会社が定める期限を過ぎてからの「退職申出」は却下できるのか?


6月に入り、待ちに待った夏のボーナスを楽しみにしている方も多いことでしょう。

また、このボーナス受給をひとつの区切りにこの時期に退職を決意し、7月から9月にかけて転職活動や有給消化を行い、10月入社を目指すという方もいらっしゃるかもしれません。

このような場合、計画的に退職日を見定めている方も多く、余裕を持った退職の申し出によって、会社としてもある程度整理しやすいかと思います。

逆に困るのは、前触れ無く急に退職を申し出られた場合です。特に、就業規則で退職日の●日前までには申し出るよう定められている場合でも、その期限を超えて申し出られることは、稀ではありません。

今回は、会社が定める期限を過ぎてからの「退職申出」は却下できるのかについて解説します。

「当期の前半までの退職申出」であれば次期に退職可能

雇用期間の定めがない労働者側からの退職申出による退職時期について、民法の原則では、月給制以外(日払い、週払い)の場合は、労働者側から2週間の予告期間を置けば、いつでも退職ができることになっています(民法627条1項)。

つまり、「2週間前に申し出れば、いつでも退職」できます。

他方、月給制の場合は、当期の前半までに退職申出をすれば、次期に退職できます(民法627条2項)。

例えば、6月末退職希望の場合は6月15日までに申し出ればOK

具体的に、今月6月末に退職希望の場合を例にあげると、5月15日~6月15日までに退職を申し出ていれば6月30日に退職できます。

これが民法の原則ですが、会社就業規則で、「退職は30日前に申し出る」などと規定されている場合もあります。

就業規則で民法と異なる定めがある場合の、民法の規定との適用関係について、直接判断した判例はありませんが、一般的には民法の規定を優先し、「当期の前半までに退職申出をすれば、次期に退職できる」と解釈されています。

したがって、会社側としては「就業規則で定めているから」と一蹴することはできませんので、注意が必要です。

引き継ぎを怠れば「損害賠償責任」を負うことも

労働者は、就業規則でどう規定があろうと、自由に退職しても、何ら責任が発生しないわけでもありません。

会社に大きく損害を与えるような時期・態様(最低限の引き継ぎを全くしないなど)による退職の場合には、いつ退職の効力が発生するかという問題とは別に、それ自体、従業員が損害賠償責任を負う可能性があります。

退職時期がいつになるかという問題とは別個、適切な業務の引き継ぎをしない場合には、損害賠償の問題が発生することに注意が必要です。

雇用期間が定まっている場合「雇用期間途中の退職」はできない

雇用期間が定まっている場合は、原則として、やむを得ない事由がない限り、雇用期間途中での退職はできません。

したがって、会社側が労働者の事情に配慮して、退職に合意して初めて退職となるのが基本です。

円満な退職のために双方がすべきこと

雇用期間の定めがない労働者の場合、日給制や時給制の場合は、2週間前の退職申出で退職できます。月給制の場合は、当期の前半までに退職申出をする必要があります。

就業規則の定めがあっても民法に優先しませんが、業務引き継ぎを全くしないことにより業務に支障が生じた場合は、労働者側が損害賠償責任を負うこともあります。

いずれにせよ、円満な退職にするためにも、従業員側としては「職務・引き継ぎの全う」を、会社側としては快く受理するための「持続可能な組織づくり」をそれぞれ心がけ、お互い快く門出を迎えられるようにしたいものですね。

弁護士 星野 宏明

大手法律事務所勤務を経て、東京都港区で星野・長塚・木川法律事務所開業(共同パートナー)。企業顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中国法務、外国関連企業、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件、国際案件等が専門。中国語による業務可能。
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