社内の全面禁煙や喫煙者の不採用・・・なぜ「差別」にならない?

2017.04.04 ライター: 弁護士 星野 宏明

健康に対する関心の高まりに加えて、東京オリンピックまでに屋内全面禁煙の話が出るなど、喫煙をめぐる議論が日々盛り上がりを見せています。

最近では社内を全面禁煙にしている企業も少なくありませんし、さらに喫煙者は採用しない企業が出てくるなど、喫煙場所の問題以外でも様々な制約が生まれてきています。

喫煙者にとってみればどこにも居場所がなく、違法行為をしているわけでもないのに肩身が狭すぎる……と感じるかもしれません。喫煙者にとっては厳しいこれらの制約について法的見たときどのように扱われるのでしょうか。

喫煙する社会人

社内の全面禁煙は違法ではない

健康増進法では企業に受動喫煙防止の努力義務が課せられており、厚生労働省が発表するガイドラインでも、職場の全面禁煙か空間分煙が望ましいとされており、企業が職場を全面禁煙とすることは特に問題ありません。

また、喫煙は業務の遂行に関係がない行為ですから、喫煙行為自体が労働条件にはならず、全面禁煙を実施しても、労働条件の不利益な変更には該当しません。

そもそも、憲法上、喫煙の自由は「権利」とまでは断定されておらず、判例においても「喫煙の自由は、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。」と判示されています。

したがって、職場の全面禁煙化は違法ではありません。

喫煙者の不採用は「適法」

喫煙を理由とする不採用も、これを禁止した特別の規定はなく、個別事案で公序良俗に反すると評価されない限り、原則として、適法です。

喫煙の有無は、良好な職場環境維持や接客サービスに関係する部分もあり、特にホテルやリゾート施設を運営する会社やサービス業などで、喫煙の有無を調査し、喫煙者であることを理由として不採用とすることが公序良俗に反するとは考え難く、許されることになります。

そもそも、企業が労働者を採用する行為は、企業と労働者の間の労働契約であり、企業が誰と労働契約をするか、誰とは労働契約を締結しないかは、基本的に企業の自由です。

企業が採用の際に、喫煙の有無を重要な選考基準としてふるいにかける行為は、適法です。

採用の際の差別が問題となった三菱樹脂事件最高裁判決でも、いかなる者を雇い入れるか、いかなる条件で雇うかについて、法律その他による特別の制限がない限り、原則として自由に決定することができると判断されています。

したがって、喫煙を理由に不採用とすることも適法です。

違法となる可能性がある採用基準も存在

例えば、性別を理由とする募集・採用差別は、男女雇用機会均等法で禁止されていますし、募集・採用時に年齢制限をつけることは、雇用対策法によって原則として禁止されています。

他方、思想や信条(考え方)を理由として不採用とすることは、原則として認められます。

また、見た目・容姿を理由とする不採用も、これを禁じた規定はなく、原則として認められます。企業活動において、外見が重要となる分野もあることは否定できないからです。

近年は、喫煙禁止区域も増えています。職場の全面禁煙や喫煙を理由とする不採用は違法ではなく、争うことは難しいでしょう。喫煙者にとっては悲しい現実ですが、受け入れるしかないでしょう。

弁護士 星野 宏明

大手法律事務所勤務を経て、東京都港区で星野・長塚・木川法律事務所開業(共同パートナー)。企業顧問法務、不動産、太陽光自然エネルギー、中国法務、外国関連企業、農業、不貞による慰謝料、外国人の離婚事件、国際案件等が専門。中国語による業務可能。
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