Web制作やシステム開発を受託する際の、適切なリスク管理とは?

2017.03.21 ライター: 弁護士 浅野 英之

適切なリスク管理

浅野総合法律事務所 代表弁護士浅野英之です。

近年、システム開発などを行うIT企業において、業務委託契約に関するトラブルが多く起こっており、当事務所への法律相談も多くあります。

特に、受託開発を発注した依頼者(発注者)が、契約途中で依頼を破棄したり、完成した後で紛争になって委託報酬が支払われなかったりといった問題が後を絶ちません。

これらの受託開発をめぐるトラブルは、会社の経営に大きな影響を与える問題であるため、訴訟となるリスクも高いといえます。

今回は、IT企業におけるシステム開発をめぐるトラブルや訴訟について、弁護士が解説していきます。

トラブルの防止は契約時から!

受託会社がシステム開発に関するトラブルを弁護士に法律相談するとき、弁護士に相談する頃には、既に作業に着手していたり、依頼主とトラブルになった後であったり、というケースもよくあります。

しかし、システム開発をはじめとした業務委託に関する法律問題は、契約時からすでにトラブルの火種が存在していたケースも多いものです。

言いかえれば、業務委託契約書を作成、締結するときに慎重な配慮をしていれば、未然に防止できたリスクも多いということです。

業務委託契約書を締結するときに気を付けておかなければならないポイントを理解することで、事後のトラブルのリスクを少しでも軽減することができます。

顧問弁護士を依頼している場合には、トラブルになってから相談するのではなく、契約書の締結段階から、こまめに法律相談をするよう心掛けてください。

契約の性質は請負契約?準委任契約?

まず、業務委託契約を締結するときに注意しておかなければいけないのは、その契約の法的な性質です

システム開発で締結される「業務委託契約」と呼ばれる契約の法的な性質は、大きく分けて、請負契約の場合と、準委任契約の場合があります。

2つの契約の考え方の違いは、請負契約は「仕事の完成」を目的としていて、仕事が完成したらそれに対して報酬が支払われるのに対し、準委任契約の場合には業務自体に対して報酬が支払われるという点です。

「どちらの法的性質を持っている契約なのか。」という点が、未払いとなっている報酬を依頼主(発注者)に請求するときに重要な争点となります。

受託業務の内容を明確に!

次に、受託業務の内容や範囲が不明確であると、依頼主(発注者)から報酬が支払われないというトラブルの大きな原因となります。

なぜならば、受託業務の内容や範囲が不明確であると、依頼者(発注者)から、「まだ受託した業務が完成していないから報酬を支払わない。」とか、「依頼した内容と出来上がりが異なる(仕様が違うなどの理由)から報酬を支払わない。」といった反論を受けてしまうからです。

このようなトラブルを未然に防ぐためには、業務委託契約書で、受託業務の内容について具体的に列挙しておくほか、要件定義書を契約書に添付して、発注内容をより明確にしておくという方法が有効です。

業務委託契約書を作成する段階で詳細な仕様を確定できないようなケースでは、その後のやり取りについて、きちんと証拠化しておく必要があります。

複雑な開発では、完成にいたるまで、段階的に、複数の契約書を締結することもよくあります。

もし報酬が支払われない場合は?

以上のとおり、業務委託契約書を作成するときに十分な注意をしたとしても報酬が支払われないというトラブルに陥ってしまった場合、話し合いで解決しなければ、訴訟を提起することとなります。

委託報酬が60万円以下の場合には、簡易裁判所における「少額訴訟」という簡易な制度を利用することができ、この場合には、原則として1回の審理で判断をしてもらうことが可能です

しかし、委託報酬が60万円を超える場合には、通常訴訟を提起するなど、大きな紛争となる可能性も予想されますので、企業法務に精通した弁護士へ法律相談するのがよいでしょう。

弁護士 浅野 英之

浅野総合法律事務所、代表弁護士。企業側労働問題を得意とする石嵜・山中総合法律事務所にて、労働問題に関する数多くの相談対応、顧問先企業の労務管理を行ってきた経験を活かし、浅野総合法律事務所を設立。以降、「労働問題に強い弁護士」として、企業側はもちろん、労働者側の相談にも対応し、労働問題のスペシャリスト弁護士として活動中。特に成長中のベンチャー企業、中小企業の人事労務のコンサルティングに定評がある。 【企業向けメディア】ビズベン!
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