従業員による「有給休暇の当日申請」を企業は却下してもよい?


こんにちは。社会保険労務士の篠原宏治です。

ゴールデンウィークが明け、早くも「次の祝日が待ち遠しい」という方も多いことと思いますが、実は7月17日の海の日までの約2ヶ月間にわたって祝日がありません。6月にいたっては1年で唯一祝日が無い月となります。つまりこの間に3連休以上とろうとすると、有給休暇を取得せざるを得ません。

そんな有給休暇ですが、一般的に前もって申請するのが望ましいとされ、就業規則には「有給休暇の申請は●日前までに行わなければならない」と申請期限を定めている会社が多いです。

一方、急病などの理由で、有給休暇を当日申請されることも少なくありません。しかし、会社によっては当日に休まられると困るようなケースもあるでしょう。

この場合会社は、労働者からの申請を却下することは可能なのでしょうか?

有給休暇の当日申請は「時季変更権」を行使できる

労働基準法は、労働者に、年次有給休暇をいつ取得するかを指定する「時季指定権」を認める一方、会社には、事業の正常な運営を妨げる場合には取得時季を変更することができる「時季変更権」を認めています。

労働者が時季指定権を行使すべき時期については、法律上の定めは何もありませんが、「会社が時季変更権を行使するための時間的余裕を置いてなされるべきことは事柄の性質上当然である」とする裁判例があり、時季変更権の行使について判断するために必要な「合理的な期間」であれば、有給休暇の申請期限を設けることも可能です。

したがって、就業規則で定められている申請期限が「合理的な期間」である限り、申請期限までに行われなかった有給休暇の申請については、それを認めなかったとしても違法ではありません。

また、労働基準法では原則として、労働日は0時から24時までの暦日計算によるものとされています。

そのため、有給休暇の当日申請は、始業時刻前に行われたものであっても法律上は事後申請の扱いとなり、この点からも、会社が当日に有給休暇を取得させないことに違法性はありません。

有給休暇の当日申請却下が「不当と判断されるケース」もある

ただし、あらかじめ定めた申請期限までに行われなかった申請が、必ず「事業の正常な運営を妨げる場合」に該当するわけではありません。

申請期限後の申請であっても、当該労働者の担当する作業内容、性質、繁閑の程度などを総合的に勘案した結果、代替要員の確保などの必要性がなく、事業の正常な運営を妨げるとは言えない場合には、有給休暇を取得させないことを不当と判断される可能性があります。

また、年次有給休暇の当日申請は、先に述べた通り法律上は事後申請の扱いとなりますが、始業時刻の20分前に行われた年次有給休暇の申請に対して、始業時刻後に会社が時季変更権を行使することの是非について争われた事件の最高裁判決(此花電報電話局事件 昭57.3.18)の中では、

「労働者の休暇の請求自体がその指定した休暇期間の始期にきわめて接近してされたため」

と、始業時刻を休暇期間の始期として述べられています。

このように、労働者から個別に争われた場合には、実質的に事前(始業前)に行われている申請を、法律上事後申請となることを理由に拒否することは、不当と判断される可能性が否定できません。

当日申請の却下に違法性がなくとも「個別の判断」が必要

結局のところ、当日に行われた有給休暇の申請であっても、申請期限後の申請であることや当日申請であることを理由に、一律にその取得を拒否することはできず、事案ごとに個別に取得の可否を判断する必要があります。

会社のルールとしては、当日申請がやむを得ないことであることを確認するために、医療機関のレシートや診断書などの提出を求められるようにしておき、有給休暇を認めないことの妥当性や必要性を、慎重に判断することを心掛けましょう。

特定社会保険労務士 篠原 宏治

社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント代表。元労働基準監督官。特定社会保険労務士。労働基準監督官として残業代不払いや長時間労働などの労働問題に関する数多くの相談対応、監督指導(臨検)、強制捜査などを行ってきた経験を活かし、「労働問題に強い社会保険労務士」として、労使双方からのご相談に対して実務的な助言やコンサルティングを行っています。社会保険労務士事務所しのはら労働コンサルタント
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