無断で職場を辞める「バックラー」に対する損害賠償請求は可能なのか?

2017.08.02 ライター: 弁護士 河野 晃

皆様、ご無沙汰しております。弁護士の河野です。

夏休みに突入し、アルバイトに精を出す学生が増えるこの季節ですが、始めたバイトをすぐに辞めてしまう「バックラー」という人たちが少なからずいることをご存じでしょうか。

筆者も編集部からこの言葉を初めて聞かされ、すぐにググりましたが、ネット掲示板などではおなじみのキーワードのようです。

「仕事をばっくれる人」からきている言葉ですが、ここではバックラーとは、「バイトを無断で辞めてしまう人」と思っていただければ良いと思います。

かくいう筆者も、バックラーのようなことを学生時代にしたことがあり、この記事を書くのには躊躇がありましたが、過去を清算するためにも、少しでも役立つことを書ければと思います。

美品や金品を盗む「S級バックラー」は当然犯罪

さて、前置きが長くなりましたが、バックラーの最強ランク「S級バックラー」に位置づけられるのは、ただ単にバックレるだけではなく、辞めるついでにお店の備品やお金などを盗って辞めてしまう人です。

どんな言い分があろうと、当然犯罪です。絶対にやめてください。

過去に仕事場から家電などを盗んだ人の弁護をしたような記憶がありますが、詳しくは忘れました。

スキャンダル等で世間をにぎわすこともありますが、基本的に日本の警察は優秀です。確実に捕まります。

バックラーに対する損害賠償請求は可能なのか?

バックラーに損害賠償の請求が可能か、と聞かれれば、「法的に可能なケースもある」ということになるでしょう。

ちょっとぼやかしているのは法律家ならではの言い回しです。世の中に起きる事象すべてがケースバイケースです。

アルバイトとはいえ、雇用者と労働者(雇う人と雇われる人)との間には、法的には「雇用契約」という契約関係があります。「無断で辞める」という行為は、雇用契約に反する行為ですので、契約違反です。

ただし、「バックラーに対して裁判をした」というケースを個人的には見聞きしたことはありません。

理由としては、以下のようなことが考えられます。

(1)そもそも法律上認められるような損害が発生していない

(2)損害が発生したが、費用や費やす時間のことを考えたらやめとこうという判断となった

賢明な読者様であればピンときたかもしれませんね、その通りです。と、いうことは、損害がそれなりに大きいケースの場合は雇用主から損害を請求されうるということです。

世の中に、こういった裁判がどこかで起こっていても何ら不思議はありません。

個人的に知らないことでもそれは僕が無知なだけということはよくあります。バックラーについて考えてみたときに、全然有り得る話だなと思いました。

以下に、どういったケースで損害が大きくなり得るか一般化を試みましょう。

バックラーによる損害が大きくなり得るケースとは?

やはり、少人数でそれなりに大きな金額が動く(売り上げが大きい)商売などの場合には、訴訟をしてでも取り返したいと思う雇用者が現れても不思議はありません。

例えば、1人当たりの売り上げ平均(バイトが1人いればこれくらいは売り上げが出るという平均金額)が50万円にもなるという場合、1人のバックラーが現れることで1日50万円のマイナス。

補填として、次の人材を雇い入れて売り上げが通常に戻るまで2週間かかったというケースの場合、「概算で総額700万円の損害が出た!」と計算できます。

もちろん、1人分の給料を払わずに済んでいるのでその分の金額や、バックラーが休みを取ることは想定できるので取れる休みの分は加えず差し引いても、500万円も損害が計上できるなら、訴訟する価値は十分にありそうです。

ちなみに、先ほど「次に人を雇い入れて売り上げが通常に戻るまで2週間かかった」と書きましたが、これは、法律上、期間の定まっていない雇用契約において、労働者は雇用契約の解約申し入れから2週間で適法に辞めることが出来るので、それを考慮しました。

 

上記のようなバイトがあるのか、という疑問はさておき、僕もバックラーに対して裁判をしたいという雇用者からの相談や、逆にバックレた元バイト先から損害賠償請求されたという相談がきた時に備えたいと思います。

最後に、編集部から「バックラーに有効な対策はあるか」と聞かれましたので考えてみましたが、「アルバイトには優しく接しよう」という答えしか見つかりませんでした。

参考になれば幸いです。

弁護士 河野 晃

兵庫県姫路市にて活動しております。弁護士生活6年目を迎えた若手(のつもり)弁護士です。弁護士というと敷居が高いと思われがちな職種ですが、お気軽にご相談していただけるような存在になりたいと思っています。
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