新入社員の「前職の退職日」把握してますか? 曖昧にしていると厄介になることも!


こんにちは、社会保険労務士の佐佐木由美子です。

新しい従業員が入社するとき、前職の退職日を正確に確認されているでしょうか。

前職の「源泉徴収票」や「退職証明書」などを提出してもらうことで、退職日をあらかじめ確認することができます。

しかし、再就職までの期間が短く各種書類を用意できない場合は、本人の申告に基づき退職日を把握する、というケースもあるでしょう。

このように退職日の確認を曖昧なままにしていると、実は厄介なことになる可能性があります。のちのち問題となる場合もありますので、順に確認していきましょう。

入社して握手するビジネスマン

退職日の把握をややこしくさせる「年次有給休暇」

退職後すぐに新しい会社へ再就職する場合、社会保険や雇用保険の手続きに時間がかかるため「資格喪失日の確認まではできない!」という事情がありえます。

また、社会保険においては入社日から5日以内に資格取得手続きを行うのが原則のため、前職の資格喪失日まで確認をせずに、入社後すみやかに手続きを行っている企業は多いと思います。

しかし、ここが後になって問題となるポイントです。

たとえば、前職を退職する際に、まとめて年次有給休暇を取得する場合があります。

具体的な例を挙げるならば、本来の退職日は1月31日(= 資格喪失日2月1日)であるにもかかわらず、実際には年次有給休暇を取得中で前職に在籍したまま、1月20日から転職先で仕事を始めてしまうようことがあります。

上記の場合、本来であれば社会保険上の資格取得日は2月1日となります。

しかし、本人が会社へ年次有給休暇を取得中であることを申し出なかった場合、1月20日で資格取得手続きを行ってしまうことがあり得ます。本人さえも「退職日を把握していない」というケースの場合、このような状況が起こり得るのです。

また、この問題は雇用保険の手続きで度々発覚することがあります。

雇用保険の「掛け持ち」は出来ません

実は、雇用保険は2以上の事業所で重複して加入することはできません。前職において、被保険者記録が残っていると、転職先の会社では資格取得を行うことができないのです。

この場合、以下のいずれかを選択することになります。

・前職の離職年月日を変更する
・新しい会社での資格取得年月日を変更する

現実的には、明らかに前職での退職日が誤っていた場合を除き、新しい職場での資格取得日を変更することが考えられます。

一方、社会保険は被保険者期間を重複して資格取得手続きができるため、その時点では問題となっていることには、なかなか気づきません。

しかし、これを放置していれば、社会保険料が二重徴収になってしまうことがあります。前職における正しい資格喪失日を確認したうえで、資格取得日の訂正等、適切な対応を取るようにしたいところです。

上記の例でいえば、前職では1月分までの社会保険料を、転職先では1月分から社会保険料が徴収されることになってしまいます。

社会保険で重複して資格取得手続きが行えるのは、2以上事業所勤務を認めているためであり、仮に本当に重複している期間がある場合は、2以上事業所勤務届の提出を行う必要があります。

この場合、前職と転職先で保険料も案分となるため、手続きは複雑になります。

二重就業(副業)は法律では禁止されていません

ちなみに、年次有給休暇の消化中に転職先に入社することを禁じる法律はありません。就業規則で二重就労(副業)の禁止規定を設けている会社は多数ありますが、それは本来の業務に専念させるための規定です。

退職を前提とした有給消化中の転職は、前職の企業と転職先の了承を得られれば、二重就労の禁止規定に抵触することはないといえるでしょう。

ただし、社会保険上の問題が発生することが往々にしてありますので、入社する際には、前職で有給休暇を消化中であるかも含めて、人事担当者は正確に退職日を把握するように努めたいものです。

社会保険労務士 佐佐木 由美子

グレース・パートナーズ社労士事務所代表。中小・ベンチャー企業を中心に就業規則、人事労務・社会保険面をサポートし、親身なコンサルティングで多くのクライアントから支持を得ている。著書に「採用と雇用するときの労務管理と社会保険手続きがまるごとわかる本」 (ソーテック社)、日経ウーマンオンライン連載「ワークルールとお金の話」ほかメディア取材多数。 グレース・パートナーズ社労士事務所公式サイト 
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