東社会保険労務士事務所HP


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