残業時間削減の第一歩! 漏れなく確実に「勤怠管理」するための方法


こんにちは。特定社会保険労務士の榊 裕葵です。

皆様もご存じの通り、様々なメディアで「働き方改革」という文字を目にする機会が増えています。栃木県では、県の職員のワークライフバランス推進のため、7月と8月を「働き方改革推進強化月間」として取り組むようです(*1)。このように「働き方改革」は企業だけでなく、地方自治体などでも注目されつつあります。

この「働き方改革」の中でも、喫緊の重要テーマとしては「残業時間削減」や「過重労働の防止」はなどが挙げられます。

私自身も実務の中で「どうすれば残業を減らすことができますか?」という相談を受ける機会が増えてきています。

しかし、現在の会社の状況を理解することなくいきなり「残業を減らそう」としてもなかなか上手くいきません。

残業を減らす以前に「勤怠管理」自体ができていない

と言いますのも、そもそも「残業を減らす」という行動にでる以前に、「勤怠管理」自体が上手くできておらず、社員が何時間働いたのかを把握することができていない会社様が残念ながら存在します。

社員の勤怠を把握できていないと、長時間労働に対する会社の対応も後手に回ってしまい、社員が過労で倒れたり、精神疾患を発症して、初めて問題が発覚するという事態に陥ってしまいます。そうなってからでは手遅れです。

確実に「勤怠管理」するための方法

そこで、以下に「社員の勤務実態」を正しく把握するための勤怠管理手法をご紹介したいと思います。

ポイントは3点あります。

(1)出退勤時刻を「客観的に把握」する

第1のポイントは、出退勤時刻を客観的なツールで把握するということです。

昔からある代表的な方法は紙のタイムカードですが、近年は、Suicaなどの交通系ICカードをかざしたり、指静脈などの生体認証をしたりすることで、出勤・退勤の打刻をすることができるツールも登場しており、比較的安価に導入できます。

ここでのポイントは「客観的なツールで出勤・退勤の時刻を把握する」という点です。

紙に書いたりエクセルに入力して自己申告するような形だと、どうしても人間の感情や利害関係が入りがちで、「今日は自分のミスで遅くなってしまったから、定時に帰ったことにしよう」とか「3時間も残業をつけたら上司に睨まれるので、残業は1時間だけにしておこう」など、操作が行われる可能性を排除できません。

このような感情や利害関係によって、実態把握が歪まないようにするため、客観的な出退勤事実の把握が必要なのです。

(2)時間外労働は「業務命令」または「上長による許可」で行う

第2のポイントは、時間外労働を、原則として「業務命令」および「事前申告制」にすることです。

「成り行きで残業をして」「ほどほどに残業時間を事後申告する」という日本的(?)な時間外労働を行っている会社もまだまだ存在します。

しかしながら、本来時間外労働とは会社の業務命令によって行うものですから、上長から明確な指示を出したり、本人から事前に残業希望があれば申告させ、上長が許可した場合に限り残業を認めるといった、会社の管理に基づいて時間外労働を行わせることが必要です。

我が国の職場環境では「サービス残業は必要悪」という考え方が、まだ完全に払しょくされてはいませんので、現場に任せっきりにしてしまうと、会社の知らないところでサービス残業が発生してしまう恐れがあります。ですから、経営者や上長たる立場の人は、意識的に「部下に無許可の残業はさせない」という考え方をもって、職場管理に勤めて頂きたいものです。

最近の勤怠ソフトは、時間外労働を希望する社員が残業申請をWEB経由で上長に行えたり、残業申請が無いまま残業をしている社員を管理者が洗い出せるような仕組みを持っていたり、36協定で決められた時間を超過した残業に対してはアラートが出たりします。

このように、単なる打刻記録にとどまらず、より積極的な意味で労務管理を行うための機能が充実していますので、そういった点でも、勤怠ソフトを導入する価値は高いように思います。

ちなみに、こちらのメディア「SmartHR mag.」を運営する株式会社SmartHRも、勤怠・人事労務管理システムの共同開発を目的に、勤怠管理システムのアマノビジネスソリューションズ株式会社と提携するようです。

(3)業務終了時刻と退室時刻のズレが15分以上ないかチェックする

第3のポイントは、人事部や上長が「業務終了時刻」と「職場からの退室時刻」の15分以上のズレをチェックすることです。

15分というのは私の実務上の肌感覚ですが、タイムカードなどの打刻機器は職場の出入口に置いてあることが多く、自分のデスクから遠かったり、すれ違った同僚と少しだけ立ち話したりなども考えられますので、労働基準監督署の調査があった場合など、業務終了時刻と職場退室時刻のズレがおおむね15分以内であれば、監督官の理解を得られるという印象を持っています。

この点、残業申請が出ていないのに、定時から1時間〜2時間後に退出記録が残っていたり、残業申請は1時間だけなのに退出記録が深夜に打刻されていたりしたら、会社としては疑問を持つべきですし、労働基準監督署の調査があった場合は間違いなく指摘を受けるでしょう。

ですから、業務終了時刻と退室時刻に15分以上の差がある場合、上長や人事部が本人から聞き取りをすることで事実確認をし、それが無申告の残業であれば直ちに是正させましょう。

また、社内の同好会活動など正当な理由があるならば、出勤簿の備考欄などに備忘として記録を残すなどの対応を行い、「なんだか良く分からないけど業務終了と退勤がズレている」という曖昧な状況を招かぬようにしておくことが必要です。

もちろん深夜残業だけでなく、「早出残業」などの可能性も考えられますので、業務開始時刻と入室時刻の乖離にも注意すべきでしょう。

まとめ

このように、

(1)客観的に出退勤時刻を記録する
(2)時間外労働は業務命令または許可制にする
(3)業務終了時刻と退室時刻が15分以上ズレる場合は理由確認を徹底する

という3つのポイントを押さえれば、大きなコストや複雑な事務作業の負担もなく、多くの会社で実現可能であると私は思います。

「働き方改革」を進める以前の大前提としても、「勤怠管理の仕組みづくり」にはしっかりと取り組んでいきたいものです。

【参照】
*1:7、8月は県「働き方改革推進強化月間」 – 東京新聞

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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