社労士が分析した「働きやすく生産性の高い企業」に共通する3つの特徴


こんにちは。特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

人々が働く理由には、「生活の糧を得るため」というのはもちろんのこと、「社会貢献をしたい」とか「自己実現をしたい」など、人によって様々な理由があると思います。

それらの目的を成すためには、楽しいことや嬉しいことばかりではなく、大変なことや辛いことを乗り越える必要もあります。

ですが、無意味な長時間労働や、セクハラ・パワハラといった労働問題が無く、「気持ちよく働ける企業で働きたい」というのは、働き手にとって共通する思いなのではないでしょうか。

企業が持続可能な成長基盤を築くには、「働きやすさ」は欠かせません。

そこで今回は、「働きやすい企業」はどのような特徴を持つのか、ということを分析してみたいと思います。

「働きやすく生産性の高い企業・職場」3つの共通点

平成29年3月10日に、厚生労働省の委託事業として「第1回 働きやすく生産性の高い企業・職場表彰 表彰式・シンポジウム」(*1)が開催され、15社の会社が表彰されました。

この15社の表彰理由などから分析をしてみたところ、「働きやすく生産性の高い企業」には、おおむね次の3つの傾向があると感じます。

(1)経営者が「働きやすく生産性の高い企業・職場」づくりに本気

まず第一に、経営トップが「働きやすく生産性の高い企業・職場」づくりを本気で目指そうとしているということです。

企業の社風というのは、経営トップの影響を大きく受けるものです。

例えば「水曜日はノー残業デーにします」ということが決まったにしても、人事部がお題目を唱えているだけであれば「今週は繁忙期なので」とか「営業部は顧客対応で残業が不可避なので」というように、何だかんだと理由を付けて残業をしようとする人や部署が無くならず、ノー残業デーは絵に描いた餅になってしまいがちです。

しかし、経営トップが「水曜日をノー残業デーにすることを私が社長として決定したので、全社員遵守するように」と宣言したならば、ノー残業デーはトップダウンで力強く浸透していくでしょう。

ノー残業デーに限らず、経営陣やマネジメント層が、このような制度を積極的に活用することもまた重要といえるでしょう。

今回、最優秀賞として表彰された1社である、SCSK株式会社は、トップが次のようにコミットしたということです(*2)。

健康的な働き方を優先することについて、それによる一時的な業績ダウンも覚悟すると明言し、顧客にも自ら手紙を書き理解を求めるなど強いリーダーシップの下で推進

ここまでトップが本気を見せれば、社員がそれに続かないはずはありません。

(2)社員の「自律的な働き方」を推進している

次に、社員の「自律的な働き方」を推進しているということです。

「働きやすく生産性の高い企業・職場」では、自律的に働くことができる人材を育て、社員が創意工夫をしながら自主的に働いてもらうことで、生産性を高めようとしている傾向にあります。

まず、上司に逐一命令されながら働くよりも、自分で仕事をコントロールしながら自分のペースで働くほうが、ワークライフバランスも両立させやすく、働きやすい職場環境といえるでしょう。

そして、効率の改善というのは、やはり現場で発生している問題点を1つ1つ改善していくことの積み重ねですから、現場の最前線で働く社員が、自分の仕事の非効率な部分を見つけ出し、その改善の知恵出しをしていかなければなりません。

例えば、優秀賞で表彰されたダイキン工業は、次のような取り組みを紹介しています(*3)。

若手人材を育てる制度として「自働化キーマン制度」を創設し、自ら問題解決に取り組むことを通じて成長する仕組みを運用している

また、奨励賞で表彰されたヤフー株式会社では、社内外で社員が自己実現をできる様々な機会を設け、自律的な考え方をできる人材を育成しているということです(*4)。

ヤフーに在籍しながら起業できる「スター育成プログラム」。社内ベンチャーとして、2014年にスピンアウトしたリッチラボ株式会社がその例だ。また、専門性に優れたエキスパート人財を「黒帯」に任命し、社内外の専門技能発展に貢献する活動の支援等も展開している。

(3)「多様な働き方」ができる社内制度を整備している

そして、「多様な働き方」ができる社内制度を整えているということです。

テレワークの利用促進やフレックスタイム制、男性の育児休業取得推奨など、今回表彰された企業の多くは、柔軟な働き方を支援する勤務制度を積極的に導入しているようでした。

各社員が、それぞれの置かれている状況に応じて、多様な働き方ができるということは、それだけで「働きやすい企業・職場」ということができます。

加えて、安心して定時に帰ったり、テレワークやフレックスタイム制などを利用できるよう、長時間残業をした社員を評価をするのではなく、限られた時間で効率よく仕事をした社員を評価する組織風土をつくることにも力を入れているようです。

この点、奨励賞を受けた富士ゼロックス株式会社は、次のようにコメントしています(*5)。

業務の優先順位を都度考えながら行動し、早く来て早く帰ることを実践、定時内でいかに成果を出すかという風土に変わってきていること、限られた時間で、最大の成果を出すというマインドは醸成されてきて、空いた時間の有効活用につながっている

もちろん、これらの制度があるというだけでは、充分に活用されないことも考えられます。(1)で触れた経営者のコミットも重要となりますので、制度を整備するという手段が目的化しないよう注意も必要です。

受賞企業に限らず「社員が生き生き働く企業」に共通している

ここまで、具体例も交えながら、「働きやすく生産性の高い企業・職場」の特長を見てきましたが、今一度まとめておきますと、

(1)経営トップが「働きやすく生産性の高い企業」を目指すことに本気であること

(2)自律的に働くことができる社員を育成しようとしていること

(3)安心して多様な働き方を選択することができること

の3つが重要ポイントでした。これは上記で受賞した企業に限りません。

私自身も実務家として日々、たくさんの企業様に接しておりますが、「この会社は働きやすそうだな」とか「この会社は社員が生き生きしているな」と感じる企業様は、おおむね上記の3つのポイントに当てはまっていると感じます。

右へならえで始めるのではなく、自社の課題に適した改善施策を

「働き方改革」が叫ばれる現在、本稿に目を通して頂いて、自社を「働きやすく生産性の高い企業」に変革していきたいと考えた、経営者の方や人事責任者の方もいらっしゃるかもしれません。

ただし、注意していただきたいのは、右へならえで他社の取り組みを表面的に真似るだけでは、決して上手くいかないということです。

もちろん、「第1回 働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」で表彰された15社の取り組みからヒントを得ることは大いに役立つと思います。

しかしながら、自社は自社、他社は他社で、企業の特徴・特性は様々です。

まずは、「自社で働きやすさや生産性を阻害している要因」を分析して、自社の課題に合った改善施策を展開していかなければなりません

また、社員1人1人に、なぜ「働きやすく生産性の高い企業・職場」を目指さなければならないかを理解してもらい、主体的に会社の取り組みに協力してもらうためのマインド醸成も重要です。

おわりに

第2回「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」事業が実施されることが決定しています(*6)。

平成29年7月14日(金)から平成29年9月15日(金)まで、生産性向上と雇用管理改善(魅力ある職場づくり)の両立に取り組む企業の募集が行われています。表彰対象となる企業は、平成30年1月下旬に予定がされているとのことです。

この機会に、「働きやすく生産性の高い企業・職場」を目指して、表彰に応募してみるのもよいかもしれません。

【参照】
*1:第1回 「働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」の受賞企業を決定しました – 厚生労働省
*2:大企業部門・厚生労働大臣賞(最優秀賞) SCSK株式会社 – 働きやすく生産性の高い職場のためのポータルサイト
*3:ダイキン工業株式会社 堺製作所 – 働きやすく生産性の高い職場のためのポータルサイト
*4:ヤフー株式会社 – 働きやすく生産性の高い職場のためのポータルサイト
*5:富士ゼロックス株式会社 – 働きやすく生産性の高い職場のためのポータルサイト
*6:第2回 働きやすく生産性の高い企業・職場表彰- 働きやすく生産性の高い職場のためのポータルサイト

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。


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