日本人と外国人の考え方の違いをFOVE平田氏はどうやって解決してきたのか ーFOVE平田氏 ✕ SmartHR副島 対談

2017.05.09 ライター: 副島 智子

日々、様々な勉強会や交流会が行われている中で、人事業務をはじめとした「バックオフィス業務」においては悩みや解決策を共有できる場所はなかなかありません。

そういった業務を担当しているのは会社の中で自分一人だけということもあり、何が正しいのかわからないまま、自分一人で解決しなければいけない状況になりがちです。

そうすると、自分の考えていることや悩みが大きいのか小さいのか、どこに向かうべきなのかの答えも見つけづらく、成長のレベルやスピードも自分本位になってしまうように感じています。

……と、少し前置きが長くなりましたが、この度、当メディア『SmartHR mag.』 の中で、新しいコーナー「SmartHR サロン」を始めることになりました!

SmartHRサロンちゃっかりロゴも作成

「SmartHR サロン」では採用・労務など人事業務に携わる方を中心に、仕事の課題や失敗談、自身のキャリアなどについて、SmartHRプロダクトマネージャーの私、副島(そえじま)とゲストが人事業務などについて語り、共有する場にしたいと思っています。

「SmartHRサロン」を通して同じような仕事をしている全ての方に、少しでも役に立てることを期待しています。

そして、記念すべき第一回目のゲストは株式会社FOVEの平田さんです!

FOVE 平田 知明輝
1988年5月31日生まれ
提案活動から広報、人事等のバックオフィスまで対応する、Startupにいがちな何でも屋系オペレーションマネージャー。前職のコンサルティングファームでは会計領域のグローバルプロジェクトを中心に業務プロセス改善/システム要件定義/開発/テスト/トレーニングまで広く経験する。2015年にマレーシアオフィス勤務から帰国後、VRに魅せられFOVEにJoin。

SmartHR 副島 智子
1975年生まれ
20人未満のIT系ベンチャーや数千人規模の製薬会社など、さまざまな規模・業種の会社でバックオフィス全般の経験を持つ。専門は人事で採用、労務、制度企画など15年以上の経験を有する。TechCrunch Tokyo 2015でSmartHRの存在を知り衝動を抑えられず、2016年にベンチャー企業の経営管理役員からプロダクト開発側へキャリアチェンジを図る。現在はSmartHRのプロダクトマネージャーとして新機能の開発やカイゼンに従事。

左・FOVE平田さん、右・SmartHR副島

副島
なぜ第一回目のゲストが平田さんなのか気になってる方もいると思うので、きっかけをお話します。

2017年2月に開催した「SmartHR UserMeetUP vol.2」で、私と会場の皆さんとで行うディスカッションのお題を参加者の皆さんから事前に募集していたんです。

その中で、平田さんから送られてきた内容がおもしろかったのですが、イベントで議論するにはちょっと時間が足りなそうだったのでその場では話さなかったんですね。

でも、どこかで平田さんのお話を皆さんに共有したいと思ってこのSmartHRサロンの第一回にご登場いただく運びとなりました。というわけで、今日はよろしくお願いします!

平田
よろしくお願いします!

総合系コンサルティングファームでバックオフィスの重要性に気づく

副島
まず、平田さんのこれまでのご経歴をお伺いしたいのですが、人事業務からのスタートではないと聞いています。

平田
はい。大学から大学院時代は建築設計とインテリアを勉強していました。その他にもアメリカに行ってパイロットのライセンスを取ったり全く関係ないことをしていましたね(笑)。

結局その道には進まず、総合系コンサルティングファームに新卒入社し、3年弱働きました。グローバルカンパニーの会計プロセスの調査や改善点を考えたり、会計とITと組み合わせて5年後10年後どうしていくかを考え、システムの要件定義して、導入して、テストをして、開発して……といったことを一通りやっていました。

副島
学生時代に学んでいたこととは違う方向にいったんですね。「建築とインテリアの世界」と「会計コンサルの世界」って全然違うと思いますが、学生の頃に考えていたことと実際に就職した時に感じたギャップや気持ちの変化ってあったんでしょうか?

平田
建築は目に見えない基礎工事をしっかりしていないと後から大変なんですね。会計プロセスや開発プロジェクトもこれは同じだと思います。なので、あまりギャップは感じず、働くにつれ「花形職種」だけに目がいかなくなりました。

実際にコンサルタントとして現場を見ることで、バックオフィスがうまくいっていないと会社経営に大きなインパクトを与えることを身をもって体験しました。

例えば経理の方は「毎月同じことしてるだけ」「慣れれば簡単だよ」なんておっしゃるんですが、とても複雑で重要な業務をやっていらっしゃるんですね。僕がバックオフィスに興味をもったきっかけでした。

コンサルティングファームから社員数1桁台の会社へ入社

副島
そして現職のFOVEへの入社したのが1年半前くらいですね。

平田
はい。社員が10人未満の頃に最初は社長秘書として入社し、提案書作成や、会計ルールの整備等をやっていました。

副島
入社した当時と今では仕事の内容は変わりましたか?

平田
入社当時はバックオフィス業務だけでなく他社さんとの協業プロジェクトの対応含め、少ない人数で対応していたので、労務担当者としてあまり大きな声では言えませんが1日の勤務時間はかなりの時間になっていました。

でも今はビズデブ(事業開発)や法務の専任社員が増えてきたことにより改善されてきています。仕事も人事業務の割合が高くなっています。体感として、採用25%、労務25%、ビズデブ25%、その他で25%ぐらいの割り合いです。

有給や勤怠管理を巡って社内が不穏な空気に

副島
人事業務の割合が増えていますが、人が増えてくると出て来る課題ってありますよね。

平田
たくさんありますね。特に「勤怠」についての課題が大きかったです。

副島
やっときました(笑)。MeetUPのアンケートに記入いただいていた「本題」ですね。勤怠についての失敗が多くあったと伺ってます。

平田
はい、たくさんありました(笑)。FOVEは従業員の約半分が外国籍の社員なのですが、日本人と違って時間通りに出社したり、勤怠を記録する文化がありません。

副島
すでに大変そうな感じがしますね……(笑)。

平田
そういうこともあり、厳密な管理はしておらず、口約束ベースで運用していたんですが、やはり人数が増えると「(就業時間になっても)アイツ来てないんじゃないか?」、「フェアじゃない」という声が日本人からも外国籍の方からも聞こえてくるようになりました。

有給も取ってる人と取ってない人が出てきましたが、管理をしていないので厳密なコントロールはできませんでした。

副島
就業時間だけでなく、休暇についても考え方が違いそうですね。

平田
はい。日本人はちょっとずつ休みながら、毎日出社することが良しとされる文化ですが、外国籍の社員は働く時は休みのことは考えず、一心不乱に働く。その後ロングバケーションで休みをドカッととるという文化の違いがあります。

人によっては1ヶ月の有給休暇をとる人もいます。でも、当時の運用ではその人の有給が1ヶ月休めるだけ残っているのか残っていないのか、記録していないので明確な答えも出せないんです。

最終的には「アイツがんばってるからいいじゃん」という感情論での運用となって、ますます「フェアじゃない」という気持ちを従業員に抱かせてしまいました。

勤怠の記録はとっていないのにアンフェアはなくしたいという難しい状態でした。

勤怠管理システムの導入時に「なぜ勤怠管理を行うのか」を説明した

副島
日本人だけでも難しい課題ですが、文化の違いもあってさらに大変だと思います。勤怠管理システムの導入はどこから着手されたのでしょうか?

平田
まずは「記録をすることの理由」を説明しました。研究開発などの分野はもちろん時間でバリューは計れません。彼らからも「それわかってるよね?」という意見がありましたが、理解した上で、僕らとしてはみんなの「健康管理」を行う責任があるということに重きをおいて話しました。

誰が出社して、誰がどのくらいの時間働いているのか、知っておく必要があるんだよ。ということを丁寧に話をしました。

副島
健康管理、なるほど……! とはいえ理解が得られても、導入する勤怠管理システムは何にするか、どう記録するのかなど課題はまだまだありますよね。

平田
おっしゃる通り様々なタイプがありますよね。大規模なものや、何かと分析ができるものありますが、「まずはすぐにみんながやってくれそう」という、手軽さを一番考えた上で「キングオブタイム」の導入を決めました。

ついに「指紋センサー」の勤怠管理システムを導入。しかし悲しい事件が……

副島
キングオブタイムはいろいろな打刻方法がありますが、どれを選択されたのでしょうか?

平田
手軽さを重視したので、「指紋センサー」を導入しました。カードタイプも検討しましたが、カードを忘れてしまうと手間をかけさせてしまうので指紋センサータイプが一番手軽だろうという判断です。経営陣に事前にお知らせして承諾を得ていました。

副島
確かに指紋センサーなら持ち物が増えずにスムーズに開始できそうですね。

平田
いや、実はそうはいかなかったんです。指紋センサーによる打刻の導入初日に「廃止」となりました。

副島
えっ……!?

平田
導入日に出社して自分の座席に行ったらコンセントを抜かれた指紋センサーの機器が置いてあったんです。ポストイットに「やめて」と書かれていました……。

副島
何があったんでしょうか……。

平田
NGを出したのは外国籍の経営陣でした。指紋センサーは動物の管理で利用することがあり、それを思い出させてしまったようです。「私たちは管理されている動物じゃない」と拒絶されてしまいました。これも日本ではなかなかない考え方に直面した瞬間でした。

副島
承諾もらっていたのに……。その後どうされたのでしょう。

平田
文化に紐付いた考え方をすぐに変えるのは難しいと判断し、指紋認証の稼働は一旦やめることにしました。その代わりにSlack(社内チャットツール)に勤怠管理用のチャンネルを作る運用に切り替えました。

休暇を取る場合はSlackで申請して許可が出たらOK、といった運用です。決まったチャンネルに投稿してもらい、週次で記録を手作業で集計しています。

Slack で有給申請を出すようにしたら取得率が大幅に向上

副島
Slack投稿だと、社員が能動的に申請をしないといけないので、忘れることが多くなりそうですが……。

平田
反対意見も一部ありましたが、大きな効果がありました。有給の申請をSlackのオープンな場所で行うことによって、有給の取得率が上がりました。誰がどれだけ取得しているかを「見える化」したことで、今まであまり有給を取っていなかった社員が「自分も取得していいんだ」と、不要な遠慮がなくなったようです。

また、自浄作用も働いたようで、これまでちょっと休みを取りすぎていた人は自分が取り過ぎていたことにも気づいたようです。

「言った・言わない」問題を起こさないためにオープンな場で問題解決していくのはとても良いなぁと実感しました。これまでに2ヶ月くらい運用していますが定着してきています。

副島
やっと上手くいって良かったですね……! 今後も続けられる予定ですか?

平田
申請等に使用する人事関連のオープンなチャンネルは残す予定ですが、勤怠としては手作業による集計作業をなくしたいため、いずれはカードによる打刻にシフトしたいとは思っています。

自分のやり方が正しいとは限らない

副島
今回の勤怠管理システム導入を振り返って、学んだことや伝えたいことはどんなことでしょうか。

平田
コミットを取れば絶対にひっくり返らないと思っていたり、打刻は当たり前だと思って進めていたところがあって、結果的に見込みが甘かったんだと思います。

だからといって折れてしまうと人事の仕事にはならない。トライアンドエラーをタフに行って、大きな被害にならないように、まずは小さくPDCAを繰り返すことが重要だと思います。

最初の指紋センサーは失敗に終わりましたが、それなら「Slackは?」「カードだったら?」と、議論が発展したので、折れずに続けてやっていくことが大切なんだと深く実感しました。

「1on1」を行って小さな声にも耳を傾ける

副島
外国籍の方を採用している会社も多い中、平田さんから「ぜひこうしたほうがいい」とアドバイスできることはありますか?

平田
「1on1」を必ずやったほうがいいと思います。外国人は声が大きいイメージやディスカッションが大好きなイメージがあるかも知れませんが、声の大きさはやっぱり人によって違います。「会社どう思う?」「これってどう思う?」を声の大きさの大小限らずに聞いていくことが重要です。

副島
「1on1」で気がついたことはありますか?

平田
みんなに意見を言っていなかった人が「1on1」だといろいろと言ってくれることがあります。事前に質問表のようなものを作って回答してもらってはいるのですが、表面的には出てこないことが結構出てきますね。

同じ文化を共有しているため日本人がどう考えているのかであったり、どう捉えるのかは何となく分かりますが、外国籍の方からは想定を超える意見が飛んできたりすることもあるので、自分の”常識”を当たり前のように押し付けるのはよくないと思っています。

副島
様々な文化が入り混じる中で一つのルールを設けることは本当に大変なんですね。

平田
どこまでカルチャーをミックスしていくかは大きな課題です。良い折衷案が見つけられるかもしれないし、最悪どちらも気持ち悪い中途半端なものになって、誰も幸せになっていないことになってしまうかもしれない。カルチャーはすぐにミックスされるものではないので、ある程度の時間は必要だと思っています。

「全社員を満足させることは可能なのか?」をテーマに折れずにいろんな課題に挑んでいきながら、「みんなの夢を叶えたい」と思っています。

外に出て様々な声を聞くと会社が良くなっていく

副島
では最後に、バックオフィス業務をやっている方にアドバイスがあればお願いします。

平田
殻にこもらないことですね。社外での打ち合わせが少なかったり、デリケートな情報を扱っていることもあって、なかなか他社の方との交流が持ちにくいかとは思いますが、それでも最近は交流ができる場所が増えてきています。

Slackを利用した勤怠管理方法はSmartHRさん主催の「User Meetup」で知り合った労務担当者の皆さんとの交流会の中でヒントを得ました。あのような機会を作ってもらえるのは本当に助かっています。

外に出て様々な声を聞くと意外な解決策が見つかったり、新しい考え方に気づくことが多くあります。そして、会社が良くなるように地道にトライアンドエラーを行っていくことが大切だと思います。

FOVEとは?

日米3拠点体制で「視線追跡型バーチャルリアリティヘッドマウントディスプレイ」を開発している。2015年にKickstarterで$480,000(約5,000万円)を集めることに成功し、また2016年3月にはシリーズAとして12.3億円を資金調達した。世界10ヵ国以上からプロフェッショナルが集まる、設立3年目ながら世界が注目するVRスタートアップ。

FOVE Eye Tracking Virtual Reality Headset

編集部より:SmartHR主催の労務人事担当者が集まる「SmartHR UserMeetUP」の次回開催は2017年夏頃を予定しています!  SmartHRユーザーではない方は、まずは無料トライアルをお使いください!

副島 智子

20人未満のIT系ベンチャーや数千人規模の製薬会社など、さまざまな規模・業種の会社で給与計算・社会保険手続きの経験を持つ。前職のEC系スタートアップでは経営管理の役員に就任。2016年にKUFUにジョインし、SmartHRのプロダクトマネージャーに就任。
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