「名ばかり管理職」判定チェックリストと4つの解決策


昨今、「名ばかり管理職」という言葉が世間でも広く認識されるようになりました。

今年の春先に、某弁当チェーンで「名ばかり管理職」に関する訴訟があったことも記憶に新しく、特にここ最近は「働き方改革」の流れで残業削減がうたわれている中ですので、この「名ばかり管理職」という問題に対して、より情報感度が高まっている方も多いことでしょう。

今回は、この「名ばかり管理職」が生まれる要因や具体的なケース例、その解決策について考えてみます。

「名ばかり管理職」とは

「名ばかり管理職」とは、労働基準法等で定められた管理監督者としての要件を満たさないにも関わらず、会社独自の基準で「管理職扱い」されてしまっている人のことを指します。

「管理監督者」に該当する4つの要件

まず、法的な管理監督者の要件をまとめておくと、おおむね下記4点を満たしていることが必要となります。

1.経営者と一体の立場にあり、企業全体の経営に関与していること
2.採用や、部下に対する人事考課などの権限を持っていること
3.出退勤について管理を受けていないこと
4.賃金面で、その地位にふさわしい待遇を受けていること

「名ばかり管理職」チェックリスト8項目

上記基準を1つでも満たさずに管理職扱いされている場合は「名ばかり管理職」である疑いが強いのですが、このような抽象的な基準だけでは、自分が「名ばかり管理職」かどうか、判断がつきにくいかもしれません。

そこで、「名ばかり管理職の疑いがある場合」の、より具体的なチェックリストを作ってみましたので、社内で「管理職」と位置づけられている方は、自分が該当しているものが無いか是非確認をしてみて下さい。

□ 自分の店舗内や支店内の意思決定はできるが、本社の経営方針には口出しできない

□ 経営者からのトップダウンの指示を部下に伝えるだけである

□ 採用の一次面接は行うが、採用の決定は自分より上の上司や経営者が行っている

□ 実務上のリーダーではあるが、部下の評価や人事異動に関与はしていない

□ 決まった時間に出社する必要があり、決まった時間になるまでは退社できない

□ 始業時刻に遅れたら賃金から遅刻控除されてしまう

□ 残業代をもらっている部下のほうが賃金の総支給額が多い

□ 役職手当が付いていても、5千円や1万円など少額である

以上のいずれかに当てはまったら「名ばかり管理職の疑い」があり、半分以上当てはまるならば「ほぼ間違いなく名ばかり管理職である」と考えられるでしょう。

「名ばかり管理職」に当てはまる時にすべき相談や行動

それでは、自分が「名ばかり管理職」だと分かった場合、救済を求めるため、どのように行動をすれば良いのでしょうか?

(1)まずは「会社と穏便に話し合う」こと

会社の経営者や人事担当者も、法的な正しい考え方を知らなかっただけで、悪気は無かったという可能性もありますので、自分が法的な管理監督者に該当をしないことを説明し、少なくとも将来に向かっては、一般の社員と同様に各種割増賃金を支払ってもらうようにしましょう。

過去の未払いになっている割増賃金は、時効との関係で最大2年までさかのぼって請求することができます。ただし、会社と和解をする路線であれば、「全額を請求するのではなく、一定額で手打ちをする」のが現実的かもしれません。

(2)会社が聞く耳を持たなければ「労基署」に相談

もし、会社が聞く耳を持ってくれない場合は、会社を管轄する労働基準監督署に相談をして、会社を指導してもらいましょう。

労働基準監督署の指導を受ければ多くの会社は従って改善するでしょうし、場合によっては「話を聞いて頂けないなら、労働基準監督署に相談しますよ」と切り出した段階で態度を軟化させて話し合いに応じる姿勢を見せてくれるかもしれません。

(3)労基署でもダメなら「弁護士への相談」を

万が一、労働基準監督署の指導を受けても開き直って「名ばかり管理職」としての扱いを改めてくれなかったり、過去の割増賃金を支払ってくれない場合は、弁護士に相談をして、労働審判や訴訟を提起する流れになります。

(4)そもそもそのようなブラック企業なら転職も視野に

「時間」はお金同様大切なものですから、そのようなブラックな企業に、自分の人生を捧げるのは勿体ないです。転職活動も積極的に視野に入れるべきでしょう。

なお、会社が違法なことを行ったためにやむを得ず退職をした場合は、雇用保険上は「会社都合」という扱いになり、3ヶ月の給付制限なく、基本手当(失業手当)を受給することができます。

かけがえのない自分の時間と心身を大切に

まずは、自分が「名ばかり管理職」に該当している可能性があるかどうか、前述のチェックリストを活用して、セルフチェックしてみて下さい。

そして、もし「名ばかり管理職」に該当している可能性があれば、泣き寝入りせず、会社と交渉をして待遇の改善を図っていきたいものです。かけがえのない自分の時間と心身を大切に、健やかに働ける環境を目指しましょう。

もちろん従業員だけが気をつければいいという問題ではなく、そもそもこういった事態を防ぐために、会社側からは、曖昧で不当な体制であればこれを解消するよう努め、明瞭で正当な組織づくりを心がけましょう。

特定社会保険労務士 榊 裕葵

東京都立大学法学部卒業後、上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。「社員から信頼される会社作りをサポートする」を経営理念として、顧問先の支援に当たっている。執筆活動にも力を入れており、WEBメディアへの掲載多数。
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