退職者による情報漏洩の対策を! 前職の顧客情報を持ち出す違法性を解説


退職者による情報漏洩の対策

浅野総合法律事務所、代表弁護士浅野英之です。

最近に某インターネット企業が、「元従業員が顧客データを無断に持ち出していたことが判明した。」と発表しました。

お客様の個人情報をお預かりする会社、たとえば、ECサービスを提供する会社などでは、顧客情報の持ち出しが特に大きな問題となります。

在職中の従業員による社外持ち出しへの対策を打たなければならないのはもちろんですが、転職、独立となると、顧客データの流用がさらに大きなトラブルの火種ともなりかねません。

今回は、従業員による顧客データの持ち出しリスクと、こういったリスクを防止するために企業が採るべき対策について、労働問題に強い弁護士が解説します。

顧客データの持ち出しは法律違反?

元従業員が、会社の顧客データを持ち出すことは、単なる民事上の損害賠償請求、つまり「お金の問題」だけにはとどまりません。

顧客データを記載した名簿やUSBメモリなどを持ち出した場合、刑法上の窃盗罪(刑法235条)に該当します。

窃盗罪は、かたちあるもの(法律の専門用語で「有体物」といいます。)を対象としているため、情報の持ち出しのようなケースは窃盗罪には該当しません。

しかし、会社のルールに違反して顧客データを持ち出し、会社に損害を与えれば、刑法上の背任罪(刑法247条)の責任追及を行うべきケースもあります。

転職した従業員によるデータ流用を止められないのか

顧客データを持ち出した元従業員に対して追及できる責任は、刑法だけでなく、「不正競争防止法」という特別な法律における責任も検討すべきです。

顧客データのように、不正競争防止法にいう「営業秘密」にあたる情報の持ち出しは、不正競争防止法違反として、刑事罰の対象となります。

前職のデータを流用することに非常に慎重にならなければならないことが理解いただけるでしょう。

前職のデータを流用する場合、不正競争防止法違反とならないために、「営業秘密にあたるかどうか?」を判断しなければなりません。

具体的には、「営業秘密」といえるためには、「秘密として管理されていること(秘密管理性)」「生産方法や販売方法など事業活動に有用な技術上または営業上の情報であること(有用性)」「公然と知られていないこと(非公知性)」の3つの要件を備えている必要があります。

したがって、これらの要件を備えていないもの、たとえば、社外にも公開されている書類の雛形などを利用することは「営業秘密」の流用とはならず、不正競争防止法上、違法とはなりません。

企業秘密を守るために、対策すべきこと

元従業員による顧客データの持ち出しから、企業秘密を守るためには、企業はどのような対策を講じておけばよいのでしょうか。

真っ先に行っていただきたいのは、退職する従業員との間で、秘密保持契約を締結しておくことです。

また、万が一、元従業員による不正な流用が発覚した場合に、不正競争防止法における「営業秘密」としての保護を受けられるよう、さきほど解説した「営業秘密」の3つの要件(秘密管理性、有用性、非公知性)を満たすような管理を徹底しなければなりません。

特に問題となるのが「秘密管理性」であり、会社内で適切な管理がなされていなければ、いざというときに「営業秘密」としての保護を受けられません。

機密情報の管理体制強化は、企業への信用を高めます

今回は、営業秘密、特に、最近話題となった顧客データの持ち出しについて、労働問題に強い弁護士が解説しました。

会社内の秘密情報の管理が適切に行われていないと、転職、独立する従業員の不正流用によって、損失を被ることがあります。

機密情報の管理体制の不備は、企業に対する顧客の信用を失いかねない、非常に重要な問題なのです。

弁護士 浅野 英之

浅野総合法律事務所、代表弁護士。企業側労働問題を得意とする石嵜・山中総合法律事務所にて、労働問題に関する数多くの相談対応、顧問先企業の労務管理を行ってきた経験を活かし、浅野総合法律事務所を設立。以降、「労働問題に強い弁護士」として、企業側はもちろん、労働者側の相談にも対応し、労働問題のスペシャリスト弁護士として活動中。特に成長中のベンチャー企業、中小企業の人事労務のコンサルティングに定評がある。 【企業向けメディア】ビズベン!
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