残業時間はどう扱われる? 働き方改革の一環「フレックスタイム制」運用上の注意点


こんにちは。社会保険労務士の篠原宏治です。

現在、政府は、「働き方改革」における重要課題の一つである「多様で柔軟な働き方」の実現のため、企業による「フレックスタイム制」の導入を促進しています。

この記事をご覧いただいている方の中にも、既に導入済み、あるいはこれから導入しようとしている方がいらっしゃることでしょう。

今回は、「フレックスタイム制」を運用する上で、特に注意していただきたい点について解説していきます。

「フレックスタイム制」は従業員が自ら勤務時間を決められる制度

「フレックスタイム制」は、1か月以内の一定の期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、その総労働時間の範囲で従業員が各労働日の労働時間を自分で決めて勤務する制度です。

会社は、その時間帯の中であればいつ出勤又は退勤してもよい「フレキシブルタイム」と、必ず勤務しなければならない「コアタイム」を設定することで勤務時間に一定の制限をかけることができます。なお、これらの時間帯を設けない「完全フレックスタイム制」も可能です。

「フレックスタイム制」の導入により、従業員は、仕事とプライベートとの調和を図りながら効率的に働くことが可能となり、残業の軽減やライフ・ワーク・バランスの向上が期待されます。

フレックスタイム制における「割増賃金の支払い」注意点

フレックスタイム制の導入にあたって、誤解が多く、気をつけなければならない点の1つに、「時間外手当・休日手当・深夜手当の各割増賃金の支払い」があります。

(1)時間外手当

フレックスタイム制を導入した場合、特定の日や週の労働時間が長くなったとしても時間外手当を支払う義務は生じませんが、清算期間を通じて週平均40時間を超える労働を行わせた場合には「時間外手当の支払い」が必要です。

週平均40時間を1か月(清算期間)の労働時間に換算すると、

・31日の月:約177時間
・30日の月:約171時間
・28日の月:160時間

となり、上記の時間と「清算期間における総労働時間(休日出勤を除く)」の差が、時間外手当の必要な時間となります。

(2)休日手当

フレックスタイム制を導入した場合でも、週1日又は4週4日の休日は与える必要があり、休日を確保できなかった場合(休日出勤をさせた場合)には休日手当を支払う必要があります。

そのため、「勤務カレンダーで会社休日を定めてその日の出勤は原則不可とする」、「いつ休日を取得するかも従業員の判断に委ねる場合は週1日(4週4日)の休日の取得を義務付ける」等の対応が必要です。

(3)深夜手当

従業員が深夜時間帯(22時~翌5時)に勤務を行ったときは、深夜手当の支払いが必要です。

深夜労働を行わせたくない場合は、深夜時間帯を除外したフレキシブルタイムを設定しておきましょう。

適切な労働時間管理を行わなければ「仕事の効率が低下」することも

フレックスタイム制を導入する際は、労働時間の管理についても留意が必要です。

フレックスタイム制は、時間配分を労働者の自主性に委ねることで効率的な勤務につながることが期待される一方、自己管理ができない従業員の場合は、勤務がルーズとなり、逆に仕事の効率が落ちる可能性があります

コアタイムを設定している場合には遅刻や早退の問題も生じ得ますが、もし1時間の遅刻をしたとしても、別に1時間に勤務すれば賃金計算上は従業員が不利益を被ることはないため、これを何の対策も講じずに漫然と放置した場合には、ただ「ルーズな勤務が許される制度」になりかねません。

フレックスタイム制を導入した場合は、労務管理をより一層適切に行うことを心掛けるとともに、懲戒規定や人事評価制度を設け、勤務がルーズな従業員には、程度に応じた適切な処遇や対応を行えるようにしておきましょう。

特定社会保険労務士 篠原 宏治

社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント代表。元労働基準監督官。特定社会保険労務士。労働基準監督官として残業代不払いや長時間労働などの労働問題に関する数多くの相談対応、監督指導(臨検)、強制捜査などを行ってきた経験を活かし、「労働問題に強い社会保険労務士」として、労使双方からのご相談に対して実務的な助言やコンサルティングを行っています。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント
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