従業員が人事異動を拒否することのできる「5つのケース」とは?


特定社会保険労務士の小高東です。

新年が明け、年度末が近づいてくると「人事異動」が気になってくる時期に差し掛かります。

その際、職場環境が変わることを「新たな挑戦」とプラスに捉える方もいますが、中には取り組みたい業務とのギャップや家庭事情といった理由により、望み通りではない異動を迫られるケースも少なくありません。

こうした個々人にとって好ましくない人事異動が命じられた際、「従業員は異動を拒否できるのか」を今回は解説していきます。

人事異動を拒否する

 

そもそも企業が人事異動を行う理由とは?

企業が人事異動を行う理由をおさらいしたいと思います。主に以下の3つのケースが多くあります。

①配置転換による職務内容、勤務地等の変更
②昇進・降職による役職の変更
③出向、転籍、派遣

人事異動の目的は、人材育成適材適所不正防止雇用の維持等が考えられます。

従業員が異動を拒否できる5つのケース

人事異動については、原則として人事権行使の裁量権が会社に広く認められています。

ただし、次の5つのうち、どれか1つにあてはまる場合には会社の権利濫用となり、従業員は人事異動を拒否できる可能性があります。

①就業規則に人事異動がありうる旨の定めがない。
②採用時に職務、勤務地限定の合意があった。
③人事異動に業務上の必要性がない。
④人事異動に不当な動機・目的が認められる。(報復人事、退職強要など)
⑤不利益の程度が通常甘受すべき範囲を著しく超えている。

また、育児介護休業法や労働契約法により、従業員に対する一定の配慮を欠いた人事異動については、拒否できる可能性があります。具体的条文は以下のとおりです。

育児・介護休業法26条

事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、 その就業の場所の変更 により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育 又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。

労働契約法3条3項

労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。

異動の拒否理由が5つのケースに当てはまらない場合

業務命令である人事異動を拒否した場合に、従業員によほどの正当な理由がない限り、従来の場合は懲戒解雇も有効とされてきました。

しかしながら、雇用環境も変化している昨今、ワークライフバランスや正社員の多様化が叫ばれています。解決法や落とし所として、勤務地限定社員職種限定社員の制度化期間限定の人事異動などを検討してみてはいかがでしょうか?

異動拒否の結果、ポスト降格や減給が生じても良いのか?

「従業員が拒否できるケース」にて掲載した5つの要件にあてはまらず、人事異動命令が有効である場合、異動を拒否した従業員に対し、懲戒としてのポスト降格や減給制裁が生じる可能性はあります。

ただし、一時的な懲戒としての減給制裁ではなく、基本給を減額する場合には、会社が一方的に行うことはできず、従業員の同意が必要となるので注意しましょう。

特定社会保険労務士 小高 東

平成13年東京都千代田区飯田橋にて開業。一方的な法律用語のたれ流しではなく、生きた(使える)情報を顧客に提供。日本経済新聞、ビジネストピックス(みずほ総研)、労働・社会保険完全マニュアル(日本法令共著)、月刊ビジネスガイド、経理ウーマン、ビジネスアスキー他執筆・講演多数。東京都社会保険労務士会千代田統括支部広報委員長等拝命。 東社会保険労務士事務所HP
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